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内臓脂肪減少薬のアライはどんな市販薬?効果や購入方法について解説

2024/05/23

2024年4月、内臓脂肪減少薬の「アライ」が大正製薬より発売となりました。アライは、オルリスタットを主成分として含む新しい市販薬です。

食べた脂肪の吸収を抑えて便として排泄する働きがあり、発売前から話題となっていました。

しかし、夢の薬のようにも思えるアライですが、誰でも購入できるものではなく、しかも服用にあたっていくつか注意点があります。

今回は、アライにどれくらいのダイエット効果が期待できるのか、どうすれば購入できるのか、どのような注意点があるのかなどについて詳しく見ていきましょう。

ダイエットに使える市販薬アライとは

アライは、内臓脂肪や腹囲を減少させるための市販薬です。美容クリニックなどでしか購入できなかったオルリスタットが市販でも購入できるようになるということで、大きな注目を集めています。

アライに含まれている有効成分

アライの主成分はオルリスタットです。美容クリニックなどでは「ゼニカル」という名前で処方されていることもあります。オルリスタットがダイエット効果を示すのは、脂肪の吸収を阻害するためです。

食事から摂取した脂肪は、リパーゼという酵素の働きによって分解され吸収されます。オルリスタットは、このリパーゼの働きを阻害することで脂肪の吸収を抑えるのです。摂取した脂肪の約25%を便として排泄する働きが期待されています。

アライの効果

アライの効能効果は「腹部が太めな方の内臓脂肪および腹囲の減少」です。国内で内臓脂肪面積変化率を調べた臨床試験では、次のような結果が出ました。

 12週24週最終評価時
プラセボ群-2.28%-5.78%-5.45%
オルリスタット群-6.79%-14.10%-13.50%

薬効成分が入っていないプラセボ群を服用したグループと比べると、オルリスタット群では有意に内臓脂肪の面積が減っていることが分かります。また、腹囲を調べた試験では、次のような結果となりました。

  4週 8週 12週 16週 20週 24週 最終評価時
プラセボ群 -0.17cm -0.44cm -0.87cm -1.11cm -1.17cm -1.63cm -153cm
オルリスタット群 -0.62cm -1.01cm -1.38cm -1.73cm -1.99cm -2.49cm -2.41cm

腹囲に関しても、オルリスタット群のほうが有意に減少するという結果が出ています。

アライの副作用

アライの副作用でよく見られるのが、下痢や油漏れです。このほか、次のような症状が出た場合も、副作用の可能性があります。

症状 症状の詳細
皮膚 発疹・発赤、かゆみ、乾燥感、水疱、びらん
消化器 吐き気、嘔吐、食欲不振、胸やけ、胃痛、胃もたれ、激しい腹痛、血便
精神神経系 不安
泌尿器 排尿困難
その他 からだがだるい

アライを購入できる場所

アライは、薬剤師がいる薬局やドラッグストアなどで購入できます。2024年4月時点では要指導医薬品のため、ネット通販などでは購入できません。アライの取り扱い店舗は「アライ取り扱い販売店検索」から調べることができます。

アライを服用できない方

下記に該当する方は、アライを服用できません。

  • 18歳未満の方
  • 周囲が男性で85cm未満、女性で90cm未満の方
  • 服用する3ヶ月以上前から食事・運動の改善を行っていない方
  • アライの成分でアレルギー症状を起こしたことがある方
  • シクロクロス製剤、抗HIV薬、ワルファリンなどの抗凝固薬を服用している方
  • 吸収不良症候群、胆汁うっ滞、病気や薬による肥満がある方
  • 妊娠中の方、妊娠の可能性がある方、授乳中の方
  • BMIが35以上の方
  • 耐糖能異常や脂質異常症、高血圧などがある方

ダイエット用の市販薬アライの購入方法や条件

アライはダイエットをしたいと考えているすべての方が購入できるわけではありません。購入するためにはいくつかの条件を満たす必要があります。

アライを購入するための条件

アライを購入できるのは、次の3つの条件に当てはまる方のみです。

  • 18歳以上
  • 腹囲(へその高さ)が男性で85cm以上、女性で90cm以上
  • 生活習慣改善の取り組み(食事・運動)を行っている

1つでも条件を満たしていない場合は、購入できないので注意しましょう。また、このほかに「購入前チェックシート」を用いてアライを購入できるか確認する必要もあります。

アライを購入するまでのステップ

アライを購入するためには、1ヶ月前から生活習慣や腹囲・体重の記録をしておく必要があります。また、購入時は薬剤師による記録の確認も必要です。

服用を始めてからは、生活習慣改善の取り組みに関する記録を行います。継続してアライを購入するためには、この記録が必要不可欠です。

ダイエット用の市販薬アライを使うときの注意点

アライは、内臓脂肪や腹囲を減少させるための市販薬です。市販薬といえども薬の一種であるため、いくつか注意点があります。

併用禁忌の薬がある

次の薬を服用している方は、アライを使用できません。

  • シクロスポリン製剤
  • 抗HIV薬
  • ワルファリンなどの抗凝固薬

シクロスポリン製剤と併用すると、シクロスポリン製剤の薬効が減弱する可能性があります。抗HIV薬は、HIVウイルスの増加が報告されているので治療中の方は服用しないでください。ワルファリンなどと併用すると、薬の効果に影響が出る恐れがあります。

妊娠中や授乳中の方は服用できない

妊娠中や授乳中の方がアライを服用した場合の安全性については、まだ確立されていません。そのため、該当の方はアライを服用しないようにしてください。

脂溶性ビタミンが不足する可能性がある

アライは、脂肪だけでなく脂溶性ビタミンの吸収も阻害してしまいます。そのため、服用中はビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの欠乏に注意しましょう。不足すると、次のような症状が見られます。

ビタミン名 副作用・症状
ビタミンA 眼の違和感、皮膚の違和感、繰り返しの感染症の発症、発熱、発疹・発赤など
ビタミンD 腰・関節・骨の痛み、骨折、筋力の低下、筋肉の痛みなど
ビタミンE 貧血、しびれ・知覚鈍麻等の神経症状など
ビタミンK 青あざができる、鼻血、腹部不快感、黒色便の持続、血便、脱力、疲労を感じやすい、めまい、生理出血量の増加、血尿など

サプリメントなどを活用し、脂溶性ビタミンが不足しないよう対策を行いながら服用するのがおすすめです。

BMI35以上の高度肥満の場合はどうやって治療したらいいの?

アライは、BMIが35以上の高度肥満の方は使用できません。では、高度肥満の方はどのように肥満治療を行ったらよいのでしょうか。アライを服用することはできませんが、肥満外来を受診することで治療を受けられるケースがあります。

遺伝子検査などを行い、結果に応じて医師がダイエットプログラムを作成したり薬を処方してくれたりするため、効率よく体重を落としていくことが可能です。

ダイエット用の市販薬アライに関するQ&A

アライに関して疑問をもっている方は少なくありません。新しく出た薬ということもあり、分からないことが多くある方もいるでしょう。

どのくらいアライを飲めば効果がありますか?

服用を4週間続けることで効果が出るといわれています。なお、3ヶ月以上服用しても効果が認められない場合は、薬剤師に相談してください。

下痢や油漏れが起こる原因はなんですか?

下痢や油漏れが起こるのは、食事に含まれる脂肪がそのまま排出されるためです。気づかない間に油が漏れていたり、屁と一緒に漏れたりすることがあるため、服用中は便漏れパッドや生理用ナプキンなどの使用をおすすめします。

「生活習慣改善の取り組み」とは具体的にどのようなものですか?

食事や運動の改善などを指します。エレベーターではなく階段を使ったり、食事を低カロリーのものに変えたりして太りやすい生活習慣を変えていきましょう。

まとめ

アライは、内臓脂肪と腹囲を減らすための新しい市販薬です。主成分であるオルリスタットが脂肪の吸収を阻害し、摂取した油をそのまま便として排泄します。BMI35未満であること、腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上あることなどいくつか条件があるため、購入するときは注意しましょう。

下痢や油漏れの副作用は比較的出やすいため、便漏れパッドや生理用ナプキンなどを使用して衣類にシミができないように対策しながら服用を続けてみてください。BMIが35以上で肥満を解消したいと考えている方は、肥満外来で相談してみましょう。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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