2022/04/25

薬ではないからといって、何も気にせずサプリメントを飲んでいませんか?実はサプリメントによっては、薬と併用することで相互作用を起こすものがあります。

薬が効きにくくなったり、逆に効き目が強くなって副作用が起こったりすることもあるので注意しなければなりません。

では、具体的にどのようなサプリメントと薬で併用に注意が必要なのでしょうか。今回は、注意すべきサプリメントや実際に起こった有害事象などを解説します。

薬とサプリメントの違い

そもそも、薬とサプリメントは何が違うのかご存知ですか?サプリメントのなかには、あたかも関節痛や腰痛、不妊症やバストアップなどに効果がありそうなものも存在しますよね。

薬とは

薬は病気を治したり症状を抑えたりするものです。薬機法では、日本薬局方に収載されており疾病の診断や治療、予防に使うもの、体の機能に影響を与えるものとされています。

サプリメントとは

サプリメントは、基本的に普段の生活でたりない栄養素を補うものです。薬のように病気の治療や予防には使えません。扱いとしては食品とほとんど変わらないため、薬と間違われるような記載をしないことがルールです。

薬との併用に注意が必要なサプリメント

サプリメントは大きなくくりだと食品と同じだといえます。しかし、種類によっては薬の効果を弱くしたり強くしたりする可能性があるため、注意が必要です。ここでは、薬との併用に注意が必要な成分を8つ見ていきましょう。

セントジョーンズワート

セントジョーンズワートは、セイヨウオトギリソウとも呼ばれるハーブの一種です。気持ちを落ちつけるために飲むことが多いでしょう。薬と相互作用を起こしやすいものとしてよく知られています。

  • 抗てんかん薬(フェニトイン製剤、カルバマゼピンなど)
  • 気管支拡張薬(テオフィリン、アミノフィリン)
  • 抗不整脈薬(アミオダロン、キニジンなど)
  • 血液凝固防止薬(ワルファリン)
  • 抗真菌薬(ボリコナゾール)

併用することでこれらの薬の血中濃度が低くなり、効き目が悪くなることがあります。急にセントジョーンズワートの使用を止めると、逆に血中濃度が高くなりすぎることもあるので注意しなければなりません。

このほか、解熱鎮痛薬のピロキシカムや抗生物質のテトラサイクリンと併用すると光線過敏症が起こりやすくなることも特徴です。

セサミン

セサミンはゴマに含まれている物質のことで、若々しい体を維持したい方から人気を集めています。エイジングケアとして飲まれる方が多いものですが、血圧を下げる薬(ヒドロクロロチアジドやフロセミドなど)と併用すると薬の効果が強くなりやすいことでも知られているものです。効果が強く出ることでふらつきやめまいが起こる可能性があります。

葉酸

葉酸はビタミンの一種で、貧血予防や赤ちゃんの健康のために飲まれている方が多いサプリメントです。抗てんかん薬のフェニトイン製剤と併用すると、薬の血中濃度が下がり十分な効果が得られなくなる可能性があります。

亜鉛

亜鉛は皮膚を健康に保ったり、味覚を維持したりするのに必要な栄養素です。骨粗鬆症の治療薬であるビスホスホネート製剤やテトラサイクリン系の抗生物質などと併用すると、薬の効果が弱くなることがあります。

青汁・クロレラ・スピルリナ

青汁やクロレラ、スピルリナは栄養補給を目的として摂取している方が多いサプリメントです。血液をサラサラにするワルファリンと併用すると、ワルファリンの効き目が弱くなることが知られています。これは、サプリメントに含まれているビタミンKの影響によるものです。

コエンザイムQ10

抗酸化作用があることで知られるコエンザイムQ10は、美容のために飲まれている方が多いサプリメントです。コエンザイムQ10には、ビタミンKと似たような働きがあるため、ワルファリンの働きを弱くさせる可能性があります。

また、血圧を下げる薬と併用することで、薬の効きが強くなり副作用が強く出やすくなることもあるため注意が必要です。

ビタミンC

美容のためにビタミンCを日頃から摂取している方も多いのではないでしょうか。ビタミンCは、女性ホルモン(エチニルエストラジオール)と併用することで、薬の働きが高まることがわかっています。血液をさらさらにするワルファリンの働きを弱めてしまうことも明らかです。

ビタミンB6

ビタミンB6は美容や疲労軽減のために使用されることが多いでしょう。抗てんかん薬(フェニトイン)と併用することで薬の働きが弱まることが知られています。

薬とサプリメントの併用で起きた実際の有害事象

上で紹介したように、サプリメントは私たちが思っている以上に薬の効果へ影響をもたらすものです。併用による影響は、とくに実感できないくらい軽微なものから、命に関わる重大なものまで多岐にわたります。

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所が薬とサプリメントとの併用で起きた有害事象をまとめたデータによると、有害事象が起きた71名の患者のうち、10%ではとくに症状が見られませんでした。しかし残りの90%ではなんらかの症状が見られ、中には5名の死亡例も報告されているのです。

死亡には至らなくとも、薬とサプリメントの併用により次のような症例が報告されています。

  • てんかん発作のコントロール不良
  • 肝障害
  • 低カリウム血症
  • 薬剤性肝障害
  • 消化管出血
  • 低血糖
  • 精神症状の悪化

また、薬と併用していないにもかかわらず、サプリメント単体の使用でも劇症肝炎や高カルシウム血症、アナフィラキシーなどが起こっているのも事実です。健康のためにと飲んでいるサプリメントでかえって体を壊してしまっては意味がありません。

飲み合わせが不安でも薬の服用を勝手にやめるのはNG

サプリメントを併用することで健康被害をこうむる可能性があるとわかると、「危険だから薬を飲むのをやめよう」と思ってしまうかもしれません。しかし、自己判断で薬の服用をやめるのは避けてください。急に服用を中止することで治療効果が出なくなるだけでなく、ときには思わぬ害をもたらすことがあります。

サプリメントを使用しているかどうかにかかわらず、薬の服用で不安なことがあったら自己判断で中止せずに担当医や薬剤師に一度相談してください。

サプリメントと併用できる薬か調べる方法

「いつも飲んでいるサプリメントがあるんだけど…」
「これって、薬と併用して大丈夫?」

ここまでの話を読んで、不安に思われている方もいるかと思います。とはいえ、自分で併用して大丈夫かどうかを調べるのは難しいですよね。そのようなときは、薬剤師に聞いたりお薬手帳を活用したりしてみましょう

薬剤師に聞く

処方箋を受け取った場合、ほとんどの方が薬局に持っていくかと思います。薬局に処方箋を出すときや、調剤された薬を受け取るときに「このサプリメントを飲んでいるんですけど、併用しても大丈夫ですか?」と一言聞いてみましょう。

薬剤師がその場で調べてくれるので、安心して使用できます。今飲んでいるサプリメントだけでなく、これから使う予定のサプリメントについても気軽に相談してください。

お薬手帳を活用する

「なんとなく薬剤師には聞きづらい」「聞こうと思っていても忘れてしまう」という方は、お薬手帳に飲んでいるサプリメントの名前を書いておきましょう。お薬手帳は薬局でもらう薬だけでなく、サプリメントや市販薬などを自分で自由に書いてよいものです。

飲んでいるものを書いておくことで、薬剤師にお薬手帳を渡したらこちらから頼まなくても併用して大丈夫か判断してくれます。

まとめ

サプリメントは食品と同じ扱いではありますが、組み合わせによっては薬との相性が悪いものがあります。セントジョーンズワートや青汁、クロレラなどは相互作用が起こりやすいサプリメントの代表例です。重篤な副作用が起きたりときには死亡につながることもあるため、サプリメントを日頃から飲んでいる方は薬との併用に気をつけましょう。

薬剤師に聞いたりお薬手帳を活用したりすることで併用しても大丈夫かを調べてもらえます。もちろん、ドラッグストアにいる薬剤師でも構いません。かかりつけの薬局に電話で問い合わせしてみるのもOKです。たかがサプリメントと思わず、併用に注意が必要なものもあることを認識して使っていきましょう。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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