とにかく忙しくて大変な、母親としての毎日。出産後は、ホルモンのバランスが崩れたり、慣れない生活に疲れてしまうことがあります。
そして、いつの間にか心が不安定になって、自分だけでなく大切だったはずの人たちを傷つけてしまうなんてことになりかねません。
今回の記事は、1人でも多くのママたちを救うために「簡単な産後うつのチェック」と「産後うつの原因と対策」をご紹介します。
産後うつとは、妊娠中から出産後1ヶ月以内のお母さんなら、誰でも罹患する可能性があるうつ病の一種です。
厚生労働省「周産期医療体制のあり方に関する検討会」によると、100人中10〜15人の割合で罹患し、激しい気分の落ち込み・著しい自己評価の低下などの症状が現れ、酷くなると身体的にも影響が出てきます。
産後うつは立派な病気であり、一度症状が固定すると自然には治りにくい病気です。
一般的なうつ病で起こる脳の状態と変わらず、短期間で重症化するケースも少なくありません。
何年も続く恐れがあるため、少しでも「産後うつかも?」と感じたら、迷わずにかかりつけの医師に相談しましょう。
マタニティーブルーは、出産したことによる疲れや、ホルモンの急激な変化よって一時的に気分が落ち込む「うつ病」ではなく「抑うつ状態」です。
また、産後だけでなく妊娠中にも起きることがあり、多くのお母さんが経験するとされています。
マタニティブルーは不可逆な病気ではないため、自然治癒が難しい産後うつとは違い、体力の回復や時間の経過とともに自然と治ることが殆どです。これが産後うつに移行するのは約5%と言われています。マタニティブルーと産後うつをわける目安の期間として「2週間ほどで治るか」を基準に考えるといいでしょう。
本格的に始まった子育ての疲れなどが原因で起きた場合を「育児うつ」または「育児ノイローゼ」と呼ばれます。
原因としては「初めての子育てによるプレッシャー」「ワンオペ育児」「自分の時間が作れない」などがあげられます。
育児うつもマタニティブルーのような一時的な症状ではありません。産後うつと同様に少しでも「育児うつかも?」と感じたら、すぐに医療機関に受診しましょう。
産後うつが出た場合、以下のような症状が見られます。
人によって症状は微妙に異なります。
いずれにしても産後うつの場合、重症化するまでの期間が割と短いため、無理や遠慮をせずにかかりつけの医師に相談してください。
産後うつかを簡単に自分でチェックする方法があります。
セルフチェックは質問形式で行われ、各項目の点数を総合して産後うつかを判断します。
選択肢は、過去7日間で感じた最も近い答えを選択してください。
※() 内は点数。
※著作権は、英国王立精神科医学会(Royal College of Psychiatrists)に帰属する ”
日本では、合計した点数が9点以上だと産後うつの疑いありと判断します(感度75%, 特異度93%)。9点未満であっても、今後の状況によっては重症化する恐れもあるため、少しでも不安に感じるならかかりつけや専門の機関に相談しましょう。
産後うつになる理由は人によって異なります。こちらでは産後うつの原因となる代表的な例をご紹介します。
母乳が出ないことに責任を感じて、産後うつを引き起こす可能性があります。
「赤ちゃんは母乳で育てなければいけない」という先入観が、精神的に追い詰める要因です。
母乳が出ずに自分を責めた結果、お母さんが体調を崩すかもしれません。よって、肝心の子育て自体が困難となってしまいます。
医学的には母乳は必須・不可欠なものではありません。「世界的に母乳推進です!」と言う意見には、全世界的に、母乳メイン=ミルクが社会的経済的に確保できない、といった状況が考慮されていない現況がありそうです。
ミルクだけで元気に育った赤ちゃんのほうが多いことを認識し、母乳が出なくても自分を責めないようにしましょう。
赤ちゃんが寝てくれない原因で、寝不足になり疲れ果て、産後うつになるケースもあります。
睡眠は人間の3大欲求の1つです。
満たされなければ身体的な疲労だけでなく、精神的な負荷にもつながります。
また「赤ちゃんが寝てくれない理由を把握できない」と自他ともに責めると、間接的なストレスになり、産後うつの要因になりえます。
赤ちゃんの体内時計は成人の24時間にはなっていず、睡眠パターンは家族とは敢えて違うものと考えましょう。これは、つわりのときの食生活と同じですね。
子育てをする環境が整っていないのも、産後うつになる原因です。
環境が整っていない状態とは以下です。
人間の子育ては、脳の仕組みの関係で他の生物と比べてかなり複雑です。
1人で完璧に子育てをこなそうと思わずに、周囲の人や機関の力を借りましょう。
思い切って公共機関に相談してみて下さい。
最適な環境は人によって異なりますが、多くの場合は周囲のサポートがあれば解決に向かうかもしれません。
子育てに関する世間のプレッシャーは、お母さんには大きなストレスです。
「周りに迷惑をかけてはいけない」「子育ては母親の仕事」「弱音を吐いてはいけない」と強く思い込んでしまい、誰にも相談できないストレスが産後うつを引き起こします。
また、赤ちゃんの泣き声が「近住民にも迷惑をかけている」と考え込んでしまい病んでしまうケースもあります。
誰にも迷惑をかけないように心がけるのは素晴らしい考え方です。しかし、人は支え合わなければ生きていけません。
子育てだけが例外とは思わず、誰かに相談することも時には必要なんだと割り切ることです。子育ての大変さは、世のお母さん全てが理解してくれるでしょう。1人で抱えずに打ち明けてください。
真面目な性格だと、理想のお母さん像をイメージします。ただし、想像通りにことが進まず、理想と現実のギャップに自信を失って、産後うつになるケースがあります。
また、学生時代から常に成績を競い合うような環境にいた人は、無意識に他人と比較するかもしれません。子育てには点数は付きません。子育てに関してSNSなどを見る場合は、見比べて落胆しないようように注意が必要です。
真面目さゆえに、悩みや不満が生じても「大丈夫」と周囲へ気遣い。そして、誰にも相談できないまま、1人で抱え込み、病んでしまうことも少なくありません。
子育て、特に初めての子育ての場合は、誰にとっても難しいものです。
うまくいかないことがあっても、恥ずかしいことだと思わずに誰かに相談しましょう。
日本人は我慢することや、人に頼らないことを美学としています。ただし、産後うつにならないためにも、子育ては1人で背負いすぎないようにしましょう。
特に出産を終えた後の体は、ホルモンバランスの変化や体力の消耗により疲れが溜まりやすい状態です。そのため、お母さんの体へかかる負担は極力減らした方がいいかもしれません。
家族やパートナーが協力できることはたくさんあります。
例えば以下なら、父親でもできます。
お母さんへの負担が減れば、心にゆとりができて、子育て全体がうまくいきます。
もし、周りの助けが借りれない場合は、支援センターなど施設の利用も視野に入れてみてください。
365日24時間働き続けるサラリーマンがいないように、お母さんにも適度な休暇が必要です。
ときには母親としての役割を忘れさせてあげることで、体力だけでなく精神的な負担も軽減できます。
「赤ちゃんを放っておくなんてできない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、お母さんが元気に過ごせないと、子育てもうまくはいきません。
母親でいることも大切ですが、息抜きも重要です。
預けられる人がいるなら、家族やパートナーに相談して、母子ともに健康でいられる方法を試しましょう。
子育てにおいては、自分の悩みや不満に共感しあい、ストレスの吐き出せる場所を作ることも大切です。
人には群居欲という「人と群れたい」欲求が存在し、群居欲が満たされなければ、精神的に病んでしまうことがあります。
そのため、家族とは別の「ママ友」や「趣味仲間」などのコミュニティを作り、ストレスを発散しなくてはなりません。
また、子育てに関する情報を共有することで、1人では思いつかなかった時短方法や、困った時に役立つ知識などが手に入るかもしれません。
居場所を作ることで、交友関係が広げながらストレスを発散でき、有益な情報も得られます。
理想が高くて、自分を精神的に追い込んでしまう傾向のある人は、良い部分に着目するクセをつけましょう。
「なぜうまくいかないのか?」と考えるのではなく「初めての子育てにしては上出来」と考えるなど。
SNSで、子育てママがキラキラして見える理由は、良い部分ばかりをピックアップしているためです。
人は赤ちゃんが生まれたからといって、急に母親として一人前になるわけではありません。最初は誰もが苦労するもの。うまくいかないことがあっても「初めてなんだから当然」と、自信を失わずにポジティブに自分を褒めてあげてください。
もし、他の対策もうまくいかず産後うつの疑いが出てきたら、早急な専門機関の利用をオススメします。
産後うつは、通常のうつ病と変わらない立派な病気です。
産後うつは、一度症状が出てしまうと自然には治らず、短期間で重症化する恐れもあります。処方された薬を飲む、カウンセリングを受けるなどの専門的な処置が必要です。
行くべき機関は以下です。
また、産後うつなどの精神的な症状は、本人が自覚していないケースもあります。
周りの家族や友人・パートナーが様子を見てあげて「普段と違う」と感じたら、受診をすすめてください。
その場しのぎで対処をしても生活全体の改善を試みなければ、同じことの繰り返しとなるため、本人だけでなく周囲の人たちとの連携も重要です。
お母さんの周囲の方に理解していただきたいのは、1人で子育てをするのは非常に大変という事実です。
赤ちゃんも1人の人間。ただ可愛いだけの存在ではなく、食事やオムツの替え、入浴もします。
加えて、「うつは甘え」などとは思わずに、誰の身にも起こってもおかしくないと認識してあげましょう。
そして、自分の家族はもちろん、身近に新生児を抱えるお母さんがいたら、気を配ってあげてください。
ほんの少しの思いやりが、1つの家族を守ることにつながります。
産後うつを防ぐためにも、お母さんの身近な存在であるパートナーは、心に誰よりも寄り添ってあげてください。
オムツを変えたり、お風呂に入れたりなど、手助けをしなければいつまで経ってもできるようになりません。
そして、子育てを手伝ってあげることも、もちろん重要ですが、抱えている悩み・不安を親身に聞いてあげることも大切です。
「子育ては両親と家族全体の仕事です!」心身ともに疲れている状態で、愛するパートナーから「子育ては母親の仕事」と言われたら、お母さんは余計に1人で悩みや不安を抱え込んでしまいます。
取り返しのつかない状態になる前に「子どもは任せて出かけておいで」と言ってあげられるくらいお母さんを安心させてあげましょう。
生まれてくる赤ちゃんにも、お母さんにもさまざまな気質が備わっていて、夜泣きをしない子もいれば、少し手を離しただけで泣いてしまう子もいます。
そのため、100%正しい子育ては存在しません。
何が正しいかわからない中、お母さんは赤ちゃんを少しでも元気に育てるため、苦労しています。
周りの人たちは、お母さんが頑張りすぎて無理をしていないかをしっかり見てあげてください。産後うつは、早期に適切な処置を施せば、長引かずに済みます。
みなさんこんにちは、ひらた女性クリニック院長の平田英司です。
長崎大学医学部を卒業し広島大学産科婦人科学教室に入局して以来、25年以上にわたり総合病院勤務医として婦人科腫瘍、産科、女性医学、不妊と産婦人科の四つの診療分野につき幅広く研鑽を積んで来ました。婦人科は広島県の代表的な婦人科腫瘍専門医として手術執刀を含め診療の中心的役割を担い、産科はNICU 設置病院に主に勤務し総合的周産期医療に従事してきました。
しかし、こと外来診療に関しては、仕方がないことですが、総合病院の外来はどこも効率優先から待ち時間が長く診療時間が短くなりがちで、病気や問題の本質にせまり難く、これがストレスになっていました。
患者さんも医師も納得する診療、とにかくていねいな診療、これを実現するべく自分のクリニックを開院させて頂く運びとなりました。一見軽微に思える症状でも、また症状がなくとも抱えた問題について気軽に相談でき、かつ専門的診療まで実施可能で、さらに広島市内県内のみならず全国の高次医療機関への紹介が可能な「究極のかかりつけ医」を目指します。
「どうせうまく治らない」「どうせわかってくれない」「女性医師でないからわからない」と思いつつでもいいから、気軽に受診して下さい。必ずや、あなたの問題を一緒に解決し、快方に向かわせられると思います。
産後には、心身共にさまざまな不調の現れることがあります。育児や家事に追われて疲労が蓄積し、睡眠不足もあって充分に休息できない方がほとんどでしょう。
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