自分がどれくらいの食塩を食べているのか、知ることから始めましょう。
上手に減塩をする際、日頃よく食べているものの塩分量を知ることが一番です。そこから先ずは外せそうなものを除くことから始めてみましょう。
つい先日、待合室の患者様に「随時尿の食塩量が12gを超えていました。目標量6gの倍ありますよ」という話をしました。すると横におられた奥様が「塩とかほとんど使っていません」と答えられました。そこで、リーフレットを使って調味料や加工食品の塩分量を詳しくお話しすると、「そうだったんですね。そういえば竹輪とかさつま揚げはよく食べます」ということでした。高齢の患者様と食塩制限のお話をすると、「漬物や梅干を減らしていれば良いかと思っていた」という返事が返ってくることも度々あります。
食塩は濃い過ぎれば塩辛くて不味くて食べられませんが、ちょうどよい塩加減のことを『塩梅(あんばい)』というように、ちょうど良い塩加減というのは人によって違います。長い間の習慣で身についた『塩梅(あんばい)』は中々変えられません。
しかし、なぜ減塩をしなくてはいけないのか、理屈が分かることで習慣は変えられると思います。
前回(コラム:食塩の摂り過ぎが高血圧の原因になるのでしょうか)でも書きましたが、塩分に含まれるナトリウムを摂りすぎると、体がナトリウム濃度を薄めようとして水分を取り込んで体液の量を増やしてしまいます。すると、血管を流れる体液量が増し、心臓の負担を増やしてしまいます。心臓のポンプは強い力で体の隅々まで血液を届けようと頑張ります。そのことが高血圧となり、高血圧になると、血管にも心臓にもダメージを与えます。それを予防するために、まずは食事の減塩をすることが一番なのです。
高血圧症の治療のためには食塩は6g/日未満にする必要があります。又、2020年に厚生労働省から出された食事摂取基準では食塩の目標量は男性7.5g/日、女性6.5g/日に引き下げられました。それでもまだ、世界の国々の目標値には及びません。
まず、「何となく減塩」や「私は薄味なので」はあてにならなくて、自分の食塩摂取量をきちんと評価して、どれくらい減らすべきかを考える必要があります。高血圧症等で受診をされる機会のある方は、随時尿での食塩摂取量検査が簡便です。正確には24時間の畜尿をして調べるほうが良いのですが、定期の受診時の尿検査ついでに、食塩摂取量のチェックができると良いと思います。又、受診はしていないけど食塩摂取量が多いか少ないか知りたい方は簡単なチェック表がありますので、それで自分の食事の傾向を知ることができます。
以下のチェック表で自分の塩分摂取量を意識してみてください。
この表で2点や3点のところに〇が付いた方は、その個所を改善できるよう食生活を見直してみてください。
そして、普段何気なく食べているものの中に食塩がどれくらい含まれているか意識してみましょう。
減塩は生活習慣病を考える上では、世界的にも最重要課題の一つと考えられています。和食を悪者扱いする気はありませんが、何気なく食べているものの食塩量には驚かされます。
例えば朝食によく食べられるものを見てみましょう。
まず、量やみその種類にもよりますが、みそ汁1杯では約1.5g、インスタントスープ約1.2g、納豆のたれ0.5~0.8g、食パン6枚切り1枚約0.8g、有塩バター8gで0.2g、アジの開き1尾1.4g、中辛の塩鮭1切れ80gで1.1g~1.4g、ロースハム10g1枚で0.3g、サラダにドレッシングをかければ0.3g、漬物を食べたりすれば1g近く塩分をとることになります。何と大きめの梅干しに至っては1個で2gもあります。
どうでしょうか?
1日6g未満の食塩となると、1食で2g以内です。白米・味噌汁・納豆のシンプルな朝食だけで食塩量は2gになってしまいます。お昼にラーメンやうどん等の麺類を食べると5g~7gにもなります。いくら『麺類の汁は残しましょう』と言っても半分以下にするのは難しいでしょう。そうしたら食べる回数を減らすしかありません。 そして、何となく口にしている菓子類の塩分など大抵袋に明記してあるので、関心を持ってみましょう。
「甘味と塩気のバランスが良いよねえ」などと思って食べているものがあるのではないでしょうか。
塩味は食物をおいしく食べるため、食欲を引き出すためには必要な味です。過剰な食塩の摂取を避けるために塩分を減らした減塩醤油や減塩味噌をはじめ、あらゆる調味料や加工品に減塩と書かれたものがあります。2018年の高血圧学会だったか、色々な減塩製品が発表されて『柿の種』の減塩バージョンや魚介の加工品や調味料を試食したことがありました。正直なところ、元々の柿の種の方がおいしいと感じました。でもたくさん食べると水分が欲しくなります。体液量を増やしてしまったのです。心臓に負担をかけているのです。
今や高血圧学会のホームページには133品の減塩食品が掲載されています。
減塩食品を購入する際に注意することは、何に比べて減塩なのかというところを見極める必要があります。
できるだけ、食塩摂取量を減らして、食塩のナトリウムの排泄を促すカリウム(野菜や果物、海藻に含まれます)をしっかり摂取しましょう。(ただし、腎機能が低下していてカリウムの制限をされている方は医師や管理栄養士にご相談ください)
そして、少しでも脳血管疾患病のリスクを減らしましょう。
次回は世の中の流れを見ていると無視できない、今話題の糖質制限について書いてみたいと思っています。
長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。
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