2019/02/28

今更ですが、規則正しい生活が生活習慣病を予防します

私はクリニックで、栄養指導をするとき際に「食事は3食召し上がっておられますか?」と必ずお聞きします。食事を3食食べているということは、生活全般を規則正しく過ごしておられる場合が多いからです。逆に言えば食事が朝食抜きの方は、夜が遅くなっておられたり、昼食を摂る時間がなくて夕食をどっさり食べておられたりという人が多いようです。

1日に同じエネルギー量の食事をしても、これを2食だったり、または殆どが夜に偏っていたりするとメタボが心配になります。昔はよくお相撲さんの例を挙げて、『朝食を抜くと太りますよ』という話をしていました。実際に朝食と昼食の両方を食べる人と、朝食をとらずに昼食のみの人の血糖値を比較すると昼食のみの人のほうが上昇幅は大きくなることが証明されています。また、食べなくてダイエットになるはずがかえって太ったりします。

朝食は新しい1日を始めるためのスイッチです!

少し違った話になりますが、朝食を食べないとかえって太るというのは、『朝食を食べないと心身活動が始まらず、新しい1日を始めるためのリセットが出来ない』というマウスの研究がありますが、このことも関係があるかもしれません。朝食を食べる、食べないということだけではなく、私たちの体に備わって、体のリズムを刻んでいる体内時計が関わってきます。体内時計というのは生物のすべてに備わっているもののようです。近年の研究では人間の体内時計は24時間10分程度とされているようです。しかし地球の自転は23時間56分4秒という周期で回っているようで、例えばこれを1週間そのままにしておくと1時間以上の差ができてしまうことになります。ですから、体内時計を1日ごとにリセットし、1日24時間にしなければ、刻まれる時間がどんどんずれていってしまうことになります。

体内時計って何でしょう?

体内時計について少し解説をすると、体内時計には1日のリズムを刻む『中枢時計』と、体のいたるところに備わっている『抹消時計』があります。中枢時計は朝の光を浴びることでリセットされるといわれています。また、抹消時計は肝臓、心臓、血管など全身にあり、朝食を食べることでリセットされるといわれています。女子栄養大学の香川靖雄先生の研究によれば(マウスの実験ですが)栄養バランスの良い朝食を食べさせることで、最も正確にリセットできたということです。しかしこの忙しい現代社会の中ではなかなかむつかしいようです。

今主流になっているコンビニは1973年~1975年にできました。アメリカではセブンイレブンは7時から11時まで営業しているからこの名前が付いていると聞いて、「そんなに遅くまでお店が開いていたら便利だろうな」と思ったのを覚えていますが、まだまだ現実的ではありませんでした。ところがどうでしょうか? 今や5万店舗以上あるコンビニの80%以上が24時間営業だということです。これはそれだけ利用する人がいるということなのでしょう。忙しくて夕食を食べ損ねても、パンからお弁当、アルコールに至るまで何でも買うことができます。空腹のお腹を抱えて眠らなくてもよくなりました。

しかし、このことが体内時計を狂わせることになっています。おやすみモードになっている臓器を無理やり働かせることになります。そしてこの積み重ねが生活習慣病へとつながっていきます。

たくさんの健康情報は何が正しいのでしょうか?

マスメディアでは毎日色々な情報が流されます。「その情報は何処からでてきたのかしら?」と驚くようなことも多々あります。しかし我々の体は体内時計によって、秩序をもって動かされているということは疑いようのない事実です。ですから、それを無視して好き放題に生活するのはマイナスになることは確かなようです。とは言っても、現代社会では明るいうちに自宅に戻れる人ばかりではないですし、昼夜逆転になる仕事の人もたくさんいらっしゃいます。そんな人はどうすれば良いのでしょうか。『これを食べると健康に良いらしい』とか、『○○オフの食生活が良いらしい』と毎日のように飽きもせず、品を変えては同じような話題が放映されています。

体内時計をできるだけ狂わせない生活を考えてみましょう。

十数年前、夜勤のある工場勤務の糖尿病患者様の指導をしたことがありました。この人は日勤勤務の時は何とか血糖をコントロールできるのですが、夜勤が始まると忽ち崩れてきます。何とかできないかと色々なことを提案しました。結局のところ夜勤勤務の日は部屋を暗くしてしっかり寝てもらいます。午後3時頃までには起きて、食事をして、夜食のお弁当を持って出勤してもらいました。昼夜逆転になりますが、規則正しく夜勤明けの睡眠時間をきっちりとることで、仮のリズムを作る。家に帰って空腹に任せて飲食をしないなどをお願いしました。この頃、どれくらい体内時計ということを言われていたのか覚えていませんが、このころは地球の自転が24時間で、人間のリズムは約25時間位で刻まれていると言っていたような気がします。
今、街中のクリニックで栄養指導をしていますので、飲食業をはじめとする、夜中に働いて朝方帰宅するという人の栄養指導をする機会が増えました。帰宅してからの食事や睡眠の改善で、かなり血糖がコントロールできたり、中性脂肪や肝機能の数値が落ち着くようです。 どうしても夜中に活動をしなければならない人は、活動モードとおやすみモードをしっかり分けてみてはいかがでしょうか。

時間栄養学という考え方

規則正しい生活というのは、起床→朝食→昼食→夕食→就寝というリズムを規則正しく刻むことによって出来上がってきます。特に睡眠と食事は一番大事です。今、自分は朝食抜きだからとか、昼は食べていられないとか思っておられる人、また夜中の食事がやむを得ないと諦めておられる人も、ちょっと方法はないか考えてみてください。少し改善されるだけでも、きっと気になっている検査数値が良くなることでしょう。

体内の働きや食物を組み合わせて、例えば先ほどの香川先生の、朝食にバランスの良いものを食べた方が体内時計をリセットするためには効果的であるというマウスの実験結果がありましたが、何をいつ食べると効果的かというようなことを考えるのを時間栄養学といいます。最近この『時間栄養学』という言葉をよく聞くようになりました。

次回はこの『時間栄養学』について少し詳しく書いてみたいと思います。

コラムニスト

管理栄養士  伊藤 教子 

長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。

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