「禁煙パッチとガムはどちらがおすすめ?」「禁煙外来に行く前にまずは市販薬でチャレンジしてみたい」
街中の喫煙場所が取り壊されたりタバコの値段が上がったり、子どもが生まれたりと禁煙を意識し始めるタイミングは人それぞれです。
しかし、実際に禁煙をしようとしても「これが最後の1本…」となかなかやめられない方が多いのではないでしょうか。今回は、市販の禁煙補助薬に興味がある方に向けて、選び方や違い、注意点などについて解説します。
少し古いデータですが、ファイザーが2008年から2009年にかけて行った調査によると、禁煙を試みた方のうち約70%の方が失敗しています。半数以上の方が禁煙を始めて1週間以内に再び喫煙してしまっているのです。
これだけの方が禁煙に失敗しているのを見ると、決して「意志の弱さ」だけが失敗の原因ではないように思えます。
禁煙が難しいのは、たばこに含まれているニコチンの影響によるものです。ニコチンにはヘロインやコカインなどの麻薬よりも高い依存性があります。
依存症になると、快楽に関わるドーパミンや、気分の調整を行うセロトニンなどの神経伝達物質がニコチンを摂取しなければあまり分泌されないようになってしまうのです。そのため、禁煙により血液中にあるニコチンの濃度が下がると、イライラやストレスを感じるようになってしまいます。
いわゆるニコチン切れの状態になり、離脱症状に耐えられずたばこをやめられない方がとても多いのです。
ニコチンに関係なく、喫煙する行動そのものが習慣化してやめられない方も多く見られます。ご飯を食べた後に一服、朝起きてから一服と喫煙が日常生活に溶け込んでしまっている方では、ものたりなさや口さびしさを感じて習慣的に吸ってしまうのです。
禁煙補助薬は、効率的にニコチン置換療法を行うためのアイテムです。たばこではなくパッチやガムからニコチンを補充することで、禁煙時に感じる吸いたい気持ちやイライラをやわらげます。
1日に1回貼るだけで、禁煙時のイライラや集中力の低下などを抑えることが可能です。約2か月かけて段階的にニコチンの量を減らしていけるため、計画的に禁煙を進められます。
ニコチンが含まれたガムを噛むことで、一時的にニコチンを補充するものです。1日に噛むガムの量を徐々に減らしていき、最終的に0個にすることで禁煙に導きます。
ニコチンガムもパッチも、うまく使うことで禁煙をしっかりサポートしてくれる心強い味方です。どちらを使っても効果に大差はないため、続けやすいものを選びましょう。
1回貼れば1日ずっと効果が持続するため、ガムと比べるとニコチンパッチのほうが手軽さは上です。ガムをずっと噛んでいられない環境で生活している方でも問題なく治療を継続できます。
また、若干ではありますが、ガムよりもパッチのほうが禁煙成功率が高いことも特徴です。約2か月にわたる禁煙プログラムに従って使っていくため、計画的に禁煙を進められます。
口寂しさが気になってたばこを吸いたくなる方は、ニコチンガムがおすすめです。たばこを吸わないでも大丈夫だなと感じたら自分のペースで噛む個数を減らしていけます。ガムの個数を1日あたり0~1個にまで減らせたら使用をやめましょう。
市販の禁煙補助薬には、現時点で3つの種類があります。値段や味、使いやすさなどを見て続けやすいものを選んでみてください。
マンゴー、スペアミント、ミントの3種類のフレーバーがあります。味が3種類あるので、そのときの気分によって使い分けるのもよいでしょう。
分類 | 指定第2類医薬品 |
---|---|
ニコチンの含有量 | 1粒あたり2mg |
服用方法 | 1回につき1個のガムを30~60分かけて噛んでください。通常は1日4~12個から始め、徐々に個数を減らしていきます。1日に使用できる最大個数は24個です。3か月を目安に使用します。 |
通常版、クールミント、アイスミント、フルーティミントの4種類の味があります。通常版はほかの味と比べて甘みがないことが特徴です。使い方はニコチネルガムと変りません。1粒あたりに含まれるニコチン量も同じですので、好みで選ぶとよいでしょう。
分類 | 指定第2類医薬品 |
---|---|
ニコチンの含有量 | 1粒あたり2mg |
服用方法 | 1回につき1個のガムを30~60分かけて噛んでください。通常は1日4~12個から始め、徐々に個数を減らしていきます。1日に使用できる最大個数は24個です。3か月を目安に使用します。 |
ニコチネルパッチは第1類医薬品のため、薬剤師の説明を受けないと購入できません。購入するのにやや手間がかかりますが、禁煙成功率はガムよりわずかに高いため、成功率を高めたい方はパッチがおすすめです。
分類 | 第1類医薬品 |
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ニコチンの含有量 | ニコチネルパッチ20:1枚あたり35mg ニコチネルパッチ10:1枚あたり17.5mg |
服用方法 | 最初の6週間はニコチネルパッチ20を使用します。その後2週間はニコチネルパッチ10を使用してください。合計8週間(2か月)で禁煙成功に導きます。 |
禁煙補助薬を使うにあたり、いくつか注意点があります。思わぬ副作用が出ることもあるため、必ず確認してから使用してください。
禁煙補助薬を使っているときに喫煙はできません。喫煙によりニコチンの過剰摂取につながり、動悸や吐き気などの副作用が出ることがあります。
狭心症や不整脈がある方は、禁煙補助薬が使えない場合があります。不安定狭心症や重症の不整脈がある方は症状が悪化する恐れがあるため使用できません。使っても問題ないかわからない方は、医師に相談してください。
1日に24個を超えてガムを噛んだり、パッチを一度に2枚貼ったりなど誤った使い方は絶対にしないようにしてください。ニコチンの過剰摂取により副作用のリスクが高まります。
市販の禁煙補助薬を使っても、禁煙がうまくいかなかったという方は、禁煙外来の受診も検討してみてください。
病院に通うという手間はあるものの、禁煙外来で処方されるチャンピックスという薬はニコチンガムの1.38~2.13倍、ニコチンパッチの1.22~1.87倍も禁煙成功率が高いことで知られています。
また、禁煙外来に通った方の禁煙成功率は70~80%ともいわれているため、より確実な禁煙が可能です。
次に挙げる4つの項目を満たす方は、保険適用で治療を受けられます。
なお、禁煙外来に通っている途中で再喫煙した場合、その後1年間は保険適用が認められていないので注意してください。
では、最後に禁煙に関してよく聞かれる質問にお答えします。
禁煙外来で使われるチャンピックスは、市販の禁煙補助薬よりも高い成功率が確認されています。ただし、吐き気や不眠症などの副作用が起こることもあるため、人によっては合わないことがあるでしょう。
大きな差はありません。ただし、パッチのほうがやや成功率が高いといわれています。
用法用量を超えての使用は絶対に避けてください。吐き気や嘔吐、動悸などの副作用が出る恐れがあります。
禁煙外来があればそちらを受診しましょう。近くにない場合は内科や循環器科、心療内科などでも治療を受けられます。
禁煙に使える市販薬には、パッチとガムの2種類があります。どちらも効果に大差はありませんが、パッチのほうがやや成功率が高いことが特徴です。禁煙補助薬を使うことでストレスを抑えながら禁煙を進められますので、ついつい「最後の1本」を何度も吸ってしまう方は、うまく活用してみてください。
禁煙外来に通うと、市販薬を使うときよりさらに成功率を高められます。医療用のパッチは市販よりもニコチン量が多いことから喫煙本数が多い方は市販のパッチでは十分な効果を感じられない可能性もあるでしょう。より確実に禁煙を成功させたい方は、禁煙外来の受診も検討してみてください。
薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。
「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」
こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。
市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。
そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。
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