2021/06/07

ゴールデンウィーク明け。コロナウィルス感染者数が増えたという事で、広島でも緊急事態宣言が出されました。

なかなか各地の感染者数がおさまらない中で、規制がかかり、仕事、学校、家庭で、様々な変化や困難が生じているのではないかと思います。
そうした中、昨年から経済社会への様々な負の影響により、所得や雇用、教育機会の減少が起こり、生活困窮による相談が増えていると言われています。

実は日本では、このコロナ禍になる前から、生活困窮者への支援制度として、平成27年4月から、「生活困窮者支援制度」というものが開始されています。この制度は、生活保護に至る前の段階で自立できるように、行政が中心となって支援する制度となっており、現在ではコロナウィルスによる雇用、就業が困難になった方の利用も増加しています。

生活困窮者自立支援制度の内容

困りごとは、まずはお金の問題なのですが、その背後にある要因は、1つに限定されないこともあります。
例えば、

  • 仕事を失った+家賃が払えない
  • ローンが払えない+食費に困る
  • お金がない+学校や病院に行けない

等、幾つかの要素が組み合わさって複合化しているものです。

生活困窮の問題を抱えられている方は、無力感や恥ずかしさ等から誰にも相談できず、一人或いは家族だけで問題を抱え込んでしまい、そのストレスにより精神的な負担を抱えてしまうという悪循環が生じるケースもあります。
「制度が自分に当てはまるのかどうか?」「こんな事相談してもいいのだろうか?」等、迷われた場合も、一人で考え込まず、まずは、窓口に相談されることをお勧めいたします。
相談窓口は、各県や市によって多少異なりますので、県や市のホームページの生活困窮者自立支援制度等のキーワードで検索されるか、地域にある社会福祉協議会に尋ねて見られるのもいいと思います。

窓口に行かれてからの相談の流れのイメージは以下の様になります。

  1. まずは地域の相談窓口へ
    各自治体の窓口に配置されている支援員が応対します。何らかの理由で窓口にお越しいただけない場合はご自宅にも訪問します。
  2. 生活の状況を見つめる
    「あなたの生活の困りごとや不安を支援員にお話しください。生活の状況と課題を分析し「自立」 に向けて寄り添いながら支援を行います。
  3. あなただけの支援プランを
    支援員はあなたの意思を尊重しながら、自立に向けた目標や支援内容を一緒に考え、あなただけの支援プランを一緒に作ります。
  4. 支援決定・サービス提供
    完成した支援プランは関係者を交えたの話し合い(支援調整会議)により正式に決定され、そのプランについて各種サービスが提供されます。
  5. 定期的なモニタリング
    各種サービスの提供がゴールではありません。あなたの状態や支援の提供状況を支援員が定期的に確認し、支援プラン通りにいかない場合は支援プランを再検討します。
  6. 真に安定した生活へ
    あなたの困り事が解決されると支援は終了しますが、安定した生活が維持できているか、一定期間、支援員によるフォローアップがなされます。
(厚生労働省公表資料に基づき作成)

相談に応じた7つの柱

この制度は、自立を支援し、その後の安定した生活継続をサポートする事が特徴です。困った状況が衣食住どんな内容であれ、応急処置だけを施すのではなく、その後の生活を維持できる後押しをする制度です。従って、収入源となる仕事の確保のための支援内容は多様に準備されています。それは、仕事が出来ない理由が、「障害があるから」とか「コロナで不況になったから」、「病気で仕事が出来ない」等、人それぞれ異なるため、就職活動をする上で準備する内容が違うからです。この就職を支援するための詳しい内容については、また後日のコラムでお伝えしたいと思いますが、いずれにしても、この制度は、個人個人の状況を踏まえた上で、その人に合ったサポートを実施する仕組みになっています。

このように個人の悩みに沿った対応をするために、この制度は大きく7つの柱で出来ています。

図2 出典:広島市公式ホームページより

7つの柱とは、①自立相談支援事業②住居確保給付金の支給③就労準備支援事業④就労訓練事業⑤一時生活支援事業⑥家計改善支援事業⑦子供の学習・生活支援事業になります。
どれも堅苦しい事業名で、とっつきにくいですね。また、各市町によって、窓口の名称はこの事業名で設置していないこともあります。(例えば『〇〇区くらしの安心サポート〜』の窓口名等)
前述しましたように、一人で抱え込まない事が重要だと思います。相談するのは勇気が必要かもしれませんが、こういった制度も問題解決の選択肢の一つであるということを知っておいて頂ければと思います。

コラムニスト

理事長  下原 千夏 

広島生まれ、広島育ち、生粋の広島っ子。
公認心理師・精神保健福祉士
家族は夫一人、息子一人、ミニチュアシュナウザー1匹。中学校から大学までの約10年間、テニス部に所属。1994年頃から実父が理事長を務めていた医療法人で、心理士の仕事に携わり、2000年から生活訓練施設(現障害者グループホーム)の施設長。2006年に同医療法人副理事長、2014年に理事長に就任。2018年からは特定非営利活動法人FOOT&WORKの理事長を務める。コメディカルとしての現場経験を活かし、FOOT&WORKでは障がい者スポーツのイベント開催や、「地域でこんなのがあったらいいなー」という思いを存分に込めて、障害を問わず、性別を問わず、年齢を問わず、人種を問わず、皆が理解し、支え合う事が出来る共生社会を目指した活動を実行中。

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