皮膚にぶつぶつを認めないのに全身の強いかゆみを感じることはないでしょうか?
湿疹や赤みなどの皮膚病変がないにもかかわらずかゆみを感じる状態を皮膚掻痒症といいます1)皮膚掻痒症は、高齢者に多い皮膚の乾燥をともなうもののほか、腎不全や肝硬変などの内臓の病気、白血病などの血液の病気など、さまざまな病気(基礎疾患といいます)に伴ってみられることがあります。
日本における皮膚科を受診した患者さんのうち皮膚掻痒症と診断された患者さんは6.8%であったと報告されています。様々な病態が皮膚掻痒症の背景に伴うことがわかっていて、妊婦さんでは1.6-4.6%、HIV感染者では13%、慢性C型肝炎の21.3%、腎不全患者の10-77%に皮膚掻痒症が認められたという報告2),3)があります。
皮膚掻痒症の患者さんは一般的に処方されるかゆみ止めの内服薬(抗ヒスタミン薬)の効果が得られにくいことが分かっています。その原因として、ヒスタミン以外の痒みを起こす物質が関与していると考えられています4)。また、かゆみを引き起こす原因も大きく3種類に分けられます。
それは
です。これらの病態ではさまざまな痒みを誘発する因子が関与していると考えられています。
①~③の内容を詳しく見ていきましょう。
皮膚の乾燥は、加齢に伴う性の皮膚の乾燥、アトピー性皮膚炎、胆汁うっ滞による肝硬変、腎不全、血液透析、糖尿病などでみられることがあります。
薬剤性の皮膚掻痒症は見逃されがちですが、ある種の睡眠導入剤や痛み止め、降圧薬や抗不整脈薬などの心血管作動薬のうちの一部、利尿薬、抗生剤、経口避妊薬などのホルモン薬などが原因となることがあるとされています。
基礎疾患に伴うものでは腎不全、血液透析、肝臓・胆道系の病気(胆管炎、閉塞性胆管炎、肝硬変、慢性肝炎など)、甲状腺の病気や糖尿病によるもの、血液の病気(多血症、鉄欠乏性貧血、悪性リンパ腫など)、また悪性腫瘍では悪性リンパ腫、白血病、内臓の悪性腫瘍、脳腫瘍、その他精神疾患では神経症や寄生虫妄想などが原因となります5)。
まずはご自身がこれまでにかかったことのある病気を見直してみること、そして何かの病気にかかっていないかを丁寧に調べてもらうこと、また原因となる内服薬を摂取していないか確認してもらうことが望まれます。そのためには主治医の先生に各種血液検査やレントゲン、CT検査などを含めた全身検査をおねがいしてみること、またはがん検診を受けてみることなどをお勧めします。薬剤が原因でないかどうかを調べるには、皮膚科やアレルギー専門医を受診するのがよいでしょう。
まずは気づかないうちに糖尿病やがんなどなにかの病気にかかっていないか、基礎疾患の有無を丁寧に調べること、そして何らかのがんや病気が見つかった場合にはその病気をコントロールすることが大切です。
次に丁寧なスキンケアが重要といえます。ですから汗や汚れは速やかに適切におとすこと、ナイロンタオルでごしごしと体をこすって洗ったり、痒みを感じるほどの熱いお湯の使用を避けること、石鹸・シャンプーに洗浄力の強いものを選ぶのを避けること、かたいごわごわしたようなタオルで体を強くこすって拭くことなどは避けることです。
ドライスキンがあればまず保湿薬を適切に塗布することが重要になりますが、皮膚乾燥がない場合にはかならずしも必要ではありません。抗ヒスタミン薬の内服はある程度の効果が期待できます。湿疹があればステロイドを塗ることは効果があるかもしれませんが、湿疹がなければ十分な効果は期待できません。
その他、かゆみを抑える効果のあるぬりぐすりや皮ふ科治療で用いられる紫外線を当てることなどは治療としての有効性が示されています1)。
全身の痒みが続くことは生活の質をとても落としますので、適切に専門医を受診し原因をよく調べてもらい対策を取ることが望ましいでしょう。
みなさま、はじめまして。
このたび2023年4月、広島市中区紙屋町に「紙屋町やなせ皮ふ科クリニック」を開業いたしました。
私は広島大学病院や広島総合病院で皮膚科の基礎を研修後、東京虎の門病院に国内留学する機会を頂き、診断学やレーザー、皮膚外科の研鑽を積みました。広島大学病院ではたくさんの重症なやけどや皮膚がん患者の皆様の手術・治療を最前線で行う一方で、大学院では悪性黒色腫など皮膚がんの新規診断法の研究にも従事しました。尾道総合病院、安佐市民病院では地域基幹病院の部長としておよそ10年間勤務し、お子さんからご高齢のかたまで診察し、皮膚のかゆみからアトピー性皮膚炎、乾癬、じんましん、膠原病にいたるまで、特に治療が難しい患者の皆さまを対象に最前線で治療に取り組んで参り、また皮膚がんや皮膚の良性腫瘍をはじめとした手術も数多く執刀いたしました。
開業後は、以下のことをお約束したいと思います。
①常に高い専門性をもち正しい検査と診断のもと、わかりやすいご説明をいたします。
②医師、スタッフともに患者の皆さまに寄り添ったあたたかい診療を心がけます。
③肌の若返りや脱毛、シミ取りなどの美容診療もご希望に応じて対応します。
④さまざまな皮膚のできものの手術にも対応します。
皮膚の治療を通じて、患者の皆さまを明るく元気にしたいと考えています。よろしくお願いいたします!
専門分野
皮膚外科、皮膚悪性腫瘍、乾癬、アトピー性皮膚炎、レーザー治療
トコジラミはナンキン虫と呼ばれ、かつては第二次世界大戦前までは日本において珍しいものではなく、現在は発がん物質として使用が禁止されたDDTが戦後に殺虫剤として散...続きを読む
ほくろはごくありふれた色素性の皮膚病変で、大小さまざまの、もりあがったものから扁平なもの、黒いものからあかっぽいもの、生まれつきあるものから生後に生じるものまでいろいろなものがあります。
その病態や分類などは意外に奥が深く、ほくろのがんであるメラノーマの発生についてなどまだまだ未解決な点が残されています。 〝ほくろ〟って病気なんですか・・・?正...続きを読む
にきびは青春のシンボルとされていますが、痛くて赤いにきびができたら気分がさえない、、、そんなことありますよね。
皮ふ科でのにきびの治療は一昔前と比べてずっと進歩しています。 しっかりと正しく治療し、すべすべお肌を取り戻しましょう!! にきびってなんですか? に...続きを読む
皮膚は表皮、真皮、皮下脂肪組織の3層から構成されます。表皮は数層の角質細胞からなるおおよそ厚み0.1~0.2mmの薄い組織で、表層から、角質層、顆粒層、有棘細胞...続きを読む