今回は具体的に個々人の食べる量の適正量をお知らせする前に、どうしても知っておいていただきたいと思っている食事の摂り方の基本を書いてみました。
世界中でコロナウィルスの感染が広がり、思いもかけないことが起こっている。健康を維持する事だけではなくこの感染が広がることによって、それこそ死活問題で日々明日はどうなるかと考えておられる方も多い事でしょう。
しかし、まず健康を維持しないことには何事も始まりません。
300年も前に福岡藩の儒学者貝原益軒が『養生訓』に「どうすれば健康で長生きできるか?」また、「健やかな人生を送るにはどうすれば良いか?」ということを書いています。
この貝原益軒さんは私が食事指導で悩むたびに登場させる偉い先生で、少し体が弱かったようで、養生をすることで人生50年までの時代に80まで生きて、書物を著したというまさに持論の通りに生きた素晴らしい方です。
私はこの名著を目にするたびに、肖像画で見る貝原益軒さんの動く姿が目に浮かんできます。きっときちっきちっっと何事も決めたとおりに実行して、『とてもかなわないわ』と少々面倒くさい先生だったかもしれないと想像してみたりします。この先生は自分も実行しているからこそ、はっきり書物で述べることが出来たのでしょう。
この『養生訓』のように生活すればきっと太ったりすることはないでしょう。そして今こそこのストイックなまでの健康観を意識してみるのも良いのではないでしょうか?
昔は感染症で亡くなったり栄養失調で病気になったりしていましたが、現代では医学が発達し、経済が発展し国民皆保険の恵まれた国内では『病』に対してかなり無頓着になっているのではないでしょうか?
それこそ『病気になれば医者が治してくれる』と思っていませんか? 『自分は病気にはかからない』と思っておられる方も少なくないでしょう。
さて、貝原益軒先生の養生訓に戻りますが、これによれば
心は楽しまなければいけないが、からだは動かして休ませ過ぎてはいけないと言い、だいたい自分の体を甘やかしすぎてはいけないと言っている。 いくら時間に余裕があっても決まった時間に起きて、決まったように動くことが大切です。
酒もほろ酔い程度でやめておきましょう。 よくリモートで飲み会をすると「家に帰らなくても良いので、つい長時間飲んでしまった」というようなことを耳にします。 「初めから何時までと決めておけばよいのに・・・・。」と私なんぞのように飲まない人間は不思議に思うのですが。
また、これが重要なところですが、『食事半飽に食ひて。十分にみつべからず』です。食事は腹八分(若者の中では死語に近い言葉かもしれませんが)ではなく、半分くらいで良いと言っています。酒も食事も自分で食べる量を決めてそれ以上は食べないことにするのも大切だと思います。満腹になればよいとばかりに目の前にあるものを次々見境もなく食べていると胃袋はだんだんに伸びて、大きくなってしまいます。また、勢いよく食べることで、満腹中枢が作用する前に沢山の食物を胃袋に詰め込んでしまうことになります。
また、食事の中身については、『すべてのものは味の薄い物を好んで食べ、味の濃い物や脂っこいものはたくさん食べてはいけない』としています。そして、『冷たい物や硬い消化の悪い物も食べないようにしよう』と言っています。
先にも述べましたが、今私が気になっているのは『畏れる』という言葉です。 節度を守り、すべてに細心の注意を払い、やりたい放題にしない過ちのないように心がけるという事がとても大切なことのように思います。
まだまだ『養生訓』の中には宝物のような現代社会にあてはめてもちっともおかしくない名言が沢山あります。この続きはまたの機会にして、この養生訓の考え方を土台にして、具体的に食事を考えてみたいと思います。
一番簡単な方法は、まず食べたい放題に食べるのではなく、自分にとっての適量を知って、太っていれば今より食べる量を減らします。
あなたは太っていますか?それともやせていますか?
前回でもお示しした体格指数BMIを使って自分の体格を客観的に判断します。
25以上は肥満となります。 18.5~25未満は普通で、18.5未満は痩せという事になります。
(高齢者はこの限りではありません)
しかしBMI≧25が医学的に肥満を要する状態とは限りません。ましてや体重だけでは脂肪が多い肥満なのか、脂肪はとても少なくて筋肉の重さなのかわかりません。 肥満学会ではBMI≧25の状態は肥満に起因ないし関連して発症する健康障害の予防および治療に、医学的に減量が必要な病態を肥満症と位置付けています。そして、健康診断などで健康障害を伴いやすい肥満の目安として、おへその位置でウエスト周囲径を測ります。
ウエスト周囲径は男性が85cm以上、女性が90cm以上、また腹部CT検査で内臓脂肪面積が100㎠以上とする内臓肥満は、健康障害を伴いやすいとしています。(この男性と女性の数値では発表された時はいろいろ議論があり、そのうち改訂されるでしょうと思っていましたが、今も発表当時と同じ数値です。)少しふっくらしてきた男性には酷な数字でしょう。
この計算により、痩せている人は今より少し多めに食べましょう。 太っている人は少し控えてみましょう。 この場合痩せている人は、「食べても太らないのよ」という方も多いでしょう。数年特に変わらない方は、無理に太ることを考えなくても良いでしょう。また、ふっくらしているからと言って、BMIが23~24の場合は特に痩せようとしなくても良いでしょう。
健康診断の問診票で「若い時に比べて、10kg増えましたか?」という質問がありますが、これは元々やせタイプの人、ふっくらタイプの人がいるので自分が急に痩せてしまったとか、急激に太ったとかを判断して、体重の増減を考えてみてください。明らかに太っていると思われる方は次のようなことをチェックしながらできそうなことから始めてみましょう。
太った原因をチェックして原因を再確認しましょう!
あなたはチェックしながら、ご自分が太っている原因に気が付かれたことでしょう。
実はチェックするまでもなく、なんとなく太る原因は思いあたることがおありでしょうが、改めて太った原因を意識することが痩せるための第1歩です。
今回のコロナ禍の中では、元々食べる量が多くない方でも圧倒的な活動量の低下が問題になります。また、食事時間が十分に取れるために食べ過ぎてしまう事もあります。また『料理に凝り過ぎてついつい毎日のトータルが高カロリーになってしまっていた』 なんていう事はありませんか?
いずれにしろ太るということは
今回はつい私の好きな貝原益軒先生に力が入ってしまいました。 次回は具体的に食べる量や調理法の説明をしたいと思います。 ダイエット目的ではなく、あくまで健康を維持するための方法です。
長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。
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