2024/09/02

我慢できない尿意に突然襲われたり、いきなりくる尿意で何度もトイレに行ったりしている場合は、過活動膀胱という病気かもしれません。

人によっては、尿意を我慢できず漏らしてしまうこともあります。

過活動膀胱は生活に支障が出ることが多く、外出や人混みを避けるようになったり、夜も眠れなくなったりしてしまう方が少なくありません。

市販薬で対処するとなると、以前は頻尿や残尿感に効果がある漢方薬を使うことが一般的でした。しかし、現在は尿意切迫感を改善する市販薬が販売されています。今回は、過活動膀胱に効く市販薬や頻尿の対策方法について見ていきましょう。

過活動膀胱とは?

過活動膀胱とは、尿が十分に溜まっていないにもかかわらず、急激な尿意を感じる病気です。頻尿や尿意切迫感に悩んでいる方は、日本全国に810万人もいるといわれています。

年齢が上がるほど患者数も増加することが特徴です。80代になると、約3人に1人が過活動膀胱を発症しているといわれています。

過活動膀胱の症状

過活動膀胱では、次のような症状が見られます。

尿意切迫感
急な尿意に襲われ、尿が漏れそうになります。過活動膀胱の方では必ず見られる症状です。
昼間頻尿
昼間の排尿回数が8回以上と多くなります。
夜間頻尿
排尿するために夜間に1回以上トイレに起きます。
切迫性尿失禁
急な尿意を我慢できず、失禁してしまいます。

このような症状がある方は、過活動膀胱の可能性が高いでしょう。なお、トイレの回数は多くないものの、咳やくしゃみをしたときに尿が漏れる場合は過活動膀胱ではなく腹圧性尿失禁の可能性があります。

過活動膀胱と腹圧性尿失禁では治療法が異なるので注意しましょう。どちらなのか判断がつかない場合は、自己判断で市販薬を使わずに泌尿器科を受診してください。

過活動膀胱の原因

過活動膀胱は以下のようなことが原因になると考えられています。

  • 加齢による膀胱の機能の低下
  • 骨盤底筋の筋力低下
  • 前立腺肥大症
  • 脳出血や脳梗塞の後遺症

骨盤底筋とは、尿道や肛門を締めたり緩めたりする役割をもつ筋肉のことです。膀胱や子宮などを支えています。排尿と大きく関係のある筋肉です。

骨盤底筋の筋力が低下すると、蛇口が開きっぱなしになったような状態になり、頻尿になってしまいます。このほか、検査してもとくに原因が見つからない場合も珍しくありません。

過活動膀胱の治療に使える市販薬

過活動膀胱の治療薬として2021年に発売されたのが、「バップフォーレディ」です。尿意切迫感を改善する日本初の市販薬として注目を集めました。

有効成分 プロピベリン塩酸塩
用法用量 1回1錠を1日1回食後に服用してください。
効能効果 尿意切迫感(急に尿がしたいとの我慢し難い訴え)、尿意切迫感を伴う頻尿(尿の回数が多い)・尿もれ
服用可能な年齢 15歳から70歳未満の女性
医薬品の分類(2024年7月時点) 要指導医薬品

バップフォーレディは、女性専用の市販薬です。要指導医薬品のため、バップフォーレディを使用する方本人が薬剤師による説明を受けることで購入できます。ネットでは販売されておらず、薬局やドラッグストアでのみ購入できる市販薬です。

主成分であるプロピベリン塩酸塩には、抗コリン作用とカルシウム拮抗作用があります。

抗コリン作用 膀胱平滑筋のムスカリン受容体に結合してアセチルコリンの働きを阻害し、膀胱が異常に収縮するのを抑える。
カルシウム拮抗作用 膀胱平滑筋の緊張を緩和して膀胱が異常に収縮するのを抑える。

この2つの働きによって、過活動膀胱の症状を抑えます。1日1回、1回1錠を食後に服用してください。食後であれば朝昼夜いつ服用しても構いませんが、できるだけ毎日同じ時間に服用するようにしましょう。

公式サイト:バップフォーレディ

頻尿や残尿感に使える市販薬

頻尿や残尿感に使用できる市販薬にはいくつか種類があります。

レディガードコーワ

頻尿や残尿感が気になる女性向けの市販薬です。フラボキサート塩酸塩が膀胱の機能を調節して過敏になった状態を正常に近づけます。1週間ほど服用すると、症状が落ち着いてくるでしょう。

有効成分 フラボキサート塩酸塩
用法用量 1日3回、1回1錠を服用してください。
効能効果 女性における頻尿(排尿の回数が多い)、残尿
服用可能な年齢 15歳以上の女性
医薬品の分類(2024年7月時点) 第2類医薬品
公式サイト:レディガードコーワ

トイリズム

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)という漢方薬を使った市販薬です。女性専用の市販薬として販売されているわけではありませんが、男性よりも女性に向いています。水分代謝を調節し、血行を良くして頻尿を改善する漢方薬です。

有効成分 牛車腎気丸エキス(ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ゴシツ、シャゼンシ、ケイヒ、ブシ末)
用法用量 1日2回、1回4錠を食前または食間に服用してください。
効能効果 下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)
服用可能な年齢 15歳以上
医薬品の分類(2024年7月時点) 第2類医薬品
公式サイト:トイリズム

八味地黄丸(はちみじおうがん)

体を温めてバランスを整えることにより頻用や軽い尿漏れなどを改善する漢方薬です。体力が中等度以下の方に向いています。男性向けのイメージがある方もいるかもしれませんが、女性が服用しても問題ありません。

有効成分 ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ
用法用量 15歳以上:1日3回、1回4錠
15歳未満7歳以上:1日3回、1回3錠
上記の量を食前または食間に服用してください。
効能効果 下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)、軽い尿漏れ
服用可能な年齢 7歳以上
医薬品の分類(2024年7月時点) 第2類医薬品

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

八味地黄丸に生薬をプラスした漢方薬です。体力が中等度以下の方に向いています。頻尿だけでなく、足腰の痛みにも効果的です。

有効成分 ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ゴシツ、シャゼンシ、ケイヒ、ブシ末
用法用量 15歳以上:1日3回、1回4錠
15歳未満7歳以上:1日3回、1回3錠
7歳未満5歳以上:1日3回、1回2錠
上記の量を食前または食間に服用してください。
効能効果 下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)
服用可能な年齢 5歳以上
医薬品の分類(2024年7月時点) 第2類医薬品

自宅でできる頻尿対策

頻尿や尿意切迫感が気になる方は、薬の服用と合わせて以下のような対策を行うのもおすすめです。

必要以上に水分を摂らない

過度な水分摂取は、頻尿の原因となります。脳梗塞や心筋梗塞を予防するために水分を多めに摂っている方もいますが、意味はないといわれています。適度に水分を摂ることは大事ですが、必要以上に摂取しないように気をつけましょう。

カフェインの摂取量を減らす

カフェインには利尿作用があるため、コーヒーや緑茶などを頻繁に飲んでいるとトイレが近くなることがあります。頻尿が気になる方は、できればカフェインの摂取を控えましょう。

アルコールを控える

アルコールにも利尿作用があります。また、睡眠を浅くして中途覚醒を増やす働きもあり、夜中に目が覚めてトイレに行く原因にもなります。就寝の6時間前に飲んだアルコールも睡眠に影響するため、アルコールの摂取は控えましょう。

骨盤底筋を鍛えるストレッチを行う

骨盤底筋を鍛えることで頻尿や尿漏れを改善できる可能性があります。スキマ時間でも構いませんので、次のトレーニングを行うようにしてみてください。

力を抜いた状態でお尻の穴を体の中に引き込むように引き締める
引き締めた状態を数秒から数十秒続けて力を抜く

これを1日に何度か繰り返しましょう。

体を冷やさないようにする

体を冷やすと、トイレが近くなります。温かい飲み物を飲んだり、厚めの靴下を履いたりして体を温めるようにしてください。

頻尿や尿漏れが気になるなら泌尿器科を受診しよう

頻尿や尿漏れが過活動膀胱の代表的な症状です。しかし、過活動膀胱以外の病気でこれらの症状が出ることもあります。原因を調べて適切な治療を行うためにも、まずは泌尿器科を受診して診察を受けるのをおすすめします。

まとめ

過活動膀胱に効果がある市販薬として、「バップフォーレディ」が販売されています。こちらは女性専用の薬なので男性は服用できません。1週間以上続けて服用すると効果が認められるといわれているため、まずは1週間続けてみてください。

頻尿や尿漏れが起こる原因にはいくつかの病気が考えられます。過活動膀胱かどうか判断が難しい場合は、泌尿器科を受診して適切な治療を受けましょう。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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