日本人は、常に1,000万人以上もの方が爪水虫に悩まされているといわれています。約10人に1人は爪水虫があるのです。
珍しい病気ではないこともあり、次のような悩みを抱えている方が多いのではないでしょうか。
皮膚科に行くことなく市販薬で治せたら嬉しいですよね。今回は、爪水虫が市販薬で治るのか、どうすれば予防できるのかなどについて解説します。
結論から言うと、爪水虫を市販薬で治すことはできません。「水虫の薬ならたくさん販売されているじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、通常の水虫は治せても爪水虫には効かないのです。
爪水虫の治療は、一般的に塗り薬よりも飲み薬の使用が優先されます。ここで、日本皮膚科学会が出している「日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン 2019」の記載を見てみましょう。
Clinical question | 推奨度 |
---|---|
爪白癬にエフィナコナゾール爪外用液は有用か | B |
爪白癬にルリコナゾール爪外用液は有用か | B |
爪白癬にテルビナフィンの内服は有用か | A |
爪白癬にイトラコナゾールの内服は有用か | A |
爪白癬にホスラブコナゾールの内服は有用か | A |
爪白癬とは、爪水虫のことです。外用液はすべて推奨度B(行うよう勧める)、飲み薬はすべて推奨度A(行うよう強く勧める)となっていることがわかります。しかし、そもそも市販では爪水虫に有効な飲み薬が販売されていません。あるのは外用液のみです。
ところが、外用液の添付文書を見てみると、「爪水虫」という言葉はどこにも書かれていないのです。ブテナロックVαの添付文書を例に見てみると、効能効果には「みずむし、いんきんたむし、ぜにたむし」の3つしかありません。
市販薬には爪水虫用の飲み薬がないこと、爪水虫に効能効果をもつ外用液がないことから市販での治療はできないのです。
残念ながら市販薬で爪水虫の治療はできませんが、「爪のきわ」にできている水虫なら治療できます。爪のきわ用の水虫薬として販売されているのが、ロート製薬の「メンソレータム エクシブ Wきわケアジェル」です。
爪周りはでこぼこしており、通常の外用液ではなかなか薬効成分が届きません。「メンソレータム エクシブ Wきわケアジェル」なら爪のきわでもしっかりとジェル状の成分が浸透します。爪水虫には効きませんが、爪まわりの水虫にお困りの方の役に立つことでしょう。
爪水虫になった場合は、市販薬では対処できないので皮膚科を受診しましょう。皮膚科では、飲み薬と塗り薬の2種類がおもに処方されています。軽いものであれば塗り薬のみでも治りますが、症状が進んでいたり塗り薬では治らなかったりする場合は飲み薬を使うことが多いでしょう。また、肝臓の機能が落ちている方では飲み薬の使用が適さないこともあります。
爪水虫の飲み薬としては、主に次の3種類の薬が使用されています。
いずれも「日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン 2019」では推奨度Aに分類されている薬です。テルビナフィンは副作用で重篤な肝障害が起こることが報告されているため、肝臓の機能が落ちている方には向きません。イトラコナゾールやホスラブコナゾールも同様に肝機能障害が起こることがあります。
そのため、基本的に爪水虫の飲み薬を使用できるのは、肝機能に問題がない方のみです。とはいえ、飲み薬の効果はしっかりと実証されているため、とくに問題がないようでしたら塗り薬ではなく飲み薬を使うことが多いでしょう。
塗り薬でよく使われているのは、次の2つです。
エフィナコナゾールはクレナフィン爪外用液、ルリコナゾールはルコナック爪外用液という商品名で知られています。どちらも爪水虫の原因となる白癬菌の増殖を防ぐことで症状を改善していく薬です。
局所の乾燥や刺激感が出ることがありますが、とくに大きな副作用は報告されていません。肝臓の機能を気にすることなく使えることがメリットですが、飲み薬と比べて治癒率が低いというデメリットがあります。
「足に水ぶくれができる」「強いかゆみが生じる」「皮膚がガサガサになる」など、水虫の症状はなんとなくご存知の方が多いかと思います。足に水虫がある方は約5人に1人と非常に多いため、とくに珍しいものではありません。
「水虫になることは恥ずかしい」と思う方が多く、あまり公にされることはありませんが、実は多くの方が水虫に悩まされているのです。
水虫は白癬菌(はくせんきん)という真菌によって起こります。白癬菌はケラチンというタンパク質を餌に生きている菌です。ケラチンがある場所ならどこでも繁殖します。
水虫といえば足にできるイメージが強いかもしれませんが、ケラチンは爪や手、髪の毛にも存在するため、実はこれらの場所にも感染するのです。爪水虫は高齢者ほど感染している方が多く、約40%の方が罹患しているといわれています。
水虫になると、次のような症状が出ることがあります。
かゆみ以外にも、水ぶくれや皮がめくれるなどさまざまな症状が見られます。まれに、ヒビやアカギレなどが見られることもありますが、頻度としてはそこまで多くありません。ただし、ヒビやアカギレの場合は水虫だと本人が気づかず過ごしていることもあり、症状が長引くことがあります。
水虫は驚くほど簡単にうつります。足に水虫がいる方と一緒に過ごしていると、マットやスリッパを介して白癬菌がうつってしまうことが多いでしょう。水虫が足にできやすいのは、白癬菌が高温多湿の環境を好むためです。白癬菌が皮膚に侵入して感染するまでは、わずか24時間ほどしかかかりません。あっという間にうつってしまうのです。
爪水虫は、見た目が白くなり分厚くなるものの、かゆみや痛みなどの症状はほとんどありません。そのため、治療をせず放置している方も見られます。
治療をおろそかにしがちな爪水虫ですが、放置は厳禁です。症状が進むと、爪が変形して皮膚に食い込んだり歩きにくくなったりすることがあります。高齢者では転倒リスクも向上するため、できるだけ早めに治療を始めるようにしましょう。
爪水虫は24時間ほどかけて皮膚に感染します。つまり、一日に1回しっかりと手足を洗えば感染は成立しないのです。とくに家族に水虫の方がいる場合は、うつらないように隅々まできれいに洗いましょう。なお、ゴシゴシ洗うと皮膚に傷がついてかえって感染しやすくなるので、優しく洗うようにしてください。
白癬菌は湿度の高い場所を好みます。足を洗ったらよく拭き取り、靴下を履いている時間を短くしましょう。通気性のよい靴を履くのも効果的です。できるだけ湿度が上がらないように工夫してください。
白癬菌は、感染者の皮膚がボロボロ落ちることで周りに広がっていきます。バスマットやスリッパなどを介して感染することが多いので、共用しないようにすることが大切です。
爪水虫になっていることに気がついたら、早めに皮膚科を受診してください。放っておいても治ることはほとんどありません。また、市販薬での治療もできないため、治すためには必ず皮膚科の受診が必要です。爪がボロボロになると歩きづらくなり転倒リスクが上がってしまいます。たかが爪水虫と思わずに、早めに治療しましょう。
では、最後に爪水虫に関する質問にお答えします。
爪水虫は市販薬では治せません。治ったように見えることもあるかもしれませんが、奥にひそんでいる白癬菌まで殺菌することは難しいでしょう。必ず皮膚科を受診して適切な治療を受けるようにしてください。
爪水虫も通常の水虫と同様に周りにうつることがあります。バスマットやスリッパの共用は避け、早めに治療して感染リスクを減らしましょう。
二枚爪になる原因はいろいろとあります。爪水虫の可能性もありますが、鉄欠乏性貧血や甲状腺機能亢進症でもなるため、気になる方は受診して原因を調べてもらいましょう。
オロナインで爪水虫を治すことはできません。市販薬では治療できないので、早めに皮膚科を受診してください。
市販薬で爪水虫を治療することはできません。爪水虫の治療は飲み薬がメインで使われていますが、市販では扱いがないのです。また、塗り薬も爪水虫には効果がありません。きちんとした治療を始めても完治には時間がかかりますので、気がついた時点で早めに皮膚科を受診するようにしてください。
薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。
「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」
こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。
市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。
そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。
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