今日のコラムは、「家事ハラ」と「性別役割分担」と「子育てプレッシャーにつぶされそうな母親の気持ち」について論じてみたいと思います。
ある日の午後、私はいつものようにぼんやりと、ネットサーフィンを楽しんでいました。
発見。「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」という記事。おいしそうなポテトサラダの写真付きでした。(※1)
記事の中身はざっとこんな感じです。
「母親なら、ポテトサラダくらい作ったらどうだ」と、買い物の時に高齢男性に絡まれる母親を目撃したというツイートが大きく反響を呼び7月10日現在13万リツイートに達している。こう始まる記事でした。
「幼児を連れた女性が総菜パックを手にしているのを見た高齢の男性が「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と言い放ち、立ち去った。娘と一緒にいた投稿者は「大丈夫ですよ」と念じつつ、総菜パックを手にしてうつむく女性の目の前でポテトサラダを2パック、手に取った。
さらに、ツイートには多くの体験談が寄せられていた。
「子供と散歩に行ったら、道行くおじいさんに『赤ん坊のうちからジーパンをはかせるのはよくない。統計的に礼儀を知らない子供に育つから』と教えられた」
「病院で娘に絵本を読んで順番を待っていたら高齢の男性に『ボソボソ読まずにもっとはっきりと読んであげなさい、親がしっかり言葉を教えてあげないと』と注意された」
ざっとこんな感じの記事です。
コラムにしようと意欲がわいたのでした。
ポテサラを買う子育て真っ最中の女性(ひょっとしたら働くママかもしれません)に対して高齢の男性は次のように思ったのかもしれません。 「お前たち女性は、どうせ3食昼寝付きの暇な主婦なんだろう。家事なんて言うつまらん仕事もろくにできないのか。サボって総菜なんか買っているんじゃねえよ」
皆さんは「家事ハラ」という言葉を聞いたことがありますか?
「家事ハラ」という言葉は社会学者である竹信三恵子さんの造語である「家事労働ハラスメント」が元となって生まれました。もともとは、女性だけに無償の家事労働を押し付けて当然とする社会の問題を意味する言葉です。最近では、夫の家事のやり方を妻が厳しく批判する行動も「家事ハラスメント」と呼ばれるようになりました。これは読者の男性は経験があるでしょう。洗濯物をたたんだら、奥さんに、たたみ方が下手だと言われて目の前でたたみなおされたとか、お皿を洗ったら汚れが取れていないと罵られ目の前で洗いなおされたみたいなことですね。
女性は子どもの頃から家事ができるように育てられることが多いのでしょう。それに対し、男性は「男の子なのだから家事はできなくてもいい」という育てられ方をされてきた人も珍しくありません。実際に私もそうでした。結果として、成人した段階で男女の家事スキルに大きな差がついてしまっている場合が多いのです。
また、男性は長時間労働をするケースが多く、成人後に家事を習得する時間が限られているともいえます。さらに、忙しく働く男性をサポートする役割を女性が背負わされている面もあります。以前に何かのコマーシャルで「ぼく、食べる人。わたし、作る人」と言って男性は食べる側で、女性は料理を作る側というものがありました。性別役割分担というものです。この考えが差別であり、偏見であることは明白です。
妻は家事、夫は仕事という旧来の性別役割分担という以上に問題なのが「男尊女卑、女性蔑視の思想」です。 女性に対する蔑視は、家事に限らずに仕事に対する評価にもあるのではないでしょうか。「女の仕事は、男に劣る」というものです。 政治課題と言えるのですが。令和2年7月1日、安倍総理は、総理大臣官邸で第9回すべての女性が輝く社会づくり本部を開催し、次のように述べました。
「安倍内閣では、発足以来、女性活躍の旗を高く掲げ、保育の受け皿整備、育児休業制度の拡充、コーポレートガバナンス改革などに取り組んだ結果、この7年間で、新たに330万人を超える女性が就業し、M字カーブの解消が進みました。この間の女性就業率の伸びは、G7諸国の中で最も高くなっています。上場企業の女性役員も、3倍以上に増加しました。この勢いに、更に弾みを付けるため、先般、女性活躍推進法を改正し、女性の登用などに関する行動計画の策定義務の対象を拡大したところです。・・・・・・」
しかし、安倍内閣の女性閣僚は19人中3人にすぎません。得意の口だけ政治。
経済協力開発機構(OECD)の2019年統計では日本の男女間賃金格差は23.5%で韓国に次ぎワースト2位なのです。
日本において少子化にストップがかかりません。一人の赤ちゃんへの期待も以前とは比べ物にならないほど高いものになっています。世のお母さん方は「失敗できないプレッシャー」に自分を見失っているように思います。ただでさえこのような状況であるにもかかわらず、「ポテサラ事件」のように「家事ハラ」がそこに覆いかぶさる状況です。
最近のお母さんを見ていると大変そうで、かわいそうにさえ思うのは私だけなのでしょうか?
昔は医療技術の低さや出産・成育環境の問題で、命を落とす赤ちゃんや子供が大勢いました。しかし、今は医療技術の発展で、生き死ににつながるような問題はほぼ解決しています。そして、少子化によって子供の数は劇的に減り、子供に向けられる目は「元気であればいい」というものから「いかに高みに向けて育てられるか」に移ってきたのかもしれません。
子供を「よく見る」とは、今や「他の子どもと比べて言葉が遅い」とか「他の子どもができることができない」というように欠点を見つけることになっています。
でも実際は、子供を「よく見る」とは子供を「見守る」ことだったり、子供を「待ってあげる」ことだったりするはずです。つまり、「大目に見る」ということです。昔の「お母ちゃん」は普通に子供をほっておいてくれました。それでいいんだということを子育て中の親や周りの大人たちでもう一度共通理解できればいいと思います。そして、ママたちの子育てプレッシャーを取り除き、子育てを楽しんでもらいたいと祈っています。当然、そこには、口先だけでない「すべての女性が輝く社会づくり」政策が必要なことは言うまでもありません。
私が大学を卒業してすぐに教師となって教壇に立ってから30年が過ぎ、発達障害や特別支援教育について講演をするようになって、10年以上が経ちました。特別支援教育とは、従来知的な遅れや目が不自由な子供たちなどを対象にしてきた障害児教育に加えて、「知的発達に遅れがないものの、学習や行動、社会生活面で困難を抱えている児童生徒」にもきちんと対応していこうと言う教育です。
これは、従来の障害児教育で論議されていた内容をはるかに超えて、発達障害児はもとより発達障害と診断されなくても認知機能に凹凸のある子供の教育についても対象としており、さらに子供だけでなく我々大人も含めたコミュニケーションや感情のコントロールといった、人間が社会で生きていくうえにおいてもっとも重要であり、基礎的な内容を徹底して論議しているからであるととらえています。
そのためには、児童生徒一人ひとりの教育的ニーズを把握して適切な教育的支援を行う必要があります。ここで、単に教育とせず、教育的支援としているのは、障害のある児童生徒については、教育機関が教育を行う際に、教育機関のみならず、福祉、医療、労働などのさまざまな関係機関との連携・協力が必要だからです。また、私への依頼例からもわかるように、現在、小・中学校さらに高等学校において通常の学級に在籍するLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、知的に遅れのない自閉症(高機能自閉症・アスペルガー障害)などの児童生徒に対する指導及び支援は、喫緊の課題となっており、これら児童生徒への支援の方法や指導原理や全ての幼児・児童生徒への指導は、私達大人を含めて全ての人間が学び、関わり合うための基礎といえるコミュニケーション力を考える上で必須の知識であることを色々な場で訴えています。
今までたくさんの子供たちや親、そして同僚の先生方と貴重な出会いをしてきました。また、指導主事として教育行政の立場からもたくさんの校長先生方と学校経営の話をしたり、一般市民の方からのクレームにも対応したりと、色々な視点で学校や社会を見つめてきたつもりです。ここ数年は毎年200回近くの公演を行い、発達障害や特別支援教育について沢山の方々にお話をしてきました。そして、満を持して2014年3月に広島市立特別支援学校を退任し、2014年4月に竹内発達支援コーポレーションを設立致しました。
今後は、講演、教育相談、発達障害者の就労支援、学校・施設・企業へのコンサルテーション、帰国子女支援、発達障害のセミナーなどを行っていく所存です。
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