2021/05/21

血糖値が高い方へ、『穏やかな糖質制限食』のための糖質を減らしたメニューの工夫

糖質を減らすメニューをお示しする前に、糖質とはどんな栄養素かということをお示ししておきます。糖質は穀類、イモ類、砂糖などの主成分であり、私たちのエネルギー源として最も重要な栄養素です。その中でも最も摂取量が多いのが多糖類のでんぷんです。

糖質は炭素、酸素、水素の結合した化合物であり、体内で二酸化炭素と水に分解され、1g当たり4kcalのエネルギーを発生します。我々日本人は通常エネルギー量の50~60%を糖質で摂っています。糖質は摂りすぎると脂肪に変換されて貯め込まれますが、不足すると脂肪やたんぱく質をエネルギー源として使ってしまいます。糖質が不足した状態で、たくさんの脂肪をエネルギー源として使うとケトン体という酸性物質が血中に増えて、ケトアシドーシス(酸血症)を起こします。また、たんぱく質が足りなくなると、筋肉量が減少してしまいます。

炭水化物の中でも易消化性炭水化物(人が消化吸収しやすく、4kcal/gのエネルギーを産生するもの)を糖質と分類され、難消化性炭水化物(人が消化吸収しにくい、エネルギーは0~2kcalと不安定なもの)その一部が食物繊維と呼ばれます。科学的に分類すると糖質には単糖類、二糖類、多糖類、糖アルコール、その他のものがあります。単糖類(ブドウ糖・果糖)と単糖類が2つつながったもの(ショ糖=ブドウ糖+果糖、麦芽糖=ブドウ糖+ブドウ糖、乳糖=ブドウ糖+ガラクトース)があり、糖質の内、単糖類と二糖類を総称として糖類と呼びます。オリゴ糖類は、少糖類で、単糖類が2~20個つながったものですが、オリゴ糖の多くは低カロリーで、ビフィズス菌の栄養源となります。

オリゴ糖なら血糖が高くても食べられると思っている方もおられるでしょうが、私は甘味料も含めて甘味離れをするために、食べないほうが良いと思っています。

従って、

でんぷんを多く含む食品

穀物(米、パスタ、パン、うどん等)、イモ類、野菜類(カボチャ、ニンジン、コーン)

糖質の多い食品(砂糖や砂糖を多く使った食品)

菓子、ジュース、煮物などの調理品、ソースやたれ等

果糖を含むもの

果実(特に糖質の多いバナナやドライフルーツに注意)、ジャム類

以上のような食品を減らすようにすれば糖質を減らすことができます。

「糖質は一切摂りません」というような極端な糖質制限食は、まだ安全性が確認されていませんし、食事の喜びを制限することの苦痛を考えても、皆様にお勧めできることとは思えません。私が1ヶ月いろいろ内容を変えて試してみて、1食あたり20g~40gを目指せば案外簡単に続けることが出来ました。山田悟先生の著書によると先生の施設では糖質10gまでの間食も、OKだそうです。ちなみにこれは朝、昼にリンゴを1/6個づつ食べたり、八朔や夏みかんを1/2個づつ食べられます。

当院で糖質制限をしておられる方で一番多いのが、「夕食はご飯を食べません」というものです。普通に1600kcalの食事をされている場合、50%を炭水化物で摂取しておられた方は半分の800kcalを炭水化物で摂取しておられることになります。これは糖質に直すと、200g摂っているという事です。通常の糖質摂取量は国民栄養調査によると、平均240~250gです。また、国立がん研究センターの調査では220~310g/日だそうです。1食分の糖質を減らすと約80g~100g位の糖質を減らすことになりそうです。

私が効果が出ると感じている『緩い糖質制限食』では70g~130g/日にするという事になりますから、簡単に言うと普段の食事の糖質を半分以下にするという事です。最も主食を山盛り食べていたような方は、まずご飯を150g位に減らしてみてください。(コンビニのムスビは1個100gで糖質36.8gあります)

それだけでも、体重は目に見えて減ってくることでしょう。

私の一日の食事を基に、簡単に実行できる方法をお示しします。

【朝食】

  • まずは朝食から始めてみましょう。
    私はパン好きなので、パン1個食べたいところを1/2個にして、-15gの糖質減。 無脂肪、無糖のヨーグルトにはフルーツの代わりに蒸し大豆を50g加えます。前夜にゆでておいた卵(1日おきに食べます)スナップエンドウ、小松菜のいりごまのみの和え物(青菜は買った日に茹でて冷凍します)飲み物はカフェオレです。

    糖質25.3g  たんぱく質23.5g

【昼食】

  • 昼食は職場から戻って、大急ぎで用意することが多いです。
    以前はお弁当を作っていましたが、野菜が多いとべちゃっとしておいしくないので、朝食と一緒に材料を準備して出かけます。 1/3玉分のレタスと大量のエノキ茸、エリンギ、平茸と薄切りの豚肉をオリーブ油で炒めていりごまドレッシングを廻しかけます。彩に絹サヤとパプリカを散らしました。主食はチーズ入りベーグルを1/2個食べて、食後にリンゴを1/6個食べました。飲み物はコーヒー。

    糖質28.6g たんぱく質31.7g

【夕食】

  • 夕食は少し手をかけて、タンドリーチキンとカボチャ、ミックスビーンズ、エリンギ、タマネギ、ナスとベーコンを角切りトマト缶で煮込んだトマトスープ。白ワインの泡を少しだけ。
    鶏肉はジップロックに入れてハーブとヨーグルト、塩少々、カレー粉を混ぜて漬け込みます。その間に残り野菜を煮て、角切りトマトをどっさり入れてスープを作ります。カボチャは糖質が多いので、大きく切って食べた感を出します。その代り主食無し。アルコールはワイン程度なら、100mlで赤1.5g、白2gで済みます。ビールや日本酒、梅酒は要注意です。

    糖質24.1g たんぱく質34.2g

この1日で糖質は78g、たんぱく質89.4gになります。緩い糖質制限が70g~130gですから、少な目でクリア、そしてたんぱく質が標準体重当たり1.7gで1.2g~2gを超えない範囲です。あまりたんぱく質を増やすと腎臓に負担がかかると思います。又、肉などを増やし過ぎると動物性脂肪も多くなるので、魚や大豆製品もまんべんなく食べてください。

エネルギー量を減らし過ぎると逆にお腹が空いて、糖質を取りたくなりますからオリーブオイルを使うなどして腹持ちを良くします。今までの1日7~8g以内の油の摂取量から考えると倍近く食べています。

実際に当院の糖尿病患者様が糖質制限食を実施されていて、うまく血糖値が下がっている方もおられます。しかし最近よく使われるようになったSGLT-2阻害薬(腎臓から排出されるブドウ糖とナトリウムを再吸収する働きを阻害する薬)という薬を服用されている方は、極端な糖質制限はしないほうが良いと思います。糖尿病に限らず、サプリメントや食事療法で取り入れたいと思うことがあれば是非主治医に確認してください。

次回は朝食抜きの方が気になっていますので、簡単に用意できる朝食と、それにまつわる話を書きたいと思います。

参考文献:主に山田 悟先生の「穏やかな糖質制限」ハンドブック

コラムニスト

管理栄養士  伊藤 教子 

長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。

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