2024/09/12

9月、2学期(後期)の授業が始まり、たくさんの教科書や副教材をランドセルや通学カバンに詰め込んで重そうに登校していく子どもたちの姿を見かける時期ですね。

ママやパパも、子どもの頃「家で使わないものは学校に置いておけたらいいのに…」と思ったことはありませんか?

最近では「置き勉」として認められる学校も増えています。今回は「置き勉」の意味や目的、禁止されている学校での理由などを調べてみました。

置き勉の意味や目的

新学期早々はやむを得ないにしても、まだ暑い日も続く中、身体の小さい子どもたちが毎日のようにすべての教材を持ち歩くのは果たして合理的なのでしょうか?

身体への負担や緊急時に避難する場合の身軽さなど安全性も気になりますよね。

実は近年では「置き勉」をOKとする学校が増えています。

「置き勉(おきべん)」とは「置き勉強道具」の省略形といわれ、その日の家庭学習で必要な教科書・ノート・プリントなど以外の教材を学校に置いて帰ってもよいという状況を指します。

通学時の子どもたちの負担や危険が減るほか、実技教科で使う道具を学校で保管することで忘れ物を減らせるというメリットもあります。

国からも置き勉を推奨する通知が出ているのですが、依然として禁止の学校も少なくないといいます。今回は置き勉の意味や目的、「ダメな理由」について考えてみました。

置き勉はOK?ダメ?国の方針は

近年、ランドセルそのものは軽量化が進んでいるものの、小学校での英語必修化や学習要領の改正などにより教科書や資料集などのページ数が増えたり大型化したりする傾向があり、全体的に子どもの荷物は重くなってます。

学用品メーカーが2024年に発表した調査結果によると、小学生のランドセルの平均の重さは4.13kg。小学校1年生では平均体重が24kg台なので、体重の1/6くらいの重さの荷物を毎日背負っていることになります。

1/6というと、体重60kgの大人なら10kgのお米を毎日背負っているような感覚ですね。

低学年の子や小柄な子を中心に、肩や背中の痛みを訴える子も少なくなく「ランドセル症候群」という言葉も生まれるほど。

他にも万が一危険な目に巻き込まれそうなとき、荷物が重く多いと逃げ遅れやすいことも問題視されていました。

そんな問題に対し、子どもの健やかな発達を妨げないようにと、文部科学省から2018年に各学校へ以下のような通知が出ています。

【日常的な教材や学習用具等について】

  • 宿題で使用する教材等を明示することにより、家庭学習で使用する予定のない教材等について、児童生徒の机の中などに置いて帰ることを認めている。
  • 教科用の特別教室で使用する学習用具の一部について、必要に応じて、特別教室内の所定の場所に置くことにしている。

置き勉NGの学校、なぜ禁止?

国から置き勉OKと通知が出ているものの、いまだ「うちの子の学校では禁止なんだよね…」という声も聞きます。

上記の調査でも、調査対象の31.5%の学校で置き勉が禁止されているという結果が報告されています。

禁止の理由を小学生の保護者対象アンケートで聞いてみたところ、おもに以下の3点が挙げられているようです。

  • 宿題のプリントやドリルを学校に忘れてしまうから
  • 盗難やいたずらのおそれがあるから
  • 時間割や明日の準備を整える練習ができないから

もちろん上記も重要とはいえ、対処法はいくつか考えられます。

たとえば、現在はタブレットが1人1台行き渡っているはず。家庭の事情に合わせて、プリントとタブレット、どちらからでも宿題に取り組めるようにすれば良いかもしれません。

盗難についても、現在、放課後は鍵をかけて教室に入れないようになっている学校が多数派で、学校への出入りも過去と比べてセキュリティが高まっていますし、少子化で空きスペースが増えたため個人用の鍵付きロッカーを設置する学校も増えています。

また時間割の練習については、家と学校が入れ替わるだけで、下校時に「何を持ち帰らなければいけないのか」と考えるプロセスは存在します。

予算や人手の面から、すぐに全部を実施するのは難しいかもしれませんが「置き勉が決定的にダメな理由」というのはそれほど多くないのではないでしょうか。

おわりに

アメリカやインドでは、子どもの健康を守るため、スクールバッグの重さは体重の10~15%程度に抑えるというガイドラインが設定されているそうです。

いっぽう日本では、小学校低学年にはまだまだ荷物が重すぎる状況ですし、中学生になっても部活の荷物やお弁当など重量が増すうえに通学距離も伸びます。

いくら「身体が鍛えられる」といっても、成長期の身体に過度な負担をかけてしまっては本末転倒。できるだけ早く、置き勉が全国の学校に広まってほしいですね。

コラムニスト

認定子育てアドバイザー/育児教育ライター  高谷みえこ 

私が結婚・出産を経験したのは今から20年前の2000年。当時は今のようにインターネットやSNSが発達しておらず、育児書以外での情報源は雑誌くらいという限られたものでした。

娘たちが小さい頃はいわゆる「ワンオペ育児(核家族で平日は母親が1人で家事や育児を担うこと)」で、娘たちには喘息やアレルギーなどの持病もあり、当時は本当に毎日大変でした。

親にとって、妊娠~出産から赤ちゃんのお世話や成長発達・幼児の「イヤイヤ期」やトイレトレーニング・園や学校でのトラブル・ママ友付き合いまで、育児の悩みや苦労はその時々で大変大きなものだと思います。

しかし、せっかく工夫してその時期を乗り越えても、子どもの成長ステージにつれ受験や教育費など次々と新しい課題が現れ、過去の悩みは記憶の隅に追いやられがち。次の世代に伝えていく機会はなかなか得られません。

まさに今、かつての自分のように悩んでいるママ・パパがいたなら、自分の経験と知識から少しでも役に立ちたい…という思いから、お役立ち情報や先輩たちの体験談をもとにした解決のヒントなどを、WEBメディアでライターとして発信するようになりました。

より的確で悩みに寄り添ったアドバイスができるよう、NPO法人日本子育てアドバイザー協会の「認定子育てアドバイザー」資格も取得。発達心理学や医学・行政支援などに関する幅広い知識を身につけています。

現在は、育児教育ライターとして子育て情報やコラムを年間100本以上連載中。

かつての自分のように子育てで悩むママやパパへ、正しい知識に基づき心がふわっと軽くなるようなあたたかみのある記事をお届けしていきたいと思います。

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