2020/09/18

食事バランスガイドの「コマ」どこかで見たことがありますか?

※画像をクリックするとPDFが開きます。

食事バランスガイドの区分

区分 1日の量(SV) 1つの基準 多く含まれる栄養素
主食(ごはん、パン、麺類) 5〜7つ 炭水化物 40g 炭水化物
副菜(野菜、きのこ、いも、海藻料理) 5〜6つ 重さ 70g ビタミン、ミネラル、食物繊維
主菜(肉、魚、卵、大豆料理) 3〜5つ たんぱく質 6g たんぱく質
牛乳・乳製品 2つ カルシウム 100mg カルシウム
果物 2つ 重さ 100g ビタミンC、カリウム

2000年から国レベルでの健康づくり施策として「健康日本21」が推進されて来た。しかし良くなるどころか中高年男性の肥満者が増加する等、一向に改善が見られないため、個々人の行動変容につながるような具体的なツールが必要とされた。

そこで、2005年に厚生労働省と農林水産省が様々な角度から検討し、発表されたコマの形をしたものがこの「食事バランスガイド」である。これは日本の「食生活指針」を分かりやすく具体的に実践するツールとして作られた。アメリカでも以前、ピラミッド型で底辺に穀物が描かれているフードガイドがあったが、現在は食事プレートを描いた簡単で分かりやすいイラストに変更されている。

このコマはどれくらい国民生活に浸透しているのであろうか?「見たことがあるような気がする」「お母さんに見せてもらった」が私の子供たちの感想である。

これは基本的にはほとんどの女性と身体活動レベルの低い男性を想定して作られている。
この「食事バランスガイド」の考え方は下記のようなことである。

「食事バランスガイド」の考え方

  • 食事のバランスを料理で考えることができる

    コマに書かれているイラストから、どんな料理を組み合わせて食べたらバランスが良くなるのか、またコマの量を調節することで、年齢・性別・活動量にあった一日に必要な料理の量を理解することができる。

  • 何を」「どれだけ」食べればよいのか5つの料理グループがある。

    上から順に主食・副菜・主菜・牛乳、乳製品・果物に分かれており、上にある料理ほどしっかり食べる必要があるということになる。それぞれをコマに書かれている料理を目安に、料理を「1つ」「2つ」と(SVサービング)という新しい単位で数えるようになっている。

  • 一日の食事の量的な目安を簡潔に表している。

    コマにバランスの取れた一日分の料理と、その組み合わせが示されているので、偏りのない組み合わせが分かる。極端に言うと下のものが多すぎるとコマは倒れてしまいます。

  • コマの形は、毎日完璧でなくても良い。

    コマのイラストは、平均的な1日分の食事であり、1食分がバランス悪くなったからと言ってすぐに 駄目だというわけではない。数日の間に食事内容のバランスを見直してみれば良いとなっている。

  • 菓子や嗜好飲料はコマを回すヒモ。

    菓子や嗜好飲料は、食生活の中での楽しみとしてとらえ、適度に摂取する必要があるのでコマを回す「ヒモ」としてあらわされている。

  • 水やお茶はコマの軸。

    水やお茶は人体にとっては絶対に必要なものとして、コマの軸として描かれている。

  • 食糧需給率の向上も目的とされている。

水分も必要だし、『運動をしないと独楽は倒れてしまう』というところまで考えられているのだが、昨今では糖質ダイエットが大いに話題になっている。しかし、このコマでは主食(炭水化物)の占める割合が多く、次が副菜、主菜の順番になっている。この「食事バランスガイド」をただ示されてもどのように考えてよいかわからないのではないか。

決して肉だけを食べていればよいわけではありません。肉のたんぱく質を代謝するにはビタミンB2やビタミンB6が必要です。そのためにはレバーなどにも含まれるが、卵や乳製品、魚介類も重要です。逆に主食の炭水化物を代謝するには豚肉に多く含まれるビタミンB1が効率よく働きます。

糖尿病の食品交換表では主食となる炭水化物の比率を50〜60%としています。しかし実際に食事指導をしていると「炭水化物抜きです」と言われる方も多いし、ごはんやうどんが好きでたくさん食べておられた方に少し量を制限すると、確実に体重は減ります。しかし炭水化物を50%以下にするとたんぱく質や脂質の割合が増えて糖尿病性腎症の心配や、脂質異常症の心配もしなくてはなりません。尿酸値の心配も出てくるかもしれません。

生活習慣病予防や肥満防止には、食事量だけが問題ではありません。現在の社会情勢、日常生活にあった指導が必要になります。

例えば油一つとっても、「毎朝○○油をスプーン1杯飲んでいます」「野菜ジュースに○○油を混ぜて飲んでいます」「豆乳に○○油を入れています」α-リノレン酸を多く含むアマニ油、しそ油、えごま油が良いと聞きますが、一番問題なのは摂りすぎることです。脂質によるエネルギー摂取が30%を超える人が多くなっています。脂質は炭水化物、たんぱく質が1g 4kcalのエネルギーになり、脂質は1g 9kcalになります。したがって脂質の多い食事はエネルギー過剰となり、体脂肪を蓄えてしまうことになります。

コロナ禍で外食が減っているかと思いますが、家での食事に目が向いた分、メディアから受ける日々の○○情報には注意が必要です。発信する側はもっと精査して責任をもって発信してほしいと思います。

今回私が使いにくいと感じており、食事の指導では使ったことのない食事バランスガイドをいろいろな観点から見てみましたが、やっぱり普通には分かりにくいと感じました。

弁当箱や、ランチ皿、手のひらを使った指導の方が分かりやすいでしょう。食べることは幸せなことです。価値観も人それぞれです。それを少し控えめに食べることは何かきっかけがないと難しいでしょう。

商業的な意味合いからは、お店で大々的に「食べるのを控えましょう」と叫ぶわけにはいかないのでしょうが、「バランスよい食事」をもっと啓発する活動を始めても良いのではないでしょうか?

大きなお店には管理栄養士が常駐していて、食事の知識や、栄養のことをいつでもアドバイスしてもらえるようなシステムができればよいのになあ…と考えています。

ちょっと面倒なことばかりを書いてきましたので、次回は食事に係るおもしろ話を探してみます。
まだどんな話ができるかは、探索中です。    乞うご期待!

コラムニスト

管理栄養士  伊藤 教子 

長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。

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