私たちの体重を支えて歩行や走行の土台になっている足。小さな体でがんばってくれています。非常に大切な働きをしている割に多少の変形は気にされないなど、ないがしろにされがちです。
裸足で駆け回ることの少なくなった現代の子供たちに密かに増加している足の異変。それが外反扁平足(がいはんへんぺいそく)です。
大切なお子さんが後々で足の症状に悩まされないよう、早めの対策を始めませんか?ここでは外反扁平足のチェック方法や対策について解説していきます。
外反扁平足とは足にある土踏まずの高さが少なく、足が内側に出っ張るため足の外側が浮くようになっている状態のことをいいます。足は地面に対してアーチ構造を作ることで体重を支える強度を保っているのですが、筋力の弱さや生まれつきの性質が原因でアーチが低くなり外反扁平足となります。
子どもは小さいうちはみな扁平足です。成長するに従って足の筋力が強くなり、アーチが形成されることで徐々に扁平足ではなくなっていきます。ただし生まれつき靱帯の弛緩性(体がやわらかい)があるお子さんや、ダウン症や発達障害など基礎疾患があると外反扁平足になりやすいのです。また、裸足で過ごす機会や外遊びが減少している今、足の筋力低下が原因となる外反扁平足が増加していると考えられます。
外反扁平足では伝い歩きを始める頃に歩く様子がぎこちない、転びやすいといった症状に周囲が気付き、本人は夜間にふくらはぎや足が痛いなどの症状を感じます。足以外に膝やすねなどの症状がでることも多く、扁平足とは直接関係なさそうに見えるため気付くのに遅れることがあります。子どもの成長に影響する疾患であるため、早い段階でチェックして対策を講じたいものです。
子どもに起こる外反扁平足は、ほとんどが「柔らかい扁平足(flexible flatfoot)」と呼ばれるもので、体重をかけていない時は正常な形をしている一方、足をついて立つと変形が出現します。そのため、お子さんが外反扁平足かどうかをチェックするには、立った状態で観察するのが大切です。
外反扁平足のお子さんは立った状態で土踏まずを観察すると、地面にほぼくっつきそうになっています。変形が強い子では土踏まずがなく地面に完全に着くとともに、足が内側に少し出っ張るようになっています。足を後ろから観察すると、通常足の指は外側の1,2本しか見えないはずなのですが、外反扁平足のお子さんではつま先が外に向いているため3-4本見えることがあります。また、同じく後ろから見た時に外反扁平足では両足のかかとの骨が下に向かってハの字型に広がっているように見えます。
まとめると、立った時に
以上の項目に一つでも当てはまる場合は、外反扁平足である可能性が高いと言えるでしょう。
足をいい形にするためには、足の中にある細かい筋肉を鍛える必要があります。足の筋肉を動かすには、次のような運動療法があります1)。
小さなお子さんでは正しく運動を行うのは難しい場合も多く、保護者の見守りが必要です。もし単純な動きに飽きてしまう場合には、例えばタオルをビー玉に変えて数を数えるなど、ゲーム性をもたせるのも効果的です。
お子さんの扁平足は成長と共に改善することが多いため、基本的には様子を見ても良い状態です。ただし変形が強く歩行が難しい場合は、歩行能力の獲得が遅れる原因となる可能性があるため、早めの受診が望ましいと考えられます。
また、体重をかけてもかけなくても扁平足の変形がある場合を「かたい扁平足(rigid flatfoot)」と呼び、先天的な骨の異常が原因となっていることがあります。「先天性垂直距骨」や「足根骨癒合症」などと呼ばれるこれらの異常は、時に手術が必要となることもあるため、早めの受診が必要です。
外反扁平足のために病院を受診すると、まずこれまでの成長発達に異常がなかったか、基礎疾患がないかといった問診が行われます。また足以外の関節に異常がないかどうかなど、直接みてもらいたいこと以外の診察が行われるかもしれません。これは、外反扁平足が全身的な疾患の一症状である可能性がありそのためのチェックなので、気を悪くせず診察を受けるようにしてください。
座位だけでなく立位や歩行時の足の形や動きを診察し、必要と判断されれば検査が行われます。外反扁平足に対する検査として基本になるのはX線検査です。足の骨全体の形やバランスをチェックして外反扁平足の原因を探ります。先天的な骨の異常が発見される場合もあります。小さなお子さんでは骨が未成熟なためX線では確認できないことも多く、その場合超音波検査を併用することがあります。
外反扁平足による変形や症状が強い場合は、変形を矯正する装具をつけることで症状の改善を図ります。装具にはアーチサポートと呼ばれる土踏まずを支えるようなパッドや、かかとの骨の位置を矯正するような靴である、整形外科靴などがあります。これらの装具は歩行や痛みなどの症状改善に効果的なことが多いものの、骨格を矯正する強い効果があるわけではありません。子どもが装具を着用することに強い抵抗感がある場合や、経済的負担が大きいと判断される場合には装具治療を行わないこともあります。
ダウン症などの基礎疾患が原因である場合は、成長に伴う自然矯正は期待できません。変形や症状が強く運動療法や装具治療を行っても改善が得られない場合や、先天的な変形・骨癒合により症状が強い場合にはそれを矯正する手術が行われることがあります。
お子さんの足に起こる問題の一つ、外反扁平足について紹介しました。お子さんは自分の体に起きていることに気づかないことも多く、気づいても言葉で説明するのが難しいことがあります。ぜひこの記事で紹介した項目を、皆さんのお子さんでもチェックしてみてください。
もし当てはまる項目があっても、慌てる必要はありません。お子さんの外反扁平足は、基本的には成長と共に良くなるものです。心配な場合や変形が強い場合には、信頼できる整形外科医師に相談してみてください。
患者さんやご家族が病状や治療について十分に理解し、医療職と協力しながら本人にとって最善の治療を選択していくこの時代。
医師も積極的に正しい情報発信をするべきと考え、医療ライターとして活動しています。
「よく分からないけど、お医者さんの言うことだから聞いておけば安心。」
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記事を参考にして、主治医とよく相談し後悔のない治療を受けてほしいと願っています。
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