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2歳から親子で”性”について学べる絵本『ぞうちんとぱんつのくに』原作者インタビュー

2024/05/28

赤ちゃんや幼児の男の子の育児で「おちんちんをどうやって洗えばいいの?」と戸惑った経験のあるママはとても多いのではないでしょうか。

またお子さんが成長するにつれて「どうしてママにはおちんちんがないの?」と聞かれ、どう答えたらいいのか悩んでしまう……という声もよく聞きます。

実はインターネットで調べてみても古い情報や誤った情報も多く、正しく知るのが難しいのがオムケア(男の子の性器のケア)なのだそうです。

2024年4月に、そんな男の子の親御さんに向けて、2歳から親子でオープンに性について知ることができる絵本が出版されました。

今回は、助産院の院長として10年以上正しい性の知識の普及に取り組んでいる、原作者の石嶺みき先生にお話を伺いました。

石嶺 みき(いしみね みき)先生

  • ミキズハウス助産院 院長
    Midwife M 腟ビューティー®協会代表
    “全ての世代に、泌尿生殖器ケアを通して幸せになってもらいたい”という信念のもと、「フェムケア」「おちんちんケア」「思春期性教育」をテーマとした教育活動を行っている。

    ■協会HP:https://citu-beauty.com

オリジナルソング付き!楽しみながら「正しい知識」が学べる

日本では性について親子で話すのはなんとなくタブーのような空気がありますが、本来は小さいうちから、正しい性器のケアの方法や、自分も相手も守れる性の知識を知っておくことがとても大切です。

思春期以降・中高生向けの性の本はそれなりにあるのですが、その年齢になると親子でオープンに性について話し合うのは難しいことも。もっと早い段階、ママやパパと一緒にお風呂に入る頃から楽しく正しい知識を学べるような絵本がなかったため、石嶺先生の「ぜひ作りたい」という願いから生まれたのが『ぞうちんとぱんつのくに』だということです。

特に女性であるママにとって分かりにくい、以下のような疑問に答えるQ&Aコーナーも。

  • おしっこの時もおちんちんは拭いた方がいいの?
  • おちんちんの皮は剥いた方がいいの?
  • おちんちんのケアはいつ頃から伝えたらいいですか?
  • おちんちんのトラブルで病院を受診する目安ってありますか?
  • おちんちんってどこの部分を言うの?etc…

回答は日本皮膚科学会専門医の監修付きなので、安心して参考にできますね。

さらに巻末のQRコードをスマホで読み取ると、絵本に登場するオリジナルソング「ぞうちんのおふろうた」が聴け、「正しいおちんちんの洗い方」を親子で歌いながら覚えることができます。

石嶺みき先生に聞く、絵本に込めた願い

石嶺先生に、絵本の出版にあたっての想いやエピソードを聞かせてもらいました。

ーー2024年4月24日の出版から数週間経ちましたが、どのような反響がありましたか?

石嶺先生:

ママたちからは「未知の世界だった男の子の性器のケアの方法が分かった」「性に関する子供からの質問に、自然に答えられるようになった」……という感想をたくさんいただいています。まさに絵本で一番伝えたかったことなので嬉しいですね。

また、実は祖父母世代の方からも「娘の出産祝いに贈りました」「友人のお孫さんの分も何冊も買いました」という声を多くいただいています。

さらに医療従事者からも「大人向けのQ&Aページを見て、知識をアップデートできた」という反響もあるんですよ。

ーー関心があるのはママだけではないのですね。ちなみに、パパにはどのように絵本を生かしてほしいですか?

石嶺先生:

パパは男性なので、おちんちんのケアとなると「パパおねがい!」と任されることもあるのでは。

でも実はパパ自身だって、誰かからケアの仕方を教わったわけではないですよね。

これまで当たり前のようで当たり前でなかったオムケア(おちんちんケア)について、たとえば手を洗うことと同じくらい当たり前に、パパもママも話したり考えたりできる。家族で絵本を見る時間がそんな時間になれば嬉しいです。

ーー今までにない絵本ということで、出版までに大変だったことはありますか?

石嶺先生:

人の顔が1人1人違うように、子供の性器の形や肌質などにも個人差があります。一方で医療従事者も年代によって学んだ内容が異なるため、オムケアは簡単に「これが唯一の正解」と言い切れるやり方がないのが難しかった点です。

それでも、読んでくださったママやパパ、誰にでも共通の認識となるようなケアのかたちを示したくて、さまざまな工夫を重ねました。

自信を持って完成させましたので、ぜひ皆さんに役立てていただきたいです。

ーーFamily.Drは、おもに広島エリアで子育て中のママ・パパが見て下さっています。ひとことメッセージをお願いします。

石嶺先生:

この絵本のはじまりは「どうして男の子のパンツには穴があるの?」という、子供の素朴な疑問にちゃんと答えられる絵本がない!という問題、必要性によるものでした。

絵本を通じてのいちばんの私の願いは「堅苦しくないかたちで、オムケアや性のことを伝えたい」ですが、実はそれ以外にも、この絵本にはいろいろ楽しい仕掛けがあります。

QRコードを読み込むと「ぞうちんのうた」が流れるのもそうですし、途中のページでは「パンツがいくつあるかな?」と知育絵本としても使えるようになっています。

ぜひ、お風呂やお出かけなど毎日の色々な場面で、親子の楽しいコミュニケーションに役立てて下さいね。

コラムニスト

認定子育てアドバイザー/育児教育ライター  高谷みえこ 

私が結婚・出産を経験したのは今から20年前の2000年。当時は今のようにインターネットやSNSが発達しておらず、育児書以外での情報源は雑誌くらいという限られたものでした。

娘たちが小さい頃はいわゆる「ワンオペ育児(核家族で平日は母親が1人で家事や育児を担うこと)」で、娘たちには喘息やアレルギーなどの持病もあり、当時は本当に毎日大変でした。

親にとって、妊娠~出産から赤ちゃんのお世話や成長発達・幼児の「イヤイヤ期」やトイレトレーニング・園や学校でのトラブル・ママ友付き合いまで、育児の悩みや苦労はその時々で大変大きなものだと思います。

しかし、せっかく工夫してその時期を乗り越えても、子どもの成長ステージにつれ受験や教育費など次々と新しい課題が現れ、過去の悩みは記憶の隅に追いやられがち。次の世代に伝えていく機会はなかなか得られません。

まさに今、かつての自分のように悩んでいるママ・パパがいたなら、自分の経験と知識から少しでも役に立ちたい…という思いから、お役立ち情報や先輩たちの体験談をもとにした解決のヒントなどを、WEBメディアでライターとして発信するようになりました。

より的確で悩みに寄り添ったアドバイスができるよう、NPO法人日本子育てアドバイザー協会の「認定子育てアドバイザー」資格も取得。発達心理学や医学・行政支援などに関する幅広い知識を身につけています。

現在は、育児教育ライターとして子育て情報やコラムを年間100本以上連載中。

かつての自分のように子育てで悩むママやパパへ、正しい知識に基づき心がふわっと軽くなるようなあたたかみのある記事をお届けしていきたいと思います。

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