熱性痙攣は、6か月から5歳頃の子どもに見られることがある病気です。
急な発熱に伴って意識障害や痙攣を起こすため、子どもが初めて熱性痙攣を起こしたときは焦ってしまうかもしれません。
熱性痙攣と相性が悪いといわれている薬に、抗ヒスタミン薬があります。今回は、熱性痙攣と抗ヒスタミン薬にどのような関係があるのか、熱性痙攣の既往歴がある子どもに薬を飲ませるときに何に気をつけたら良いのかについて詳しく見ていきましょう。
熱性痙攣とは、熱があるときに起こる痙攣のことです。髄膜炎や脳炎などの疾患に関係なく6か月から5歳頃の子どもに見られる痙攣を熱盛痙攣と呼んでいます。
子どもが起こす痙攣でもっとも多いといわれているのが熱性痙攣です。日本での熱性痙攣の有病率は3.4~9.3%といわれており、決して珍しい病気ではありません。
両親が熱性痙攣の既往歴をもつ場合、その子どもも熱性痙攣を起こしやすいことが分かっています。熱性痙攣の症状は以下のように人それぞれです。
発熱に伴って痙攣を起こすのは、子どもの脳神経細胞が急な体温変化に対応できなくなるためです。また、遺伝的な要因も関係しています。熱性痙攣の多くは、5分未満と短い痙攣です。
一度熱性痙攣を起こすと「また痙攣を起こすのでは」と心配になる方が多いでしょう。しかし、熱性痙攣を起こした子どもの約70%は再発することなく一度きりの痙攣で終わるといわれています。
熱性痙攣を繰り返し起こす子どもはあまり多くなく、予後は比較的良好です。年齢とともに再発率は低下し、いずれほとんど痙攣が起こらなくなります。しかし、熱性痙攣を起こした一部の子どもは将来的にてんかんを発症することがあるため、注意が必要です。
熱性痙攣の後にてんかんを発症する割合は約2~7.5%といわれています。これは、一般の方がてんかんを発症する確率よりも高い数字です。
しかし、熱性痙攣を発症したからといって、必ずてんかんに移行するわけではありません。約90%の子どもはてんかんを発症しないことから、無闇に心配しすぎる必要はないでしょう。
熱性痙攣を発症するピークは1歳です。約90%は3歳までに発症するといわれています。つまり、3歳までに熱性痙攣を起こさなければ、今後発症する可能性は低いといえるでしょう。
ところで、熱性痙攣の子どもには抗ヒスタミン薬を避けたほうが良いという話を聞いたことがありませんか?しかし、抗ヒスタミン薬が熱性痙攣の発症率を上げることはありません。では、なぜ避けたほうが良いのでしょうか。
抗ヒスタミン薬とは、神経伝達物質の一つであるヒスタミンの働きを抑える薬のことです。古くから使われており眠気が出やすいものを第一世代、比較的新しく開発されたもので眠気が出にくいものを第二世代の抗ヒスタミン薬と呼んでいます。主な抗ヒスタミン薬は、以下の通りです。
商品名 | 一般名 |
---|---|
ポララミン | クロルフェニラミン |
アダラックス | ヒドロキシジン |
レスタミン | ジフェンヒドラミン |
商品名 | 一般名 |
---|---|
アレジオン | エピナスチン |
エバステル | エバスチン |
ジルテック | セチリジン |
タリオン | ベポタスチン |
アレグラ | フェキソフェナジン |
アレロック | オロパタジン |
クラリチン | ロラタジン |
ザイザル | レボセチリジン |
ビラノア | ビラスチン |
デザレックス | デスロラタジン |
ルパフィン | ルパタジン |
抗ヒスタミン薬が、熱性痙攣の発症リスクを上げたというデータは今のところありません。しかし、熱性痙攣を発症した場合に発作持続時間を長くする可能性があります。
抗ヒスタミン薬(シプロヘプタジン、ケトチフェン、クロルフェニラミン)を使用したグループでは、使用しなかったグループよりも発作持続時間が長かったとの報告があります。また、発熱してから発作を起こすまでの間隔も短くなることが明らかです。
日本小児神経学会が発刊している「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」には、「発熱性疾患に罹患中に鎮静性抗ヒスタミン薬を使用してよいか」との問いに対して以下のような記載がされています。
このことから、熱性痙攣の既往歴がある方が発熱した場合は、鎮静性抗ヒスタミンの服用を避けるべきといえます。
第一世代の抗ヒスタミン薬と第二世代の抗ヒスタミン薬でリスクを比較したところ、発熱してから痙攣が起こるまでの時間を短縮させる働きが両方で確認されました。また、第一世代の抗ヒスタミン薬を使用したグループでは、優位に発作持続時間が長いことも確認されています。
熱性痙攣に注意が必要なのは、鎮静性抗ヒスタミン薬だけではありません。気管支拡張薬であるテオフィリンも発作持続時間を延長させるといわれています。
そのため、熱性痙攣の既往歴がある子どもが熱を出した場合は、抗ヒスタミン薬と同様にテオフィリンの使用も推奨されていません。
抗ヒスタミン薬は、子ども用の市販薬にもよく配合されています。熱性痙攣の既往歴がある子どもに市販薬を使用する場合は、抗ヒスタミン薬が入っていないかをしっかり確認しましょう。
風邪薬と呼ばれる種類の薬には、あらゆる成分が配合されています。熱や鼻水、咳などさまざまな症状に効くように作られているため、抗ヒスタミン薬も配合されていることがほとんどです。
熱を冷ますためには、解熱剤が用いられます。しかし、子ども用のねつ冷ましシロップには、解熱剤と一緒に抗ヒスタミン薬が配合されていることが多いので注意しましょう。
アレルギー反応による咳を止めるために、咳止めシロップにも抗ヒスタミン薬が配合されていることがよくあります。
抗ヒスタミン薬は鼻炎の症状を軽減させるのに効果がある薬です。そのため、鼻炎シロップにはほぼ必ず抗ヒスタミン薬が配合されています。
熱性痙攣を繰り返す場合、また発作時間が5分以上と長い場合などは、予防薬(ダイアップ)が使われることがあります。すでに起きている痙攣を抑える効果はあまり期待できませんが、高い予防効果が期待できます。
次のようなときは、すぐに病院を受診しましょう。
子ども用の市販薬の多くには、抗ヒスタミンが配合されています。熱が出ているときに市販薬を使用すると、抗ヒスタミンの影響で熱性痙攣の発作が長引いたり発作が起こるまでの時間が短縮されたりするかもしれません。自己判断で抗ヒスタミン薬を使うのではなく、必ず医師に相談するようにしてください。
抗ヒスタミン薬を服用しても熱性痙攣の発症頻度が上がるという報告はありません。しかし、発作の持続時間が長くなったり、発熱してから発作が起こるまでの間隔が短くなったりすることが分かっています。
「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」では、熱性痙攣の既往歴がある子どもに抗ヒスタミン薬を使うことは推奨されていません。市販薬には抗ヒスタミン薬が含まれているものが多く存在するので、十分に気をつけてください。
薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。
「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」
こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。
市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。
そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。
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