新型コロナウイルスは5類に移行しましたが、今もなお猛威をふるっています。
高熱や喉の痛みが出やすいことで知られている新型コロナウイルスですが、下痢の症状に悩まされている方も少なくありません。下痢が続くと、体力が消耗しますし脱水を起こす危険性もあります。
今回は、新型コロナウイルスが原因で起こっている下痢に使用できる市販薬、下痢の治療法や対照法について詳しく見ていきましょう。
5類感染症になったことで、より一層身近になった新型コロナウイルス感染症。すでに数回感染している方を見かけることも多くなってきました。
新型コロナウイルス感染症といえば、高熱や喉の痛み、倦怠感などの症状が代表的です。しかし、下痢や吐き気など消化器症状が出る方もいます。
日本消化器病学会によると、新型コロナウイルスに感染した方の約40%で下痢の症状が認められているそうです。このことから、下痢になるのは決して珍しいことではないといえます。
発熱や咳などの症状がある方は新型コロナウイルスに感染していると気づきやすいですが、まれに下痢を主訴に受診された方が新型コロナウイルス陽性となるケースもあるようです。
新型コロナウイルスに感染してすぐに下痢が出ることは少なく、多くは発症後3日目頃から下痢の症状が見られ始めます。早い方では4~5日で下痢が治まりますが、長引く方では2週間ほど続くこともあり、症状の出方は人それぞれです。
新型コロナウイルスでは高熱や食欲不振が続くことも多く、そこにプラスして下痢が起こると脱水になるリスクが高まります。
新型コロナウイルスによる下痢では、水様便(水下痢)が多く見られます。1日に何度もお手洗いに行かなければならず、お手洗いの往復で体力が消耗されてしまうこともあるでしょう。
下痢の平均回数は1日3回ほどですが、多い方では10回近くになることもあります。なお、新型コロナウイルスで下痢になる理由はまだはっきりとは解明されていません。現時点では、ウイルスが腸管を刺激したり腸内細菌叢が変化したりすることが原因だと考えられています。
新型コロナウイルスが原因で起こっている下痢を無理やり止めるのは推奨されていません。蠕動運動を止めて下痢を抑える働きがある下痢止めを使用すると、体の中に原因ウイルスをとどめてしまい回復に時間がかかることがあります。そのため、自己判断で下痢止めを服用するのは止めましょう。
どうしても下痢の症状がつらいときは、医療機関を受診して相談するようにしてください。通常は、下痢止めではなく整腸剤が処方されます。整腸剤には即効性がないものの、服用すると下痢が起こる期間を短縮させることが可能です。
新型コロナウイルスによる下痢の症状に効く市販薬を選ぶ場合、整腸剤や漢方薬が選択肢となります。なお、脱水を起こすほど下痢がひどい場合は下痢止めを使うこともあるので、なるべく自己判断で市販薬を使わずに医療機関を受診しましょう。
整腸剤とは、善玉菌を増やして悪玉菌を減らし、腸内フローラを整える働きがある薬のことです。下痢止めのように腸の動きを止める働きはありません。ただし、下痢の期間を短縮する効果が期待できます。
小児を対象に行われた研究では、経口補水液のみを投与された小児の下痢の持続時間の中央値は115.0時間、4種類の細菌株を投与された小児では70.0時間でした。この結果から、整腸剤によって5日ほど続く下痢が3日ほどに短縮されることが分かりました。
漢方薬
漢方薬を使うと、体内の水分量の調節ができます。余分な水分を体の外に排出し、下痢を止めるのです。ただ単に下痢を止めるだけでなく、腸の状態を正常に近づける働きもあります。腸の動きを止めないため、新型コロナウイルスによる下痢にも使用可能です。
新型コロナウイルスの下痢に使える整腸剤
では、新型コロナウイルスの下痢に使える市販の整腸剤を見ていきましょう。
新ビオフェルミンS錠
ヒト由来の乳酸菌を使用した整腸剤です。3種類の乳酸菌が小腸から大腸までの働きを整えます。5歳から服用可能です。さらに小さな子どもに服用させたい場合は、「新ビオフェルミンS細粒」を選ぶとよいでしょう。こちらは粉末タイプになっており、3か月の赤ちゃんから服用できます。
成分 ●コンク・ビフィズス菌末
●コンク・フェーカリス菌末
●コンク・アシドフィルス菌末効能効果 整腸(便通を整える)、軟便、便秘、腹部膨満感 公式サイト:新ビオフェルミンS錠パンラクミン錠
腸内環境を整える有胞子性乳酸菌、乳酸菌の働きを助けるビオチン、消化を助けるタカジアスターゼN1が配合されています。消化酵素も含まれているため、消化不良や食べ過ぎによる胃もたれにも効果を発揮します。
成分 ●有胞子性乳酸菌(ラクボン原末)
●タカヂアスターゼN1
●ビオチン(ビタミンH)効能効果 整腸(便通を整える)、便秘、軟便、腹部膨満感、消化不良、消化促進、もたれ、胸つかえ、食欲不振、食べ過ぎ 公式サイト:パンラクミン錠強ミヤリサン錠
酪酸菌の仲間である宮入菌が主成分の整腸剤です。宮入菌は芽胞を形成するため耐久性が高く、生きたまま腸まで届きます。善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌の発育を助け、悪玉菌の発育を抑制する働きもある薬です。
成分 宮入菌末 効能効果 整腸(便通を整える)、軟便、便秘、腹部膨満感 公式サイト:強ミヤリサン錠新型コロナウイルスの下痢に使える漢方薬
次に、新型コロナウイルスの下痢に使用できる漢方薬を紹介します。
五苓散(ごれいさん)
五苓散は、体に溜まっている余計な水分を外に出す働きがある漢方薬です。腸に水が溜まると、便の水分量が増えて下痢になります。二日酔いに使うイメージがあるかもしれませんが、下痢や急性胃腸炎などにも有効です。
公式サイト:五苓散胃苓湯(いれいとう)
胃苓湯は、余分な水分を排出して胃腸に溜まった水を取り除く漢方薬です。下痢を止めてしまうのではなく、下痢が起こる原因にアプローチしてくれます。体力が中等度で水溶性の下痢があり、嘔吐や口渇、腹痛がある場合などに有効です。
公式サイト:胃苓湯半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
気(生きるために必要なエネルギー)の動きを整え、胃腸の働きを助ける漢方薬です。体力が中等度の方に向いています。下痢以外に胸焼けや神経性胃炎、二日酔いなどにも使うことが可能です。
公式サイト:半夏瀉心湯新型コロナウイルスの下痢が続くときは医療機関を受診しよう
新型コロナウイルスによる下痢は、人によって2週間以上も続くことがあります。食事や水分を十分に摂取できる状態であればまだ良いのですが、脱水を起こす可能性もあるので症状が気になる方は早めに受診しましょう。
5日間の療養期間中に激しい下痢が起きたり脱水になったりした場合は、あらかじめ医療機関に連絡を入れてから受診すると対応してもらえるでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスに感染した方のうち、約40%は下痢の症状が出るといわれています。下痢が続くと体力が消耗し、脱水になる恐れもあるので注意が必要です。可能であれば経口補水液をこまめに補給して脱水を予防しましょう。
経口摂取が難しく脱水の症状が出ている場合は、医療機関を受診してください。療養期間中の場合は、事前に連絡してから受診するとスムーズに対応してもらいやすくなります。
薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。
「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」
こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。
市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。
そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。
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