一番心配していることが、新型コロナウィルス感染拡大に伴う長期休校明けの学校でいじめが頻発するのではないかということです。
いじめには、次の5種類があります。
様々な変遷を経て、平成25年のいじめ防止対策推進法の施行により、いじめの定義は以下のようにまとめられました。これが現段階でのいじめの定義、すなわち国が言ういじめとは何かということになります。
この定義のポイントは、下線を引いている部分です。いじめを受けている側に判断基準があるということです。すなわち、周りの者やいじめをした側が、いじめていないと言っても考慮しないということです。いじめられている側が、苦痛を受けていればいじめと認定できることが重要です。
私は、スクールカウンセラーをしています。小学校、中学校、高等学校に年間約400時間滞在しています。さらに特別支援教育アドバイザーとしても年間400時間以上、小学校と中学校に滞在しています。大学でもアドバイザーや相談を受けています。
その私が今、一番心配していることが、新型コロナウィルス感染拡大に伴う長期休校明けの学校でいじめが頻発するのではないかということです。
昨年、国の自殺総合対策推進センターは子どもの自殺は8月下旬が最多との分析を明らかにしています。そして、同センターは「9月1日という特定の日に限らず、夏休みの後半から明けにかけて広く、児童生徒の自殺防止の取り組みを進めていくことが必要」と注意喚起していました。
今年は従来と比べて、様相が一変したといってもいいでしょう。夏休みはせいぜい10日前後しかありません。新型コロナウィルス感染拡大に伴う臨時休校が約3か月に渡ったのです。休校明けのこの時期が子どもの緊張感が最大となることがわかります。これらの緊張感は、身体症状となって現れます。「胃が痛くて冷や汗が出る」「調子が悪くて朝起きられない」「頭が痛い、手足がしびれる」などと訴えてきます。
さらに、コロナ後はそれまでそういうことがなかった子どもたちにまでこれらの緊張感を持つ子どもが増えることが予測できます。子どもというのは、不安を持つものです。それは、今回でいうと有名な芸能人もなくなっているし、自分の親やおじいちゃん、おばあちゃんも亡くなってしまうのじゃないかと思ってしまうのです。したがって、今までの夏休み明けのレベルではなくかなり高レベルの危機が子どもたちを襲っているのです。
学校の先生方は、元の学校にとにかく戻さなくてはいけないと必死に頑張っておられます。少ない登校日数で教科書を終えなければいけないと躍起になるでしょう。また、先生方もコロナによる緊張を強いられている当事者ともいえるのです。学校に来てみるとわかります。マスクをして、廊下は子どもがぶつからないように一方通行の矢印がつけられています。職員室の机には透明のシールドで仕切られていたりもしているのです。子どもたちからのSOSを見落としてしまうかもしれませんし、先生方を責めることもできません。
子どもたちが楽しみにしていた様々な行事も無くなり、クラブ活動も対外試合が縮小される中で活動に身が入らないのではないでしょうか。
発見のポイントの後に( )の中に受けているいじめの可能性について書きました。
これらの兆候がないかどうか、子どもの様子をよく見守ることが大切です。
まず、子どもがいじめられていたら、親は絶対にあなたの味方だと伝えなければいけません。これが何よりも大切なことであり、解決への出発点となります。
そして、傷ついている子どもに対して「お母さん(お父さん)は、あなたを絶対に守る」ということを伝えなくてはいけません。親が守ってくれるという宣言は何物にも代えて安心感を子どもに与えます。
「いじめがなくなる」まで子どもは安心して学校に通うことはできませんので、休むことも視野に入れなければいけません。無理して行く必要はないということになります。
いじめられている子どもから状況を丁寧に聞き取ります。
具体的に、「いつ」「どこで」「誰に」「どんなふうに」いじめられたのか、
そしてその結果、「どんな気持ちだったか」「どんなことがおこったか」(傷やお金を取られた、物が壊れた等)をできるだけ詳細に聞き取り、メモにしてください。記録を取るということです。もし、傷が残っていたら写真をとるとか、暴行の跡が残っていたら受診をして「診断書」などを取っておくことも重要です。
現代のいじめは、悪質で、真犯人がわかりにくい、そして密室で起きるのでわかりにくいという特徴があります。いかにいじめの実態を記録したり証拠を残したりするということが重要なポイントとなります。悪質なケースは弁護士等に依頼することも視野に入れます。しかし、学校問題に詳しい弁護士でなければうまく対応はできないでしょう。
学校へのいじめの相談は、記録があるとスムーズにいくことが多いということを知っておいてください。
いじめが発見できたら、まず担任に相談をすると思いますが、このときに記録を添えておくことで担任も落ち着いて読むこむことができるのです。校長がどのようにリーダーシップをとることができるかが実は重要です。場合によっては、教育委員会に対する交渉も必要になるでしょう。私は、教育委員会でも働いていたのでよくわかるのです。事実の共有には最初の記録が最も重要なのです。担任、校長、教育委員会と親が事実さえ共有できれば必ず解決に向かうことができます。一番避けたいことは、感情的に学校に電話をしてしまうことです。口頭ですと、例えば、授業の前でしたら電話を受けた担任も時間を気にするでしょうし、担任から校長に報告されるときには内容がさらに不十分に変容してしまいます。後々「言った」「言わない」のトラブルになる可能性も多々あります。中には、担任の段階または校長の段階で止まってしまうこともあります。場合によっては教育委員会の隠蔽ということも過去行われた例もありました。記録を取っておけば、隠蔽もできません。
先述した「いじめ防止対策推進法」により「学校は報告があった場合には、事実確認をすること、その結果、いじめがあったと認められた場合にはいじめをやめさせ、その再発を防止するために」助言、さらに犯罪に近い行為があった場合には警察への通報が義務付けられています。
最後にこのことを言っておきたいと思います。
東日本大震災の時に街中に「がんばろう、日本」という標語が被災者を抑えつけたことも知っていただきたいのです。この標語が圧迫となり、「もうがんばりたくない」「やってられない」「疲れた」という声が出せずに弱音を吐けずに地元の支援者も含めて「交代」も「休憩」もできずに5年間で162名の災害間連自死者を出しています。
「がんばらない」「学校を休みたい」「やめたい」「逃げたい」という自己表現に対して「そうだよね。しんどいよね。あたりまえだよ。私も同じよ」と答えてほしいのです。
私はカウンセラーですが、カウンセリングではこれを「受容的態度」と言って最も大切にしています。休むことも選択できる生活を保障することがコロナ後の世界に求められているように感じます。
私が大学を卒業してすぐに教師となって教壇に立ってから30年が過ぎ、発達障害や特別支援教育について講演をするようになって、10年以上が経ちました。特別支援教育とは、従来知的な遅れや目が不自由な子供たちなどを対象にしてきた障害児教育に加えて、「知的発達に遅れがないものの、学習や行動、社会生活面で困難を抱えている児童生徒」にもきちんと対応していこうと言う教育です。
これは、従来の障害児教育で論議されていた内容をはるかに超えて、発達障害児はもとより発達障害と診断されなくても認知機能に凹凸のある子供の教育についても対象としており、さらに子供だけでなく我々大人も含めたコミュニケーションや感情のコントロールといった、人間が社会で生きていくうえにおいてもっとも重要であり、基礎的な内容を徹底して論議しているからであるととらえています。
そのためには、児童生徒一人ひとりの教育的ニーズを把握して適切な教育的支援を行う必要があります。ここで、単に教育とせず、教育的支援としているのは、障害のある児童生徒については、教育機関が教育を行う際に、教育機関のみならず、福祉、医療、労働などのさまざまな関係機関との連携・協力が必要だからです。また、私への依頼例からもわかるように、現在、小・中学校さらに高等学校において通常の学級に在籍するLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、知的に遅れのない自閉症(高機能自閉症・アスペルガー障害)などの児童生徒に対する指導及び支援は、喫緊の課題となっており、これら児童生徒への支援の方法や指導原理や全ての幼児・児童生徒への指導は、私達大人を含めて全ての人間が学び、関わり合うための基礎といえるコミュニケーション力を考える上で必須の知識であることを色々な場で訴えています。
今までたくさんの子供たちや親、そして同僚の先生方と貴重な出会いをしてきました。また、指導主事として教育行政の立場からもたくさんの校長先生方と学校経営の話をしたり、一般市民の方からのクレームにも対応したりと、色々な視点で学校や社会を見つめてきたつもりです。ここ数年は毎年200回近くの公演を行い、発達障害や特別支援教育について沢山の方々にお話をしてきました。そして、満を持して2014年3月に広島市立特別支援学校を退任し、2014年4月に竹内発達支援コーポレーションを設立致しました。
今後は、講演、教育相談、発達障害者の就労支援、学校・施設・企業へのコンサルテーション、帰国子女支援、発達障害のセミナーなどを行っていく所存です。
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