2022/02/09

呼吸運動とは、どのような運動でしょうか。正しい呼吸を一緒に学んでみませんか。

「深呼吸をしてみましょう」と言われたら、鼻と口どちらで呼吸をされていますか。多くの方が「鼻」呼吸だと思いますが、近年のマスク生活で口呼吸の習慣がついている方も少なくないようです。

「鼻呼吸」は、なぜ良いのでしょうか。

口呼吸よりも鼻呼吸の方が良い、と聞かれたことがある方もいると思いますが、なぜ鼻呼吸が良いのでしょうか。
鼻呼吸のメリットとしては、①免疫力を高めてくれる②肺への血流量が増える③姿勢が良くなるということが挙げられます。

  1. 鼻の粘膜層と毛は空気中のほこりや細菌、花粉などの異物をブロックしてくれるので、肺へきれいな空気を送ることができます。そのため、鼻呼吸をすることで免疫力を高めることになります。
  2. 鼻の粘膜層からはたくさんの一酸化窒素が分泌されています。一酸化窒素は肺の血管を拡げてくれるので、酸素を取り込みやすくなり血流も良くなります。
  3. ゆっくりと時間をかけて鼻から吸いこむことで横隔膜などの胸郭を広げる筋肉の活動が増えます。呼吸運動を行う筋肉がしっかり働くことで背中を伸ばしやすくなり、その結果姿勢がよくなります。さらに鼻からゆっくりと吐き出すことで酸素と二酸化炭素の交換もしっかり行えます。

「横隔膜呼吸」でラクに動ける体づくりをしましょう。

1日の呼吸数は約2万回といわれています。

その呼吸活動の約7割近くを担っているのは“横隔膜”です。吸った空気が肺に入ることで胸が膨らむと思われがちですが、実は違うのです。横隔膜を下げて肺を拡げることで空気を吸い込む、これが空気を吸ったときに起きていることです。しかし、無意識で呼吸を行っているときには横隔膜は動きません。意識して強制的に息を吐こうとしたときに動きます。正しい呼吸をするには、意識して横隔膜を十分に動かせるかが重要になります。

日本人の約9割は胸郭がズレている?!

呼吸について25年以上研究されている文京学院大学の柿崎藤泰教授によると、現時点では原因不明ですが、約9割の方は利き手や内臓位置に関係なく胸郭の中心が左にずれており、左側の肋骨まわりが固くなり、右側が緩んでいるため肋骨が斜めになっていることがわかっています。そのため左右対称的な姿勢を目指すよりも鼻呼吸による横隔膜呼吸を習得して、ラクに動ける体づくりをしましょう。

横隔膜はどこに位置するのでしょうか。

横隔膜は肋骨の下位6本、胸骨の下部(剣状突起の後面)、第1~3腰椎に付着しており、ドームの屋根のような形をしています。
この横隔膜が位置する胸部は胸郭といいます。

胸郭は12個の胸椎、12対の肋骨、1個の胸骨から構成されています。横隔膜がきちんと動くには胸郭の動きも大切です。

腹横筋と骨盤底筋の活動も欠かせません。

正しい呼吸をする、呼吸を深くするには横隔膜の動きを高めることが重要となるのですが、横隔膜がきちんと動くには、腹横筋や骨盤底筋の活動も欠かせません。

腹横筋は体表面からは見えません。

腹横筋は、腹直筋や外腹斜筋・内腹斜筋よりも深部にある腹筋です。体の表面からは分からないため、意識しにくいですが腹圧を高めるためには最も重要な筋肉です。この筋肉が衰えると内臓が下垂するため、ぽっこりお腹になりやすくなります。

骨盤底筋は縁の下の力持ち。

骨盤底筋とは、膀胱や子宮、直腸など骨盤内の内臓を下から支えており、尿道や膣、肛門を取り巻いている筋肉のことです。骨盤底筋のまわりには細かな血管である毛細血管がたくさんあり、冷えて血流が悪くなると硬くなります。その結果、便秘や冷え性、尿もれが起こりやすくなります。腰痛や肩こり、便秘や冷え性、尿もれがある方はこの骨盤底筋の衰えがあるかもしれません。

横隔膜呼吸は骨盤底筋も意識して動かします。

先ほど、横隔膜を下げて肺を拡げることで空気を吸い込むと言いましたが、骨盤底筋も下げることで伸ばされるのでストレッチされます。

横隔膜・腹横筋・骨盤底筋を強化すると自ずと呼吸は深くなります。体表面から見えないところで横隔膜・腹横筋・骨盤底筋はつながっています。正しい呼吸を行うためには鼻呼吸をすると同時に、胸郭の構造や呼吸に関わる筋肉をイメージしながら行うことが大切です。

次回は、正しい呼吸を身につけるための自宅で出来るトレーニングを紹介いたします。

コラムニスト

理学療法士  上野 恵理 

私は、小・中・高校時代はサッカー部に所属していました。
高校時代は、平日は練習をして週末は試合や遠征へ行く、というスケジュールでサッカー漬けの生活だったため、怪我をすることも多くその都度病院にお世話になっていました。そのときに日々のケアや怪我をしない体づくりが大切であることを知り、人間の身体に興味を持つようになりました。
身体に不調があると人生楽しくありません。
年齢を重ねるとどこかに不調が出てくるものですが、それでも「どうすれば心豊かに楽しく過ごすことができるようになるの?」をモットーとして個々人にあった運動方法が提供できるよう努めています。

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