2024/10/04

タケキャブ(ボノプラザン)は、胃酸を強力に抑えてくれる医薬品です。

同じ成分を含む医薬品が市販でも購入できたら便利ですよね。「タケキャブを切らしてしまったので市販薬で代用したい」「病院に行くのが面倒だから市販で購入したい」という方も多いでしょう。

今回は、タケキャブが市販で購入できるのかについて詳しく解説します。また、タケキャブの代替品となる市販薬も紹介しているので参考にしてみてください。

タケキャブの特徴

タケキャブは、胃酸を抑える薬のなかでも新しいほうです。2014年に製造販売の承認を取得しています。現在販売されているのは、以下の4種類です。

  • タケキャブ錠10mg
  • タケキャブ錠20mg
  • タケキャブOD錠10mg
  • タケキャブOD錠20mg

タケキャブの作用機序

タケキャブは、カリウムイオン競合型アシッドブロッカーと呼ばれるPPI(プロトンポンプインヒビター)の仲間です。胃酸を分泌する最終段階にプロトンポンプ(H+,K+-ATPase)というものがあります。PPIは、このプロトンポンプを阻害することで胃酸を抑えるのです。

これまでのPPIは酸による活性化が必要なため、効果が発現するまでに数日必要でしたが、タケキャブは活性化を必要とせず、カリウムイオンに競合することでH+,K+-ATPaseを阻害します。

タケキャブの効能効果

現在、タケキャブには次のような効能効果が承認されています。

  • 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制
  • 下記におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助
    胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎

タケキャブの用法用量

用法用量は、治療目的によってやや異なります。ここでは、代表的な使い方について見ていきましょう。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍の場合
ボノプラザンとして1回20mを1日1回経口投与する。なお、通常は胃潰瘍は8週間まで、十二指腸潰瘍は6週間までの投与とする。
逆流性食道炎の場合
ボノプラザンとして1回20mgを1日1回経口投与する。なお、通常は4週間までの投与とするが、効果が不十分な場合は8週間まで投与できる。
再発や再燃を繰り返す場合の維持両方では1回10mを1日1回経口投与するが、効果が不十分な場合は1回20mgを1日1回経口投与する。

市販でタケキャブは購入できる?

これまで数多くの医療用医薬品が市販でも購入できるようになってきました。フェキソフェナジンやロキソプロフェンナトリウムなどは、もともと処方箋が必要でしたが今では当たり前のように市販でも購入できます。

市販でタケキャブは購入できない

現時点でタケキャブは残念ながら市販では販売されていません。そのため、服用したい場合は医療機関を受診して処方箋を発行してもらう必要があります。また、処方箋なしで一部の医療用医薬品が購入できる零売薬局でもまだ取り扱いがない状況です。

しかし、「タケキャブを市販でも購入できるようにしてほしい」という要望が多く上がっているようで、厚生労働省の「スイッチOTC医薬品の候補となる成分の要望募集で提出された要望の一覧」にボノプラザン が掲載されています。

代替薬として「H2ブロッカー」がある

タケキャブは残念ながら市販で購入できません。そこで代替薬となりやすいのがH2ブロッカーです。H2ブロッカーはPPIより胃酸を抑える効果は劣りますが、それでも強力に制酸効果を発揮します。市販薬のなかでは、もっとも胃酸抑制効果が高い薬です。

市販で購入できるH2ブロッカー

市販では、多くのH2ブロッカーが販売されています。ここでは、代表的なH2ブロッカーを見ていきましょう。

ガスター10

医療機関で処方されるガスター錠10mgと同じ成分が同じ量だけ配合された市販薬です。服用間隔を8時間以上空ければ、1日2回まで使用できます。小型の錠剤なので、薬を飲み込むのが苦手な方でも服用しやすいでしょう。15歳以上の方から80歳未満の方まで使用できます。

成分(1錠あたり) ファモチジン…10mg
効能効果 胃痛、もたれ、胸やけ、むかつき
用法用量 15歳以上:1回1錠を1日2回まで服用
公式サイト:ガスター10

ガスター10<散>

散剤タイプのガスター10です。スーッと速く溶けて胃の不快な症状を抑えます。主成分であるファモチジンは、胃酸の出過ぎを抑えて胃粘膜の修復を促す成分です。1回分ずつ分包されているので持ち運びも簡単にできます。

成分(1錠あたり) ファモチジン…10mg
効能効果 胃痛、もたれ、胸やけ、むかつき
用法用量 15歳以上:1回1包を1日2回まで服用
公式サイト:ガスター10<散>

ガスター10 S錠

ガスター10 S錠は、口中速溶タイプの市販薬です。口の中に入れるだけで錠剤が溶けていくので、水で服用する必要がありません。もちろん、水で服用しても大丈夫です。医療用で使われている「タケキャブOD錠10mg」と同等の市販薬として知られています。

成分(1錠あたり) ファモチジン…10mg
効能効果 胃痛、もたれ、胸やけ、むかつき
用法用量 15歳以上:1回1錠を1日2回まで服用
公式サイト:ガスター10 S錠

ファモチジン錠「クニヒロ」

皇漢堂製薬から販売されているファモチジン含有の市販薬です。ガスター10のシリーズと同等の効果が期待できますが、こちらの商品のほうが安く手に入るので購入しやすいでしょう。2週間以上続けて服用することはできません。症状が続くときは医師の診察を受けるようにしてください。

成分(1錠あたり) ファモチジン…10mg
効能効果 胃痛、もたれ、胸やけ、むかつき
用法用量 15歳以上:1回1錠を1日2回まで服用

タケキャブとH2ブロッカーの違い

タケキャブの主成分はボノプラザンと呼ばれるものです。PPIの仲間で、強力に胃酸の分泌を抑えてくれます。一方でH2ブロッカーは、PPIとは違う機序で胃酸を抑える薬です。

PPIは胃酸を分泌する一連の流れの最終段階を阻害するものですが、H2ブロッカーは途中段階で阻害します。そのため、PPIのほうが効果が高いことが一般的です。

タケキャブの代わりに市販のH2ブロッカーを使うときの注意点

タケキャブは市販では販売されていません。どうしても胃の症状を市販薬で抑えたいときはH2ブロッカーが配合された薬が良い候補となります。ただし、いくつか注意すべき点があります。

成分が異なるので十分な効果が出ない可能性がある

H2ブロッカーは、市販の胃薬のなかでは胃酸を抑える力が強いほうです。しかし、タケキャブと同じ成分が使われているものではありません。違う成分が主成分のため、タケキャブを服用しているときと同等の効果を実感できない可能性があります。

2週間以上の長期連用はできない

市販のH2ブロッカーは、最長でも2週間までしか服用できません。薬によって胃腸の病気がマスキングされ、治療が遅れてしまう可能性があるからです。たとえ薬の効果が出ていたとしても2週間以上は服用しないようにしてください。

タケキャブとH2ブロッカーの併用はできない

タケキャブの効果が不十分だからといって、自己判断で市販のH2ブロッカーを服用することはできません。効果が不十分だと感じるときは担当医に相談しましょう。

タケキャブが欲しい場合は胃腸内科や内科を受診しよう

タケキャブは処方箋が必要な薬です。現時点で市販では手に入りません。タケキャブが必要な場合は、胃腸内科や内科を受診して相談してみましょう。

まとめ

タケキャブは市販では購入できないため、医師に処方してもらう必要があります。胃酸を強力に抑えてくれる良い薬ですが、診察を受けないと手に入らないので注意してください。

代わりになる薬として、市販にはH2ブロッカーという薬があります。こちらは最長2週間まで服用が可能です。

H2ブロッカーで効果が不十分だったり、症状が長引いていたりする場合は早めに胃腸内科や内科で相談しましょう。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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