急に赤ちゃんがグズグズ・寝ない…「メンタルリープ」が理由かも?

2023/04/07

いま赤ちゃんを育てているママ・パパの中に、「いつもはニコニコしていてわりとよく寝るのに、ここ数日やけに機嫌が悪い」「ミルクを飲んでも、おむつを換えてもグズグズ……どこか具合が悪いのでは?」と気になっている人はいませんか?

赤ちゃんの体調が良く他に原因が見当たらないのにやけにグズグズがひどい理由として、最近よく聞くのが「メンタルリープ」という現象です。

赤ちゃんがやけにグズグズする理由

いつもは比較的きげんよく遊び寝付きも良い赤ちゃんが、ここ数日やけにグズグズしてすぐに抱っこをせがむ、お昼寝もすぐに目が覚めて泣く……。

これにはいくつか理由が考えられます。

ひとつはどこか体調が悪い場合。発熱や鼻水といった風邪症状は比較的分かりやすいですが、便秘や遅延性の食物アレルギーなどは気がつきにくい場合があります。

また歯が生えてくる時期なら、歯ぐきに違和感があったり痛かったりしてグズグズすることも。

春先や秋口は気温の変動が激しいため、大人は気付かなくても赤ちゃんにとっては暑すぎたり、湿度が高くて汗で肌がチクチクするなど、さまざまな理由で不快感を訴えている可能性もあります。

こういった外部の理由や体調不良がないにもかかわらず急にグズグズがひどくなる場合に考えられる原因の1つが「急な脳や精神の発達」だといわれています。

赤ちゃんの中でこんな変化が起きているかも

赤ちゃんは、大人とは比べ物にならないスピードで日々成長しています。

それは身体だけではなく脳(精神)も同じ。そして成長のスピードは一定ではなく、ゆるやかな時期もあれば急激にぐーんとできることが増える時期もあります。

この「ぐーんと成長する時期」には、赤ちゃんが変化に対応するために精神的な負担が増え、グズグズしたり寝付きが悪くなったりするという考え方が「メンタルリープ」です。英語でメンタルは「精神」、リープは「飛躍」を意味します。

提唱者はオランダのオランダのF.プローイュ博士(発達心理学、行動生物学)とH.ヴァン・デ・リート博士(教育心理学、自然人類学)夫妻で、1992年に出版された書籍『Oei, ik groei!(英語版タイトル"The Wonder Weeks")』の中で、メンタルリープについて発表しています。

それによると、赤ちゃんが新しい知識やスキルを身につけるときには脳の働きや認識パターンを大きく作り替える必要があり、変化に適応するまでの間は一時的に不安定な状態になって、よく泣いたりイライラしたりするのだそう。

このメンタルリープの時期は生後20ヶ月までに10回あり、出産予定日から数えて、 5・8・12・19・26・37・46・55・64・75週の頃に起きるとされています。

この週を博士たちは「不思議な週(The Wonder Weeks)」と呼んでいます。

もちろん、赤ちゃんの発達や成長には個人差があり「うちの子は急に機嫌が悪くなる時期などはなかった」あるいは「いやいや、ずっと寝付きが悪いしグズグズしてる!」という人もいるかもしれません。

必ずしも全ての子にメンタルリープが当てはまるとは限りませんが、上記の研究によれば、35年間多くの赤ちゃんの行動や反応のデータを分析してみると、やはり特定の時期に「赤ちゃんが急に扱いにくくなった」という報告が集中しているそうです。

メンタルリープはあった?なかった?

今回は、2歳までのお子さんを育児中のママ・パパ50人に、育児中にメンタルリープにあたるような経験があったかどうかをアンケートしてみました。

すると結果は以下のように。

  • メンタルリープらしきものがあった…34人
  • メンタルリープらしきものはなかった…13人
  • わからない、覚えていない…3人

3分の2以上の人が「理由もないのに赤ちゃんの機嫌が悪くグズグズする」と感じる時期があり、そのあとに赤ちゃんが今までできなかったことができるようになったと答えています。

ただしこのアンケートでは、そもそも「メンタルリープという言葉や、意味を知らなかった」という人が39人と多数を占めていますので、赤ちゃんの週数や変化を正確に記録・観察していたわけではありません。

また、どんな赤ちゃんもぐっと成長する瞬間は当然ありますので、メンタルリープとは直接関係がない可能性もあります。

しかし、体感として「赤ちゃんが一時期やけにグズグズしていたけど、しばらくしたら落ち着いて、ぐっと成長した気がする」というママ・パパはかなりいることがわかりました。

「ここ最近、本当に赤ちゃんがグズグズして、何をしても落ち着かないから辛い…」

と悩んでいるなら、まずは赤ちゃんの体調をチェックして、問題なければ、いま赤ちゃんが予定日から数えて何週目なのか計算してみてはどうでしょうか。

もし上記の"The Wonder Weeks"に近い時期であれば、不安がっている赤ちゃんの気持ちをなだめてあげたり、「今はメンタルリープだからしょうがない」「しばらくすれば落ち着いて、しかも成長を実感できる瞬間が待っている!」と思えて少し心が軽くなったりするかもしれません。

そういった効果があるだけでも、「メンタルリープ」を知っておくとちょっと役に立ちますね。

参考
書籍『不思議な週齢ワンダーウィークス (The Wonder Weeks)』Hetty Van De Rijt (著), Frans Plooij (著), 石川真由美 (編集), 石川卓磨 (翻訳)/ Kiddy World Promotions B V

コラムニスト

認定子育てアドバイザー/育児教育ライター  高谷みえこ 

私が結婚・出産を経験したのは今から20年前の2000年。当時は今のようにインターネットやSNSが発達しておらず、育児書以外での情報源は雑誌くらいという限られたものでした。

娘たちが小さい頃はいわゆる「ワンオペ育児(核家族で平日は母親が1人で家事や育児を担うこと)」で、娘たちには喘息やアレルギーなどの持病もあり、当時は本当に毎日大変でした。

親にとって、妊娠~出産から赤ちゃんのお世話や成長発達・幼児の「イヤイヤ期」やトイレトレーニング・園や学校でのトラブル・ママ友付き合いまで、育児の悩みや苦労はその時々で大変大きなものだと思います。

しかし、せっかく工夫してその時期を乗り越えても、子どもの成長ステージにつれ受験や教育費など次々と新しい課題が現れ、過去の悩みは記憶の隅に追いやられがち。次の世代に伝えていく機会はなかなか得られません。

まさに今、かつての自分のように悩んでいるママ・パパがいたなら、自分の経験と知識から少しでも役に立ちたい…という思いから、お役立ち情報や先輩たちの体験談をもとにした解決のヒントなどを、WEBメディアでライターとして発信するようになりました。

より的確で悩みに寄り添ったアドバイスができるよう、NPO法人日本子育てアドバイザー協会の「認定子育てアドバイザー」資格も取得。発達心理学や医学・行政支援などに関する幅広い知識を身につけています。

現在は、育児教育ライターとして子育て情報やコラムを年間100本以上連載中。

かつての自分のように子育てで悩むママやパパへ、正しい知識に基づき心がふわっと軽くなるようなあたたかみのある記事をお届けしていきたいと思います。

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