糖尿病により目の血管が痛むと、糖尿病網膜症により重篤な視力障害を引き起こす場合があります。
糖尿病と眼科との関連は低いように思われますが、血糖値が上昇すると全身の血管が傷つくため、その影響は目にも及びます。 糖尿病は血糖値が上がる病気で、国内で1000万人、予備軍を合わせると2000万人もの患者さんがいます。特に目は重篤な症状がでますので、糖尿病を患われている方は注意が必要です。
糖尿病により目の血管が痛むと、糖尿病網膜症と呼ばれる目の病気を生じます。初期には、目の中の網膜と呼ばれる部位に小さな出血や浮腫を生じ、病状が進行すると、異常な血管(新生血管)が形成されるようになります。この新生血管は、強い出血や、増殖膜・網膜剥離を引き起こす原因となり、重篤な視力障害を引き起こします。糖尿病網膜症に対する治療も進歩してきていますが、現在でも年間3000人もの人が糖尿病網膜症により失明しています。
糖尿病網膜症にならない、あるいは悪化を抑えるにはどうしたらいいのでしょうか?
これには、内科的な治療と眼科的な治療の両方が必要となります。どちらか一方が欠けてもいけませんし、両方の治療を頑張ることでより良い結果を得ることができます。内科的な治療は、食事や運動による治療、内服治療、インシュリン注射などで血糖値を下げて、これ以上目の血管が傷つかないようにします。血糖値が高くなる程、糖尿病網膜症を生じやすくなりますので、できるだけ血糖値を下げることを目標としますが、血糖値が下がり過ぎて、低血糖を繰り返す場合は、逆に目にダメージを与える事もあります。そのため、血糖値の上下の変動幅をできるだけ抑えながら、安定して数値を下げることが大切です。
また、高血圧や高脂血症などの他の全身疾患があると、糖尿病網膜症をより悪化させますので、糖尿病以外の全身疾患の治療も有効です。眼科的な治療は、糖尿病網膜症の初期であれば、内科的な治療に重点を置き、その後も状態の悪化がないかを定期的に眼底検査を行います。内科的な数値が改善しても、糖尿病網膜症が悪化してくるようであれば、レーザー治療や抗VEGF治療(硝子体注射)を行います。さらに悪化してくるようであれば、硝子体手術が必要となります。
糖尿病網膜症を生じても初期の段階では視力は良好ですが、病状が進むと視力が低下してきます。治療を行うことで出血や浮腫などの網膜の状態は改善しますが、一度低下した視力の回復は難しいです。より良い視力を保つには、現在の目の状態をしっかりと把握し、糖尿病網膜症を発症していない、もしくは初期の視力が良好な段階から、治療をしっかりと受けることが大切です。今までに目の検査を受けたことがない方は、一度は必ず眼科で検査を受け、視力や血糖値が良くても年に一度は目の検査を受けてください。
今までに目の検査を受けたことがない方は、視力や血糖値が良くても、必ず眼科で検査を受けて下さい。糖尿病網膜症が生じていなければ、年に一度の検診、すでに糖尿病を生じている方は、主治医の先生と相談の上で、病状に応じて定期的な検査を受けましょう。視力が低下してから、眼科へ受診するようなことがないようにご注意ください。
尾道市天満町にある「こばやし眼科」院長の小林賢と申します。
これまでに広島大学病院をはじめ、JA尾道総合病院、中電病院、堀病院に勤務し、結膜炎などの日常的な目の病気から、白内障手術、網膜硝子体手術、緑内障手術などの高度な治療にも携わりながら、自己研鑽に努めてまいりました。JA尾道総合病院では眼科部長として長年勤務し、尾三地域の眼科診療に深く関わり、地域医療の重要性を深く考えてきました。今までの経験をもとに、個人のクリニックでも総合病院と同等の治療を行うことを目標とし、地域の皆様に信頼される温かい診療を目指していきたいと思います。
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