2020/04/15

悪い習慣を良い習慣に変えて、免疫力・抵抗力を上げましょう!

新型コロナウィルスが、あれよあれよと思ううちに先が見えないような大変な事態になってしまいました。 生活習慣病で悩むような時代に、なぜ感染症で死ななければいけないのかと思いませんか?

実は21世紀に入ってから今日まで、SARSや新型インフルエンザ、エボラウィルスなど新しい病原体が見つかり、国をまたいで流行しました。これはどうも人間が今まで入らなかった森林の奥深くまで入り込んだり、鶏や豚を庭先で飼ったり、また海を越えて人々が交流したりという今までになかった「より豊かな暮らしのため」に人が未開拓の領域に侵入しているからかもしれません。 21世紀は感染症の時代だと言われています。

それでも研究者たちは日夜大変な思いをしながら、着々と研究を進めています。きっともうすぐいろいろなことが解明されたり、治療薬ができたりすることでしょう。

しかしまだまだ、解明されていないことがたくさんあるようなので、今回は、今私たちができることを書いてみることにしました。

そもそも「コロナウィルス」って感冒の菌なんですよね。SARS(重症急性呼吸器症候群)は、コウモリ(あるいはハクビシン)のコロナウィルスが人に感染し、ヒト・ヒト感染を起こすことで8,000人を超える感染者を出しました。また、2012年には、アラビア半島でMERS(中東呼吸器症候群)が報告され、ヒトコブラクダからヒトに感染することが判明しました。そして2019年12月に中国・湖北省武漢市で発生した肺炎は、新型コロナウィルス(SARS-COV-2)が原因であることが判明しました。どうやらこの病原体もβコロナウィルスに分類され、動物由来のコロナウィルスのようです。 飛沫感染が主体と考えられていましたが、どうも感染の広がり具合からエアロゾル感染も言われています。接触感染や換気の悪い環境では、くしゃみや咳がなくても感染もあり得ると考えられています。初期症状はインフルエンザや感冒に似ているようです。

7都府県に非常事態宣言が出され、この先どうなるのかしら? 終息はいつ? 先行きが目に見えないので、とても不安です。 私は医療現場で働いているので、受診される方によって感じ方にかなり個人差がある様に感じています。あまり気にしていない方、医院には行きたくないので薬だけ出してほしいと言われる方など様々です。医師も薬を多めに処方して、来院回数を減らすようにしています。 しかし感染を回避するためには、『不必要に出歩かないこと』『自分自身の健康状態を良くしておくこと』が大切です。 自分自身の免疫力・抵抗力を高めることが、私たちにできる備えだと思います。かといって、特別なことを始めるのではなく、あまり無理をしないで普段できてないところを補うとか修正するというような生活に切り替えていきましょう。

そういう私も免疫力って、分かっているようで分かっていなくていろいろ調べて勉強してみました。 免疫とは体内に細菌やウィルスが侵入すると、リンパ液の中にあるリンパ球がそれを感知して抗体を作り、防御します。このときリンパ球はそれら異物が出した毒素の性質を記憶し、新しく生まれたリンパ球にも伝達していきます。ですから、一度かかったら二度とかからなかったりします。 これが免疫の力というのでしょう。 抵抗力というのは、外からの力に対して耐えたり、跳ね返したりする力のことを言います。疾患に耐えて健康を保持する力、病気に打ち勝つ力のことを言います。『私は抵抗力があるから風邪をひいても軽くて済む』という言い方をしますね。

免疫力・抵抗力を強くするために何をすればよいのでしょうか?

先ずは食事の内容から考えてみましょう。できるだけ、3食規則正しく食べることが基本です。

免疫力を高める栄養素とは? (免疫細胞とは白血球類のことです)

免疫細胞の主原料はたんぱく質です。たんぱく質は体内で起きる様々な活動を助ける酵素のもとでもあります。 たんぱく質とは主なおかず(主菜)として食べている肉や魚、卵、大豆(大豆製品)のことです。不足がちな方は毎食手のひら位の量のたんぱく質を食べるようにしましょう。

体の中で一番多く免疫細胞が存在するのは「腸」です。

腸内環境を整えるためには、食物繊維が必要です。食物繊維は「善玉菌を増やす」「排便を促す」などの作用があります。腸内環境を整えて、免疫細胞にしっかり働いてもらいましょう。 食物繊維は野菜類や穀類、豆類、きのこ、果実類に多く含まれますので、毎食両手に山盛りの野菜を食べるようにしましょう。

また、腸の環境を整える働きをする「乳酸菌」も重要です。

乳酸菌というと「ヨーグルト」を思いつきますが、乳酸菌にも植物性と動物性がありますのでどちらかに偏ることがないようにしましょう。 動物性の乳酸菌にはヨーグルトやチーズ、発酵バターがあり、植物性乳酸菌にはみそ、しょうゆ、酢、みりん、ぬか漬け、キムチ、ピクルス、納豆などがあります。

免疫力を高める栄養素としては亜鉛が重要です。

亜鉛は、免疫細胞や酵素の働きを助けます。亜鉛不足になると味覚を感じにくくなると言われていますが、普通にバランスよく食事をしていれば不足をすることはありません。 亜鉛を多く含む食品はかき、かに、牛肩肉、牛もも肉、豚レバーなどがあります。

免疫力を高める栄養素としてビタミンAがあります。

ビタミンAは粘膜を良い状態で保つのに必要な栄養素です。喉・鼻・・腸などの粘膜は病原菌の侵入を防いでいます。ビタミンAはレチノールとも呼ばれ、レバーやうなぎなどの動物性食品に多く含まれます。緑黄色野菜に多く含まれるβ-カロチンはビタミンAが不足した時、体内でビタミンAに代わることが出来ます。 レチノールは鶏レバー、豚レバー、あん肝、うなぎの肝、卵黄などに含まれ、β-カロチンはモロヘイヤ、人参、ゆでほうれん草、ゆで春菊、西洋カボチャなどに多く含まれます。

免疫力を高める栄養素として、ビタミンB群があります。

ビタミンB群としては、ビタミンB1・B2・B6・B12、葉酸、パントテン酸、ナイアシン、ビオシンがあります。ビタミンB群はどれかを摂ればよいというものではなく8つをバランス良く摂れていればそれぞれが上手く働くようになっています。

ビタミンB1
豚肉やベーコン、鶏レバーに含まれます
ビタミンB2
豚、牛、鶏のレバーやはつ、うなぎの肝、すじこ、納豆
ビタミンB6
ニンニク、マグロ、かつお、鶏ひき肉、鶏ささみ、焼きあじ、めざし
ビタミンB12
しじみ、アサリ、赤貝、すじこ、いくら、あん肝、鶏レバー、めざし
葉酸
鶏、牛、豚のレバー、うなぎの肝、ウニ、枝豆、パセリ、モロヘイヤ、菜の花
パントテン酸
鶏、牛、豚のレバー、鶏はつ、鶏ささみ、卵黄、生たらこ、納豆、いくら、すじこ
ナイアシン
生たらこ、まぐろ、かつお、丸干しイワシ、鶏レバー、牛レバー、鶏ささみ、鶏むね肉、焼きいわし
ビオチン
鶏、豚のレバー、ほうれん草、納豆、人参、玉ねぎ、牛乳、鮭、トマト

ビタミンCは風邪予防に良いというイメージがありますが、実際にビタミンCは免疫力を高める働きがあります。ビタミンCが多く含まれるものには赤・黄のピーマン、ブロッコリー、パセリ、ゴーヤ、モロヘイヤ、柿、いちご、キゥイフルーツ、柑橘類

免疫力を高める栄養素としてビタミンEがあります。

抗酸化作用のあるビタミンE(β-カロチンやビタミンCにも抗酸化作用があります)も体内の活性酸素が細胞を傷つけてしまうのを防ぎます。 ビタミンEを含む食べ物にはコーン油、サフラワー油、すじこ、いくら、モロヘイヤ、西洋カボチャ、焼きたらこ、アーモンドなどがあります。

※白血球が異物と戦うとき、白血球の中のビタミンCが必要ですが、砂糖を食べるとこのビタミンCが少なくなってしまいます。砂糖摂取後ビタミンCが戻って、白血球が元の働きを取り戻すのに数時間かかるそうです。(6時間位という研究結果もあるようです)

細々と書きましたが、そんなに面倒なことではなく、規則正しくいろいろなものを主食・主菜・副菜とバランス良く食べていれば大丈夫です。

免疫力を効果的に高めたいのであれば、食べ物以外にも気を配ってください。

  1. タバコを吸うことは生体防御反応の最前線である、鼻と口の中の粘膜を傷つけることになります。この際禁煙されることをお勧めします。
  2. 飲酒はほどほどに。アルコールは時々飲む程度なら良いのですが、毎日のようにかなりの量を飲んでいると、口や食道の粘膜が傷つき免疫を低下させます。
  3. ストレスをため込まない。うつ病の人は免疫機能をつかさどる細胞がアンバランスであるという報告があります。ストレスを上手に発散させて心の病気を発症させないようにしましょう。
  4. 体を冷やさないようにしましょう。体の冷えは免疫機能の働きを邪魔しています。体温を上げて心身ともに元気でいられるようにしましょう。免疫細胞は36.5℃くらいが一番よく働くようです。シャワーより38℃から40℃くらいの湯船に20~30分浸かるのが良いようです。
  5. また、忙しくて睡眠時間が取れないと思っておられる方、できれば寝る時間を決めてから作業をしましょう。早めに布団に入って、7~8時間睡眠時間を確保しましょう。

また、免疫機能は年齢とともに低下すると言われています。しかし歳をとっても元気な方はたくさんいらっしゃいます。年齢ととも免疫力が低下してくる方は、ストレスを溜めこんでいる方が多いという研究結果もあります。目には見えませんが、どうもストレスというのはかなり健康に影響を与えているようです。 自分の生活を見直して、できるところから修正して、くよくよ意味のない心配をしてストレスを溜めないようにしましょう。

次回は世の中が好転していることを祈って、初めて一人暮らしをする方に食事作りの基本を2回に 分けて書きたいと思っています。

コラムニスト

管理栄養士  伊藤 教子 

長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。

 関連記事

column/btn_column_page
トップ