2022/11/30

『骨粗しょう症』って聞いたことがありますか?骨折をして初めて骨粗しょう症と気が付いたのでは手遅れですよ!

ヒトは200個を超える骨で体を支えています。骨は体の支持と内臓の保護、運動の支点、カルシウムの貯蔵、血球の産生という大事な働きがあります。

骨の強度は骨量によって決まり、成長期に増加した後20歳ころ最大骨量に達し、その後も古い骨を破骨細胞が壊し、壊れた部分を骨芽細胞が新しい骨を作り、ヒトは死ぬまでこれを繰り返しています。

骨粗しょう症は加齢とともに増えてくる疾患です。骨量が平均最大骨量の70%以下に減少したものを骨粗しょう症と言います。これは骨が弱くなり、骨折の危険性が高まっている状態で、高齢化のすすむ日本では、およそ1300万人の骨粗しょう症患者がいると言われています。女性は閉経によるエストロゲン(女性ホルモン)欠乏、加齢、栄養不足など、さまざまな要因で骨量が低下します。

しかし、生活習慣病と異なり一般の健康診断で指摘されることはありません。私は健診時に2年に一度オプションで骨密度検査を受けています。ご自身の骨密度をご存じない方は、ぜひ一度受けてください。

骨粗しょう症が進んでいても骨折をしなければ痛くもなんともないので、多くの方が骨折をして初めて骨粗しょう症の診断をされることになります。ですから実際に骨粗しょう症と診断されて治療を受けている人は1300万人中200万人位ととても少ないと報告されています。

寝たきりになる原因の一位が大腿骨骨折と言われています。日本人は海外の人に比べて錐体(背骨)骨折のリスクが高いようで、2~4cmくらい身長が低くなっている場合、いつの間にか骨がつぶれている可能性があります。中でも最近の研究で糖尿病に罹患していると、骨量が少なくない場合でも、骨の脆弱性が問題となることが分かってきましたので、注意が必要です。

ではどうすれば骨粗しょう症を予防できるのでしょうか?

2年ほど前、高齢者に不足する栄養素の一番多いのが『ビタミンD』と盛んに言われていたことがありました。ビタミンⅮが不足すると、骨のカルシウムが減って骨粗しょう症を発症します。私の学生時代、イギリスはいつも傘を持って歩くほど晴れの日が少ないので『くる病』が多いと聞いたことがありました。今は知りませんが、何となく納得していました。ビタミンⅮ補給のためには手のひらを太陽にかざすだけでも大丈夫なようです。

健康な骨は『破骨細胞』が骨を破壊する作用(吸収)と、『骨芽細胞』が骨を作る作用(形成)のバランスが保たれています。

骨の質は、骨の材料(カルシウムやコラーゲンなど)の質と、その材料を基に作られた微細な構造によって決まります。閉経後の女性では『エストロゲン』の分泌が低下することで、骨の破壊の割合が高まり、骨の密度が下がります。そうすると微細構造の維持が難しくなり、構造が壊れていきます。また、加齢や生活習慣病で、体内の成分が酸化されて生じる『酸化ストレス』も、骨の破壊の割合を高めたり、骨の材料の質を悪くすることが分かっています。

骨粗しょう症を予防するためには、骨の形成が高まる成長期にカルシウムをしっかり摂取し、成人になってからも骨に関わる栄養素(カルシウム、たんぱく質、ビタミンⅮ)をバランスよく摂取することが大切です。

カルシウムは1日に700~800mg摂取する必要があります。牛乳・乳製品、小魚、大豆製品、ナッツ類、海藻などに多く含まれています。牛乳・乳製品は他の食品に比べて吸収率が良いので、毎日1回は摂るようにしましょう。

カルシウムを多く含む食品

食 品カルシウム量mg食 品カルシウム量mg
牛乳 200ml220スライスチーズ 1枚113
木綿豆腐 100g120納豆 1パック41
しらす干し 大さじ221乾燥桜エビ 大さじ2120
小松菜 50g85乾燥ひじき 大さじ284

カルシウムは一度にたくさん摂るよりも、数回に分けて摂る方が吸収率が良くなります。また、タンパク質は骨の材料の一部(コラーゲンなど)となるほか、骨の形成を促進する働きがあるため、標準体重1キログラムあたり、1.0g(高齢者は1.2g)摂ることが望ましいとされています。卵1個で6~7g、豚肉100gで20g程度摂ることができます。

毎食しっかり肉・魚・卵・大豆、大豆製品のいずれかを食べるようにしましょう。また、緑黄色野菜や納豆に含まれているビタミンKは骨吸収を抑える働きがあります。

何をどれくらい食べると良いか、毎日考えながら食事をするのは大変です。時には忙しくて、簡単に済ませたい日もあるでしょう。それでも私たちはいろいろな食品を食べなければ、過不足が起きてしまいます。数日単位で食生活を修復をするように気を配ってみましょう。

「健康に良い○○を!」とメディアの言葉には注目してしまうのに、日々の食事をおろそかにしてしまうのは何故でしょうか?

栄養相談の場面でも、おどろくほど詳しく最近の流行の食品や、食べ方について話してくださる方がいらっしゃいます。「まあ、そうなんですか!次回いらっしゃるまでに詳しく調べておきますね」(と答えることもしばしばあります。)

調べようと思えばいくらでも調べることのできる時代です。

『健康に良い○○』という魔法のような食品に期待するのではなく、日々いろいろな食品をまんべんなく食べて、健康を維持しましょう!

次回は気温が下がり、血圧が上がっている人が気になります。冬場の高血圧予防の食生活について書いてみます。

コラムニスト

管理栄養士  伊藤 教子 

長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。

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