私は、小中高校などでスクールカウンセラーとして勤務もしています。小中高、どの学校種でも「不登校」の相談を数多く受けています。
「不登校」の子どもの中に親御さんと病院を受診して「起立性調節障害」の診断を受けた方が少なからずいます。漢方薬などを処方されるような治療を受けている例が多くありますが即効性はなく通院しなくなるような事例もあります。
「不登校」の取り組みは中心となるのは「学校」であり、「親」であると考えています。そこで今回は、「不登校」を取り上げて概要を解説するとともに「起立性調節障害」との関係を述べたいと思います。
文部科学省の調査による最新のデータとして令和元年度(2019年4月~2020年3月)のものがあります。その結果をまとめると次の1~4となります。
年度 | H26 | H27 | H28 | H29 | H30 | R1 |
---|---|---|---|---|---|---|
不登校(数) | 25,864.0 | 27,583.0 | 30,448.0 | 35,032.0 | 44,841.0 | 53,350.0 |
1000人当たり | 3.9 | 4.2 | 4.7 | 5.4 | 7.0 | 8.3 |
年度 | H26 | H27 | H28 | H29 | H30 | R1 |
---|---|---|---|---|---|---|
不登校(数) | 97,033.0 | 98,408.0 | 103,235.0 | 108,999.0 | 119,687.0 | 127,922.0 |
1000人当たり | 27.6 | 28.3 | 30.1 | 32.5 | 36.5 | 39.4 |
年度 | H26 | H27 | H28 | H29 | H30 | R1 |
---|---|---|---|---|---|---|
不登校(数) | 122,897.0 | 125,991.0 | 133,683.0 | 144,031.0 | 164,528.0 | 181,272.0 |
1000人当たり | 12.1 | 12.6 | 13.5 | 14.7 | 16.9 | 18.8 |
不登校児童生徒のうち、約56%が90日以上欠席していて憂慮すべき状況にあります。
令和元年度(2019年4月~2020年3月)文部科学省の調査には、不登校の要因についての報告もあります。
小中学校の合計で上位5つを挙げてみます。
ちなみに「いじめ」を原因としての不登校は0.3%であり、下位に位置します。
令和元年度(2019年4月~2020年3月)文部科学省の調査には興味深いデータも載っています。 学校内外の機関等で相談・指導を受けた不登校児童生徒は約13万人(70.4%)となっています。内訳は次の通りです。
学校内においては、スクールカウンセラーや不登校児童生徒用の特別な教室、保健室などが考えられます。この数が85,869人です。
学校外としては、一つは教育支援センターでその数21,695人です。もう一つは民間のフリースクールなどが考えられ、その数6,328人です。
複数の機関で相談・支援を受けている例もあるので合計は一致しません。
日本小児心身医学会のホームページによれば、「起立性調節障害(OD)の診断は、次に掲げるODの11症状のうち3つ以上当てはまり、かつ、ODのサブタイプのいずれかに合致することとなっています。」とあります。
起立性調節障害とは、朝に起きられない、立ちくらみ、全身倦怠感、食欲不振、立っていると気分が悪くなるなどの症状があり、それが循環器系等の病気等によるものではない場合に診断されるものと言えます。
起立性調節障害には、「軽症なタイプ」と「中等症以上のタイプ」があります。「軽症なタイプ」は身体疾患として扱ってよいものであり、「中等症以上のタイプ」は心療内科や精神科での治療に加えて学校と相談しながらの保護者の積極的なサポートが必要なものと言えます。
「軽症なタイプ」は例えば以下のような事例が考えられます。
主訴 | 朝起きれない、疲れている、めまいや立ちくらみがある |
---|---|
状況 | Aは成績もよく、友達も多い、家族関係も良好、運動能力も高く、地域のサッカーのクラブチームに所属して熱心に練習していた。 Aは、夏休み中にサッカーの練習に頑張っていた。親は頑張りすぎじゃないかと心配はしていた。夏休みが終わりに近づいた頃、疲労感を訴え始め、食欲がなくなり、立ちくらみやめまいを訴えるようになる。家に帰ればすぐに横になり寝込んでしまう日が何日も続く。そのうち、サッカーのレギュラーからも外されて朝も起きれなくなる。夏休み明けに学校に行けなくなる。 |
ざっとこんな感じだと思います。小児科に連れて行き、血液検査などを受けても異常がないとなり、「起立性調節障害」と診断されることになります。
気分障害や認知の歪みもなければ、炎天下のオーバーワークが原因となって発症したものであり、昇圧剤や漢方薬と休息により改善となるでしょう。学校からの働きかけや教師のサポート、友人からの励ましが有効と思われます。
前掲の「不登校」の要因の第1位は「無気力、不安」です。このケースは一般的に2年、3年と長引くケースであり改善が難しいものとなります。これは、「起立性調節障害」でいうと「中等症以上のタイプ」であり、以前には「心身症型」と言っていたものです。長期にわたる「不登校」であり、憂慮すべき事例となります。
起立性調節障害は怠け癖ではなく,自分の意思ではコントロールすることができない体の病気です。保護者や学校など周囲の人が病気への理解を深め、患者をサポートしていくことが不可欠です。
医療機関での治療としての薬物療法では効果が見込めない場合が多いため、まずは日常生活の改善から取り組みます。例えば、立ち上がるときは頭を下げてゆっくりと起立したり、できるだけ長時間の起立は避けたり、毎日30分程度のウォーキングを行うことで筋力低下を防いだりすることが有効だと考えられています。また、体の中で循環している血液量を増やすために、水分補給は重要です。また夜は元気になったとしても、早めの就寝を心がけることも効果的です。
精神的なストレスが影響している場合、まずはストレスを軽減・コントロールしていくことが大切です。保護者や学校など周囲の人が連携し、患者の日常生活をしっかりとサポートしていかなければいけません。保健室登校や午前中が無理なら、午後から登校するなど、学校と相談して無理のない範囲で登校を促していく必要があります。学校外の施設を利用することも視野に入れます。
軽症なタイプの場合、適切な治療を行うと早ければ2ヵ月程度で改善が見込めます。一方、中等症以上のタイプの場合、通常の日常生活を送れるようになるまで数年かかるといわれています。
保護者の方は悩まれることも多いと思います。一人で悩まずに早めに私たち専門家に相談してください。
私が大学を卒業してすぐに教師となって教壇に立ってから30年が過ぎ、発達障害や特別支援教育について講演をするようになって、10年以上が経ちました。特別支援教育とは、従来知的な遅れや目が不自由な子供たちなどを対象にしてきた障害児教育に加えて、「知的発達に遅れがないものの、学習や行動、社会生活面で困難を抱えている児童生徒」にもきちんと対応していこうと言う教育です。
これは、従来の障害児教育で論議されていた内容をはるかに超えて、発達障害児はもとより発達障害と診断されなくても認知機能に凹凸のある子供の教育についても対象としており、さらに子供だけでなく我々大人も含めたコミュニケーションや感情のコントロールといった、人間が社会で生きていくうえにおいてもっとも重要であり、基礎的な内容を徹底して論議しているからであるととらえています。
そのためには、児童生徒一人ひとりの教育的ニーズを把握して適切な教育的支援を行う必要があります。ここで、単に教育とせず、教育的支援としているのは、障害のある児童生徒については、教育機関が教育を行う際に、教育機関のみならず、福祉、医療、労働などのさまざまな関係機関との連携・協力が必要だからです。また、私への依頼例からもわかるように、現在、小・中学校さらに高等学校において通常の学級に在籍するLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、知的に遅れのない自閉症(高機能自閉症・アスペルガー障害)などの児童生徒に対する指導及び支援は、喫緊の課題となっており、これら児童生徒への支援の方法や指導原理や全ての幼児・児童生徒への指導は、私達大人を含めて全ての人間が学び、関わり合うための基礎といえるコミュニケーション力を考える上で必須の知識であることを色々な場で訴えています。
今までたくさんの子供たちや親、そして同僚の先生方と貴重な出会いをしてきました。また、指導主事として教育行政の立場からもたくさんの校長先生方と学校経営の話をしたり、一般市民の方からのクレームにも対応したりと、色々な視点で学校や社会を見つめてきたつもりです。ここ数年は毎年200回近くの公演を行い、発達障害や特別支援教育について沢山の方々にお話をしてきました。そして、満を持して2014年3月に広島市立特別支援学校を退任し、2014年4月に竹内発達支援コーポレーションを設立致しました。
今後は、講演、教育相談、発達障害者の就労支援、学校・施設・企業へのコンサルテーション、帰国子女支援、発達障害のセミナーなどを行っていく所存です。
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