2020/05/15

今回は新生活を迎える方たちへ、食生活のアドバイスをするつもりでしたが、

予定を変更してコロナ禍の中での食生活について書きたいと思います。

新型コロナウィルスの所為で世界中が大変なことになってしまいました。こんなに発達した現代でもウィルスの驚異の前には何とももろいものです。自然の恐ろしさを改めて感じずにはいられません。

深夜PCの画面を見ていたら、『コロナの外出規制の影響でフランス人が太った』という記事が写真とともに出ていました。私は『フランス女性は太らない』という本や『フランス人は10着しか服を持たない』-パリで学んだ暮らしの質を高める秘訣ーという本を読んだことがあって、いずれもアメリカでベストセラーになったということでした。どうも肥満とか痩せとか、食事という文字は私の眼には優先的に飛び込んでくるようです。

これは私も何となく心配していたのですが、生活習慣病の人が通勤をせず自宅に籠って、なれないテレワークをしたり、学生が一人でぼうーと勉強道具を広げて何となく日を過ごしていて大丈夫なんだろうかと気になっています。 人間、そうそう毎日、毎日同じように集中できるものでもありませんし、散歩にも行けないとなると活動量も日に1000歩や2000歩程度だろうと思います。ただ時間はあるので、買い込んだ食料品をつい余分に食べることはないでしょうか?

クリニックでもなるべくリスクを減らすために、薬を多めに処方して受診期間を延長しています。ですから私も気になる患者様に当分お会いできていません。大丈夫かしらと気になっています。

どんな状況下であっても自分にとって適正な体重を維持し、肥満しないようにフランス人の食事の話を参考に書いてみました。

フランス人のお話の続きですが、『フランス女性は太らない』という本がありますが、そもそもそんなこともないと思います。フランス人の肥満率と、日本人の肥満率を比べると日本人の肥満率の方がずっと低くなっています。フランス人のおしゃれが素敵だと書いてある本には、日本人女性の肥満率が21%で、フランス人女性の肥満率が10%と書いてありました。しかし、そもそも日本では肥満の定義をBMI25以上が肥満としていますが、WHO(世界保健機関)では30以上が肥満となっています。

WHOの肥満の定義は、BMI(Body Mass Index)を利用した【体重㎏÷(身長m)2=BMI】で計算した値が30以上が肥満となっています。(日本は25以上が肥満としています)

例 体重60㎏の人で、身長が150㎝である場合、60㎏÷(1.5m×1.5m)=BMI26.66となり日本人は肥満となります。これがWHOの場合だと30以下なので過体重となり、肥満にはなりません。

2018年に厚生労働省が実施した国民栄養調査の結果では、日本人男性のBMIの平均値は23.6で、女性の平均値は22.6となっています。これに比べて、アメリカ人のBMIの平均値は男女とも28だそうです。

日本人と比較するとかなりふっくらという感じです。肥満率を単純に比較するとアメリカは31.8%、イギリスは24.9%、フランスは15.6%、中国は5.6%、日本4.5%となっています。南太平洋のナウルが71.1%で1位です。

日本では明治時代までは、子供が大きく成長するのは大変なことで、風邪や麻疹で亡くなる子も多かったようです。この時代に太っていると病気をして少しくらい食べられなくても安心できました。

この頃の詳細は分かりませんが、現代では太っていること=過栄養であって、リスクにしかなりにくいようです。寿命もBMI21~23程度がいちばん長生きできそうです。其れより低くても高くても、死亡率は上昇しているという研究結果があります。

アメリカで、『40歳時に肥満または過体重であることが、寿命をどれだけ短くするか?』という研究が行われたことがあって、これによると、40歳の時、過体重ならば(BMI30以上)平均して6~7年寿命が短くなるということが分かっています。

ようやく肥満の定義や肥満が良くないという話が済みましたので、『フランス人は太らない』というのになぜなぜ太ったかという話に戻ります。『新型コロナウィルス対策として課された外出制限中に、普段なら体型を保つことに気を配るフランス人の平均体重が増加していることが発表された』というのですから驚きました。

同国では、3月17日に外出制限策が課されてから、多くの人が在宅勤務をし、屋外での運動も制限された。そこで調査会社が、18歳以上の3045人を対象に行った調査によると、半数越えの57%の人が体重が増えたと答えている。毎日の通勤がなくなったうえに時間が空き、回答者の42%の人は夕食前に軽食を摂ることが日課になってきたと答えている。座りっぱなしの生活が続き、フランスではひんしゅくを買う軽食を摂る人が急増したことが原因で、平均して2.5キロ太ったということだ。

これは日本でも言えることで特に生活習慣病の人は要注意でしょう。いつもなら我慢できている間食が時間があることで、つい何気なく食べてしまうということにもなります。

今回は『フランス女性は太らない』という本の内容をお知らせして、活動自粛の最中に太らないように、生活習慣病が悪化しないように、注意していただきたいと思います。

パリジェンヌの太らない食事の習慣

  1. 3食をきっちり食べる。
    食事を大切に考えるフランス人は3食をきちんと食べて、食事を抜くことはしないようです。食後にはフルーツやデザートを食べて、お腹を満腹にしていますから食事の間で、間食が食べたくなるということもないようです。 ※フルーツやデザートはプラスではなく、必要エネルギー量内で食べましょう。
  2. 時間をかけて食べる。
    フランスの朝食はクロワッサンとカフェというように簡単ですが、昼や夜は1時間から2時間かけ て、楽しみます。家族や友人とおしゃべりをしながら時間をかけるのが一般的です。時間をかけて食べることが満腹中枢を刺激します。
  3. 新鮮な食材を必要な量だけ食べる。
    パリのマルシェでは新鮮な食材がリンゴ1個から買うことができます。フランス人は必要な量だけ新鮮な食材を買って、調理します。
  4. メリハリのある食事
    フランス料理はバターやオイルをたっぷり使った高カロリーのものが多いですが、パリジェンヌたちはこまめに献立をアレンジします。例えば、週末などにたっぷりのお料理を食べたら、翌日は野菜スープとチーズ、デザートにはヨーグルトという具合です。

フランス人の生活習慣3つのコツ

  1. 全身を鏡でチェック
    フランス人は体重を量って数字でコントロールするというより、大きな鏡に全身を映してシルエットのバランスを気にします。不健康なバランスの悪い体は素敵ではありません。少しの体の変化も見逃しません。
  2. たくさん歩く
    パリジェンヌはよく歩きます。地下鉄の1~2駅位は歩きます。犬を連れてすっと足を前に出して歩くことは自然にウォーキング運動になっています。アパルトマンにはエレベーターもない建物も多く、適度な運動になっています。
  3. 自転車に乗る
    パリジェンヌたちは。良く歩いたり、自転車に乗ったりします。パリ市営の貸自転車があり、どこからでも乗れて、どこへでも戻せてメトロやバスに乗るよりずっと快適に利用できます。

コロナ禍の太ったフランス人ではなく、通常時のパリジャンやパリジェンヌの真似をして、素敵にこの大変な時を乗り切ってみませんか?もっとも今はあまりウロウロすることもできませんから、自宅でできる運動をして、計画的に買い物をして賢く真似をしてみましょう。

次回は肥満の仕組みについて考えてみましょう。そうして少しすっきりした体を手に入れましょう!

コラムニスト

管理栄養士  伊藤 教子 

長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。

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