2024/03/04

「リフレーミング」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

10年ほど前から、教育やビジネスの現場でよく聞かれるようになったリフレーミングとは、いっけんマイナスに思える出来事や短所に見える性格などに対し、見方を変えてポジティブにとらえ直すことをいいます。

今回は、育児で

「なんでこの子はこんなに聞き分けがないの!?」
「宿題もせずに遊んでばかり……この先大丈夫かな」

といったイライラや不安がつのったときに役立つ、リフレーミングの例やそれをふまえた子供へのおすすめの接し方を紹介します。

リフレーミングの意味と効果

リフレーミング(reframing)は、英語の「re(もう一度、~しなおす)」と「framing(枠組み)」が組み合わさった言葉で「見方を変えてものごとをとらえ直す」といった意味があります。

スマホで風景を撮影するところを想像してみて下さい。同じ風景でも、どこをフレームで切り取るかで仕上がりは全く違うものになりますよね。

また、壁に飾られた絵の額縁を変えるだけで、見る人の印象がガラッと変わることもあります。

リフレーミングはこうした「ものの見方の変化」を人の心に応用したコミュニケーションスキルの1つで、アスリートのメンタルトレーニングや企業の研修にも使われています。

よくいわれるリフレーミングの例は次のようなもの。

  • コップに水が半分しか入っていない/半分も入っている
  • テストの残り時間があと10分しかない/あと10分もある

あなたは上記どちらのタイプですか?

どちらが良い・悪いというのではなく、みんな自分特有のものごとの見方を持っているため、それに縛られ過ぎると苦しくなる……というのがポイントです。

見方やとらえ方を変えてみたら、「そんなに悩む必要ないかも?」「意外といいとこあるよね!」と気が楽になったり、前向きな気持ちになれたりするのがリフレーミングの効果だといえます。

子供にイライラした時のおすすめ言い換え例

親としては、わが子に「元気でいい子に育ってほしい」と願いながらいつも子育てをがんばっていると思います。

ただ、そうするとどうしても「ここが気になる」「なんでこの子はこんなに〇〇なんだろう…」と、マイナス面が気になってしまうのではないでしょうか。

この「〇〇」には次のような言葉が入るのではないかと思います。

  • なんでこの子はこんなに落ち着きがないんだろう
  • なんでこの子はこんなに消極的なんだろう
  • なんでこの子はこんなに頑固なんだろう
  • なんでこの子はこんなにだらしないんだろう

このマイナスに思える点を、リフレーミングで言い換えてみると、次のようになります。

  • 落ち着きがない→この子は好奇心が旺盛でフットワークが軽いのがいいところ
  • 消極的→この子は周りの人の気持ちや状況を深く考えられるのがいいところ
  • 頑固→この子は自分の意志をちゃんと分かって表現できるのがいいところ
  • だらしない→この子はちょっとしたことにこだわらないのがいいところ

このように見ると、どれも「将来その長所を生かして仕事や人生を楽しんでいけそうだ」と思えてきますよね。

リフレーミングを取り入れた子供への接し方

子育てのなかで「短所や悪いところをぜんぶ直してあげるのが子供のため」と考えるのは親としては当然かもしれませんが、その意識が強すぎると、叱ってばかりの日々になってしまいますよね。

そこで「短所」「悪い」と親が思っている子どもの性格や行動をリフレーミングしてみると、意外とそうでもないと思えるようになり、今よりも親子で笑って過ごせる時間が増えるかもしれません。

さらに小学校中~高学年になってくると、子供本人が「なんで僕はこんなに〇〇なんだろう」「私ってみんなと比べて〇〇でダメだな」と悩んだり、落ち込んだりする場面も出てきます。

その時はぜひ、リフレーミングを使って子供の視点を変えるヒントを提供してみてはどうでしょうか。

たとえば

「僕は口下手ですぐ気の強い子に言い負かされてしまうから弱くてダメなんだ」

と思っているのであれば、

「そうか、口下手でダメだと思ってるんだね。でもそれって、しゃべる前にじっくり考えてるってことで、すばらしいことでもあるよね」

あるいは

「スポ少でコーチに意見を言ったら反抗的って怒られた…」

と落ち込んでいたら

「反抗的って言われちゃったのか。でも自分の意見を持っていて言えるのは、大人になってからも本当に大事なことで素晴らしいよ。よかったら一緒に良い言い方を考えてみようか?」

のように伝えてあげると、それまでの自分に対する否定的な見方から、自分を認められるようになり、少し元気になるかもしれません。

おわりに

リフレーミングは、無意識にやってしまう「自分特有のものの見方」を変える作業なので、必要な時に急にはなかなかできません。

練習方法として、ママ・パパ自身が、何かで落ち込んだり、否定的になったときにリフレーミングしてみるのがおすすめです。

子供が悩んでいる時、一緒にリフレーミングできるように日頃から意識しておくとよいですね。

コラムニスト

認定子育てアドバイザー/育児教育ライター  高谷みえこ 

私が結婚・出産を経験したのは今から20年前の2000年。当時は今のようにインターネットやSNSが発達しておらず、育児書以外での情報源は雑誌くらいという限られたものでした。

娘たちが小さい頃はいわゆる「ワンオペ育児(核家族で平日は母親が1人で家事や育児を担うこと)」で、娘たちには喘息やアレルギーなどの持病もあり、当時は本当に毎日大変でした。

親にとって、妊娠~出産から赤ちゃんのお世話や成長発達・幼児の「イヤイヤ期」やトイレトレーニング・園や学校でのトラブル・ママ友付き合いまで、育児の悩みや苦労はその時々で大変大きなものだと思います。

しかし、せっかく工夫してその時期を乗り越えても、子どもの成長ステージにつれ受験や教育費など次々と新しい課題が現れ、過去の悩みは記憶の隅に追いやられがち。次の世代に伝えていく機会はなかなか得られません。

まさに今、かつての自分のように悩んでいるママ・パパがいたなら、自分の経験と知識から少しでも役に立ちたい…という思いから、お役立ち情報や先輩たちの体験談をもとにした解決のヒントなどを、WEBメディアでライターとして発信するようになりました。

より的確で悩みに寄り添ったアドバイスができるよう、NPO法人日本子育てアドバイザー協会の「認定子育てアドバイザー」資格も取得。発達心理学や医学・行政支援などに関する幅広い知識を身につけています。

現在は、育児教育ライターとして子育て情報やコラムを年間100本以上連載中。

かつての自分のように子育てで悩むママやパパへ、正しい知識に基づき心がふわっと軽くなるようなあたたかみのある記事をお届けしていきたいと思います。

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