アトピー性皮膚炎は、赤ちゃんから小児、大人まで幅広い年代で見られる皮膚疾患で、悩んでおられる患者さんも多いと思います。
今回のコラムシリーズではアトピー性皮膚炎について、解説いたします。
そもそも、アトピー性皮膚炎とはどのような病気か?ということですが、アトピー性皮膚炎の治療ガイドライン2018では、「増悪と軽快を繰り返すそう痒(=かゆみ)のある湿疹を主病変とする疾患であり,患者の多くは「アトピー素因」を持つ。」と定義されています(文献1)。
少し難しいので、簡単に言い換えると、アレルギー体質をベースとして、湿疹が続いている状態ということになります。さらにアトピー性皮膚炎の湿疹は、左右対称性に分布するという特徴があります。部位は、肘や膝裏、脇や股に湿疹が出ることが典型的です。特に、大人では顔面や首に皮膚炎が強くなる傾向があります。
また、アトピー性皮膚炎は、日本のみならず世界中で見られる病気です。2018年の世界を対象として行われた疫学調査によると、有病率は大人では人口の2.1〜4.1%だったと報告されています(文献2)。
先ほど述べた特徴を伴う慢性的な湿疹を確認して、診断します。つまり、
の3つがポイントです。
ただし、アトピー性皮膚炎に似ているけども、異なる皮膚病もあるため、皮膚科医による確認が必要です。
アトピー性皮膚炎の原因を1つで説明することは難しいですが、次の3点が重要となります。次にそれらの特徴を説明します。
皮膚の表面は細胞同士がしっかりと接着し、体の水分を外へ逃さず、また体の中に異物が入らないような構造となっています。アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚はこの表面の部分に問題があり(=バリア障害)、皮膚が乾燥し、様々な刺激(ホコリや汗など)にさらされて、かゆみが出やすくなります。また、アトピー性皮膚炎の一部の患者さんでは、フィラグリンという皮膚のバリアに関係する物質が低下していることも分かっています。
アレルギー疾患にはアトピー性皮膚炎以外にも、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎などがあります。これらのアレルギー疾患は複数合併することがあります。また、お父さんと息子さんがともにアトピー性皮膚炎など、家族性にみられることがあります。(一方で、3人兄弟のうち1人だけアトピー性皮膚炎ということもあるので、あくまでも1つの要因ということになります。)血清IgE値という血液で調べる検査がありますが、これはアレルギー素因を反映します。このようにアトピー性皮膚炎の患者さんは、アレルギー体質や遺伝的要素が関連しています。
アトピー性皮膚炎では、皮膚炎が慢性的に持続しており、かゆみを感じやすくなっています。掻けば掻く程痒くなる、こんな経験もした方もおられるのではないでしょうか?実際に、アトピー性皮膚炎の皮膚では知覚神経が皮膚の下まで伸びていることも知られています。かゆみのせいで掻くとさらに皮膚炎が悪くなるので、皮膚を掻きすぎないことが大切です。とは言っても、かゆいのは我慢できない‥という現実もあるので、その場合にはタオルでくるんだ保冷剤などを当てて20-30秒冷やすとかゆみが和らぎますので、試してみて下さい。
これら3つの乾燥肌(=皮膚バリアの障害)、アレルギー体質(アトピー素因)、かゆみの3点をケアすることで、アトピー性皮膚炎とうまく付き合うことができます。
アトピー性皮膚炎はいつになったら治るのか?これもよく聞かれる質問です。一般的には乳幼児・小児期に発症して、年齢とともに改善する傾向があります。ガイドラインで紹介されているデータでは、検診で見つかるアトピー性皮膚炎は、幼児で5〜27%、大学生で5〜9%とされています。しかし、近年は幼少期にはアトピー性皮膚炎と無縁だったのに、大人で発症するケースも増えています。
治療の基本は、先ほど述べた乾燥した皮膚バリアを保湿し、かゆみを抑えることが重要となります。保湿剤とステロイド外用薬を上手く使い、治療することが大切です。ステロイド外用薬については、次の項で詳しく説明します。
当クリニックでは、湿疹、水虫をはじめ、乾癬(かんせん)、やけど、皮膚ガンなど幅広い皮膚科診療を行っております。専門は、アトピー性皮膚炎、じんま疹などのアレルギー性皮膚疾患で、ドイツBonn大学ではアトピー性皮膚炎の世界的リーダーであるThomas Bieber教授のもとで研鑽をつんで参りました。また、広島大学病院では血管性浮腫をはじめ遺伝性血管性浮腫という難病の診療にも携わってきました。
これらの経験を生かし、丁寧な説明と適切な治療を心がけ、地域の皆様のお役に立てる皮ふ科クリニックとして診療いたします。ちょっとした皮膚の気になることを、お気軽にご相談ください。
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