蚊に効かない虫除けもある?用途に合わせた虫除けの選び方を解説

2021/07/26

虫除けの正しい選び方!蚊に効かない成分もあるので要注意

気温が高い時期がやってくると気になるのが蚊やハエなどの虫。虫除けスプレーやシートを購入する際に「効果はどれが高いの?」「子供に使えるのはどれ?」と気になることもあるでしょう。

虫除けは成分や濃度によって効果や使える年齢が異なります。今回は虫除け成分の効果や特徴、選ぶときの注意点などを見ていきましょう。

1.蚊が人間に寄ってくる理由

蚊の視力は、人間と比べると数百分の1程度しかないと言われています。しかし、視力が悪いとはとても思えないほど素早く人間の存在を察知して近づいてくるものです。

二酸化炭素を感知している

目が悪くても人間を察知できるのは、蚊が二酸化炭素を感知する働きをもっていることが関係しています。人間が呼吸をすることで吐き出される二酸化炭素を感知して集まってくるのです。二酸化炭素濃度がわずか0.01%変わっただけでも変化に気づけるほど高い感知能力をもっています。

体温を感知している

蚊は触覚を使って温度を感知することも可能です。温度が高いほど蚊に見つかりやすくなるため、運動や飲酒後で体温が上がっていると蚊に刺されやすくなります。

ニオイを感知している

汗とともに発せられる乳酸や脂肪酸のニオイを感知する能力があることも特徴です。とくに足の裏のニオイにおびき寄せられることが近頃の研究でわかっています。

2.虫除け成分は主に3種類

二酸化炭素や体温を感知する働きを鈍らせることで、蚊が寄りつかないようにできます。そのために有効なのがディートやイカリジンなどの虫除け成分です。

ディート

ディートは、日本で承認されてから50年以上経っており、虫除け成分のなかでもとくに長い歴史をもっていることで知られています。蚊を媒体して感染が広まっていくマラリアやデング熱から人々を守るために使われ始めた成分です。
二酸化炭素や体温、ニオイを感知する蚊の働きを攪乱させることで人間に寄りつかないようにします。蚊はもちろん、ノミやマダニ、ヤマビルなどさまざまな吸血害虫から守ることが可能です。

イカリジン

イカリジンは、虫除け成分のなかでも比較的新しい成分として知られています。日本では2015年に承認され、承認後は「新しい虫除け成分」としてドラッグストアでも多くの製品が扱われるようになりました。
イカリジンもディートと同じく、二酸化炭素や体温、ニオイなどを感知する蚊の働きを攪乱させることで虫除け効果を発揮するものです。特徴は、ディートのような虫除け独特のニオイがないことでしょう。

ミントやユーカリなどの天然ハーブ

ミントやユーカリは、虫が嫌いな香りとして知られています。そのため、これらをスプレーすることで虫が人間に寄ってこないようにできるのです。ディートやイカリジンのように強力な虫除け効果はありませんが、薬剤を使っていないため小さな子供にも使いやすいことが特徴でしょう。

3.虫除けの選び方

「昔から使われている成分が安心?」「それとも新しい成分のほうがいい?」と、どの虫除けを選んだらいいのか迷ってしまいますよね。虫除けは成分によって効果がある虫の種類や使える年齢などが違うため、用途に合わせて選ぶことが大切です。

効果の持続時間で選ぶ

3種類の虫除け成分のうち、ディートは濃度の違う製品がいくつか販売されています。濃度によって虫除け効果の持続時間が変わるため、外出先や外にいる時間、塗り直しできるかどうかなどシーンに合わせて適した濃度のものを選びましょう。

ディートの濃度と持続時間
ディート10%以下約3時間
ディート30%約8時間

ディートが30%のものは持続時間が長いため、塗り直しの頻度が少なく済むメリットがあります。しかし使えるのは12歳以上から。生後6か月から12歳未満の子供に使う場合は、ディートが10%以下のものを選びましょう。

肌質によっては濃度が高いディートだと肌荒れを起こしてしまう方もいます。持続時間が長いからといって無闇に濃度が高いものを選ぶのではなく、外出する時間に合わせて選ぶのが無難でしょう。

1日に使用できる回数で選ぶ

ディートは年齢によって1日に使用できる回数が決まっています。

12歳以上使用回数に制限なし
2歳以上~12歳未満1日1~3回まで
生後6か月以上~2歳未満1日1回まで
生後6か月未満使用不可

年齢によっては使用回数の制限があるため、長時間にわたって外出するときには向いていないことがあるでしょう。

たとえば2歳の子供にはディートの成分が10%以下のものしか使えません。10%以下だと効果の持続時間が3時間ほどしかありませんが、使えるのは1日に1回までです。そのため、3時間以上出かける予定があるときはディートだと不十分な可能性があります。

一方でイカリジンや天然ハーブは1日の使用回数に制限がありません。長時間外にいる場合は、ディート以外の成分を選んだほうが便利なこともあります。

効果がある虫の種類で選ぶ

実はディートとイカリジンでは、効果を発揮する虫の種類が違うのをご存知でしょうか。

ディートが効果を発揮する虫
  • ブヨ
  • アブ
  • マダニ
  • イエダニ
  • ノミ
  • トコジラミ
  • ヤマビル
  • サシバエ
イカリジンが効果を発揮する虫
  • ブヨ
  • アブ
  • マダニ
  • イエダニ
  • トコジラミ
  • ヤマビル

イカリジンはニオイがなく使いやすいのですが、ノミやサシバエには効果がありません。サシバエは竹やぶや森林、馬小屋や牛舎などに存在する昆虫です。刺されると強い痛みやかゆみがおこります。より多くの虫から守りたいのであれば、イカリジンよりもディートを選ぶのがおすすめです。

ミントやユーカリを使ったものはあらゆる虫に効果があると言われていますが、具体的にどの虫に効果があるのかまでは公表されていません。

ニオイの有無で選ぶ

昔からある虫除けはほとんどの製品でディートが使われています。虫除けといえば独特のニオイがあるイメージをもっている方も多いでしょう。あの虫除けのニオイは、実はディートによるものなのです。
一方で、新しく承認されたイカリジンには独特のニオイがありません。「虫除けのニオイが苦手」「できるだけニオイがしないものを選びたい」という方はイカリジンを使った虫除けを選んでみてください。

なお、ミントやユーカリを使ったものは虫除け独特のニオイはしませんが、成分そのものがもつ香りがあります。人によっては香りが強くて使いづらいと感じることもあるようなので注意しましょう。

形状で選ぶ

虫除け製品には、スプレーやシートジェルタイプなどさまざまな形状のものがあります。できるだけ手を汚さずに塗布したいのならスプレータイプのものが便利です。
持ち運びの利便性が高く、虫除け成分を吸い込まないものがよいのならシートタイプのものが便利でしょう。お肌に満遍なく塗布でき、かつ周りに薬剤が飛び散らないものがよいのならジェルタイプを選んでみてください。

4.子供にも使える虫除けの選び方

子供に使うものとなると、自分に使うのとは違い気をつかう方もいるのではないでしょうか。使われている成分や濃度を確認することで、虫除けは小さな子供からでも使えます。

虫除け成分の濃度を確認

濃度によって使える年齢が異なるため、使用者の年齢に合わせて選ぶことが大切です。

〈虫除け成分の濃度と使用可能な年齢〉
ディート10%以下生後6か月から使用可能
ディート30%12歳以上から使用可能
イカリジン年齢制限なし
ミントやユーカリ年齢制限なし

年齢を気にせず使えるものを探しているのであれば、とくに制限がないイカリジンや天然ハーブを使ったものを選ぶとよいでしょう。

天然ハーブが主成分のものを選ぶ

ミントやユーカリは虫除け成分のなかでも安全性が高いと考えられます。またこれらの天然ハーブを使った虫除けは、お肌ではなく衣服に吹きかけて使うものです。
直接吹きかけることなく使えるので、お肌への負担が心配な方でも使いやすいでしょう。

5.【注意】吊り下げタイプの虫除けは蚊に効果なし

玄関やベビーカーなどに吊り下げて使える虫除け製品は、お肌に成分が直接触れないため子供を蚊から守るために使っている方も多いものです。しかし、吊り下げタイプの虫除けに使われているピレスロイド系の薬剤が効果を発揮するのはユスリカのみ。

ユスリカは見た目こそ蚊と似ているものの、人間を刺すことはありません。つまり吊り下げタイプの虫除けを使っても蚊に刺されるのを防ぐことはできないのです。人間を刺す蚊から守りたいのであれば、ディートやイカリジンなどが使われている虫除け製品を選びましょう。

6.まとめ

虫除けは、使われている成分によって使用可能な年齢や効果を発揮する虫の種類が異なります。より多くの昆虫から守りたいのならディート、ニオイがなく年齢を気にせず使えるものならイカリジン、お肌への負担を優先したいのならミントやユーカリなどが主成分のものを選んでみてください。

成分の特徴のほかに、スプレーやシートなど使うシーンに合わせて選ぶのもよいでしょう。誰が使うのか、どこで使うのか、どれくらいの時間出かけるのかなどに合わせて合う虫除け製品を選ぶことが大切です。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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