薬には、必ず使用期限があります。服用しようと思った薬の期限が切れていたり、うっかり期限切れの薬を飲んでしまったりした経験はありませんか?
賞味期限や消費期限とは違い、期限が切れたからといって薬が腐ることはありません。
しかし、「期限切れの市販薬って使っても大丈夫なの?」「使用期限が切れた市販薬にはどのようなリスクがあるの?」と気になっている方も多いでしょう。そこで今回は、使用期限切れの市販薬はそもそも使っても大丈夫なのか、期限切れの薬にはどのようなリスクがあるのかなどについて解説します。
食べ物に必ず賞味期限や消費期限があるように、薬にも使用期限があります。いつまでも使える薬というのは存在しません。
市販薬の使用期限とは、薬を安全に使える期限のことです。市販薬のパッケージを見ると、ほとんどの商品に使用期限が印字されています。使用期限は3~5年であることが一般的ですが、なかには1年ほどしかもたないものもあるので注意しましょう。
ちなみに使用期限とは、未開封の状態で保存した場合の期限です。開封したら「なるべく早めに使い切る」が原則となります。
まれに、使用期限が印字されていない市販薬もあります。とくに記載がない場合は、製造後から3年が目安です。実は、使用期限の印字は義務化されていません。
多くの市販薬は使用期限が印字されていますが、もし見当たらない場合は製造日から計算して使用してください。なお、製造日もわからない場合は、メーカーに製造番号を伝えることで製造日と使用期限を教えてもらえる場合があります。
賞味期限や消費期限が切れた食品を食べるとお腹を壊すことがあるように、使用期限が切れた市販薬を使用することにもリスクがあります。
薬は時間が経つにつれて、有効成分が分解されていきます。分解されると用法用量通りに服用しても、本来の効果を発揮されません。たとえば、10mgの有効成分を服用しているつもりなのに、実は半分の5mgしか服用できていなかったということが起こり得るのです。
使用期限は、用法用量を守って服用した場合に薬効がきちんと期待できると保証されている期限でもあります。そのため、使用期限切れの薬を服用すると、本来の効果が発揮されないことも十分にあるでしょう。
薬が効かないだけならまだいいのですが、使用期限切れの市販薬を服用すると健康被害が出ることがあります。時間の経過とともに、有効成分が変化して違う物質になっていることがあるのです。変化後にできた物質が体に悪さをする可能性がゼロではありません。
市販薬ではありませんが、抗生物質の一種であるテトラサイクリン系の薬は、使用期限が切れると成分が変性する可能性があることがわかっています。変性したテトラサイクリン系の抗生物質を服用すると、ファンコニ症候群といって近位尿細管の働きに障害が出ることがあるので要注意です。
市販薬でもこのようなことが起こる可能性が十分にあるので、使用期限が切れたものは絶対に服用しないようにしてください。
使用期限内であっても、誤った方法で保管をしていると市販薬の有効成分に影響が出ることがあります。市販薬を保管する場合は、次に紹介する3点を意識しましょう。
薬は、光や温度、湿度にとても弱い成分です。日光が当たる場所、温度や湿度が高い場所で保管しておくと変性したり有効成分が分解されたりします。直射日光を避け、パッケージに記載の温度で保管しましょう。参考までに、室温は1~30℃、常温は15~25℃、冷所は1~15℃です。
車内は、薬と相性がとても悪い場所です。直射日光が当たり、夏であれば50℃を超えるほどにまで熱くなることもあります。購入した市販薬をうっかり車内に置き忘れてしまうことがあるかもしれませんが、何日も置きっぱなしにしないようにしてください。もちろん、持ち帰るために一時的に車内に置いておくのは問題ありません。
「薬は冷蔵庫で保管しないといけない」と思っていませんか?たしかに冷蔵保存が必要な薬もありますが、市販薬の場合はほとんどが室温での保存となっています。よく目薬を冷蔵庫に保管される方がいますが、必ずしも冷蔵保存が必要なわけではありません。パッケージを見て、「冷所保存」とあるものは冷蔵庫に、とくに記載がなければ室内でOKです。
市販薬に記載されている使用期限は、あくまでも未開封で保存した場合の期限です。開封した場合は、錠剤や粉薬、シロップ剤は半年、目薬なら1~2か月を目安に使用しましょう。
目薬は一度使うと雑菌が繁殖しやすいため、ほかの薬よりも開封後の使用期限が短めになっています。商品によっては10日や1か月程度で使い切るようにと注意書きがされている目薬もあるので、市販の目薬を使う場合はパッケージをよく読むようにしてください。
明らかに「これは服用しないほうがいい」と判断できる場合は、使用期限内の市販薬でも使用は控えてください。とくに次の3つに該当する場合は、使用することで健康被害が出たり薬が効かなかったりする可能性があります。
変色している場合は、薬の有効成分が何かしらの反応を起こしている証拠です。有効成分が分解されていたりほかの物質に変わっていたりする可能性があるので、服用はしないようにしてください。
分離している薬も使用は控えましょう。薬の濃度が一定ではなくなり、使用しても本来の効果を発揮できない可能性があります。変性している可能性もあるので、分離しているものは使用しないでください。混ぜて使うのも避けましょう。混ざったように見えても有効成分の濃度が一定でない可能性があります。
もし、使用期限内であってもいつ開封したかわからない市販薬があった場合は、服用せずに破棄するのが無難です。どうしても捨てるのがもったいないと感じる場合は、メーカーに電話で問い合わせてみるとよいでしょう。いつごろ購入したのか、使用期限はいつなのかなどを伝えると、まだ服用しても大丈夫かアドバイスをもらえます。
使用期限が書いてある箱を捨ててしまったり、印字がはげて読めなくなったりしていることもあるでしょう。もともと使用期限の印字がされていない場合もあります。そのようなときは、どこかに製造番号が記載されていないかを確認してみてください。メーカーに電話して製造番号を伝えることで、使用期限を調べてもらえる場合があります。
では、最後に市販薬の使用期限に関してよく聞かれる質問にお答えします。
使用期限が過ぎているものは服用しないでください。有効成分の分解が進んでいることがあるため、多めに飲もうとされる方がいますが、これはやってはいけないことです。どれくらい飲んだら本来の量を服用できるのかは成分を分析しないとわかりません。期限が切れたら飲まないのが一番です。
見た目でわかる変化が起きていなくても、使用期限が過ぎた市販薬は服用しないでください。有効成分の分解や変性が起きていても、通常と変わらない見た目のままである可能性もあります。健康被害を避けるためにも、使用期限切れの市販薬は破棄しましょう。
目薬の使用期限は開封後1~2か月程度です。1~2か月経ったものは使用期限を過ぎていなくても破棄してください。なお、防腐剤が入っていないタイプの目薬は開封後10日から1か月ほどしか使用できないものもあります。
使用期限切れの市販薬を服用すると、有効成分が分解されていて十分に効果が出なかったり、成分の変性によって健康被害が出たりする恐れがあります。見た目に変化がなかったとしても、使用期限切れのものは服用しないでください。
「腐っているわけではないし…」「捨てるのももったいないし…」と思うかもしれませんが、ご自身の健康を守るためにも使用期限切れの市販薬を使用するのは避けましょう。
薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。
「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」
こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。
市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。
そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。
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