2024/11/12

血糖値が高い状態が続く糖尿病はご存知の方が多いですが、実は低血糖も体にとっては良くありません。

重度の低血糖になると、昏睡が見られることもあります。低血糖になった場合は、適切な対処により症状を回復させることが可能です。今回は、低血糖の症状や原因、対策法について詳しく見ていきましょう。

低血糖とはどのような状態?

低血糖はどなたでもなる可能性があります。とくに、糖尿病の治療をしている方では、薬の副作用で血糖値が下がりすぎてしまうことがあります。

低血糖とは

低血糖とは、血液中に含まれているブドウ糖の濃度が低くなった状態です。血糖値が60~70mg/dL未満になると、冷や汗や手足の震え、動悸など低血糖の症状が出やすくなります。

血糖値が上がるとインスリンが分泌されてブドウ糖が細胞に取り込まれるように、血糖値が下がった場合もアドレナリンが分泌されて血糖値を上げようとします。

しかし、このアドレナリンの働きによって震えや動悸などの症状が出てしまうのです。

低血糖を早期発見する方法

次のような症状が見られる場合は、低血糖を起こしている可能性があります。

  • 冷や汗が出る
  • 気持ち悪くなる
  • 急に空腹感をおぼえる
  • 寒気がする
  • 動悸がする
  • 手足が震える
  • 体の力が抜けた感じがする
  • ぼーっとする
  • ふらつく

とくにこれらの症状が早朝空腹時や食事前、就寝前などに見られた場合は、低血糖の可能性が考えられます。初期症状が出たらすぐに糖分を補給しましょう。

低血糖を起こしやすい方の特徴

次の方は低血糖を起こすリスクが高いので注意しましょう。

  • インスリンの注射をしている方
  • インスリンの分泌が枯渇している方
  • 食欲が低下していたり嘔吐や下痢があったりする方
  • 食事を摂っていない方
  • 中等度以上の運動をした後の方
  • 中等度以上の肝障害や腎障害がある方
  • 自律神経障害の方
  • 胃切除の手術を受けた方
  • 高齢の方

低血糖で見られる症状

低血糖は、軽度の場合と重度の場合ではあらわれる症状が異なります。できるだけ軽度のうちに症状に気づき、正しい対処を行うことが重要です。

軽度の低血糖で見られる症状

軽度の低血糖では、次のような症状が見られます。

  • 冷や汗
  • 神経質
  • 手足の震え
  • 失神
  • 動悸
  • 空腹

低血糖の症状は、血糖値が60ml/dL未満になるとあらわれやすいと言われていますが、必ずしも60ml/dL未満でないと症状が出ないわけではありません。この値より高い場合でも、急激に血糖値が低下したときは低血糖の症状が見られることがあります。

重度の低血糖で見られる症状

重度の低血糖になると、次のような症状が見られます。

  • めまい
  • 疲労感
  • 筋力低下
  • 頭痛
  • 錯乱
  • かすみ目
  • 痙攣
  • 昏睡

脳へのブドウ糖の供給が不足すると、重度の低血糖を起こして昏睡を起こしたり意味の分からないことを話したりなどの症状が出ることがあります。長時間にわたって重度の低血糖の状態が続くと、問題が残りやすいといわれているため早急な対応が必要です。

低血糖を起こしやすくなる原因

低血糖は誰でも起こる可能性があります。とくに、食事を摂っていない方、空腹時に激しい運動を行っている方、血糖値を下げる薬を服用している方は低血糖を起こすリスクが高くなります。

食事を摂っていない

食事の量が少なかったり、食事を摂っていなかったりすると、血糖値が上がらず低血糖を起こしやすくなります。炭水化物や糖質が血糖値を上げる働きをもつため、脂質やタンパク質ばかりを食べている方も低血糖に気をつけなければなりません。

空腹時に激しい運動を行った

空腹時の運動は低血糖を起こしやすいので注意しましょう。運動をするとインスリン感受性が高くなり、さらに筋肉細胞でブドウ糖が消費されて血糖値が下がりやすくなるためです。

血糖値を下げる薬を服用するタイミングや量を間違えた

血糖値を下げる薬の服用量や服用タイミングを間違えると、過度に血圧が下がる可能性があります。インスリン治療を行っている方のほとんどは低血糖を経験しているといわれているので気をつけましょう。

軽度の低血糖が起こる頻度は30~50%/年、重度の低血糖が起こる頻度は1~6%/年です。また、薬の服用タイミングを間違えることで低血糖が起こることもあります。

低血糖になったときの対処法

低血糖の症状が出たら、なるべく早めに対処しましょう。重要の低血糖はなるべく避けるべきといわれているため、初期の段階で症状に気づき対処することが大切です。

すぐに食事ができるとき

1時間以内に食事ができる場合は、まず砂糖を10~20gほど摂取してください。α-グルコシダーゼ阻害薬を服用している方は、砂糖ではなくブドウ糖を摂取します。

15~20分ほど経っても低血糖の症状が続いている場合はさらに砂糖またはブドウ糖を追加で10~20g摂取し、低血糖の症状がなくなったことを確認してから食事をしましょう。

すぐに食事ができないとき

1時間以内に食事ができないときは、まず砂糖またはブドウ糖を10~20g摂取します。その後、すぐに簡単な食事(80kcal程度)を摂ってください。

15~20分経っても低血糖の症状が続く場合は、追加で砂糖またはブドウ糖を10~20g摂取しましょう。

低血糖を予防する方法

低血糖は予防することもできます。とくに普段から糖尿病の治療薬を使用している方は、低血糖を起こさないように気をつけましょう。

空腹時に運動をしない

空腹時の運動は低血糖を引き起こしやすくなります。運動中に低血糖を起こすとケガにつながることもあるため、運動前には軽くでも良いので何か食べるようにしましょう。また、激しい運動を行うときは途中で糖分を補給することも忘れないようにしてください。

極端な糖質制限を行わない

糖質制限とは、炭水化物の摂取量を減らすダイエット法です。糖質の摂取量が減ると、食事から摂取するグルコースの量が減るため低血糖を起こしやすくなります。極端な糖質制限は控え、バランスの良い食事を心がけましょう。

正しい方法で薬を使用する

薬の使用方法を間違えると低血糖につながる恐れがあります。飲み間違えやすい薬として知られているのが、α-グルコシダーゼ阻害薬という薬です。この薬は、食直前に服用しなければなりません。

消化管から糖の吸収を遅らせる効果があるため、食事をするすぐ前に服用する必要があります。すぐに効き始める薬のため、食事をする時間よりも早めに服用すると、過度に血糖値が下がる恐れがあります。

低血糖を予防できる市販薬はある?

低血糖の予防に効果がある市販薬はありません。予防でもっとも大事なのは、バランスの良い食事を摂ること、空腹時に激しい運動をしないことなどです。糖尿病の治療薬を使用している方で低血糖を起こしやすいという場合は、常にブドウ糖などを持ち歩くようにするのもよいでしょう。

低血糖が気になるときは医療機関を受診しよう

普段から低血糖を起こしやすい方は、服用している薬が合っていなかったり生活習慣に何か問題があったりする可能性があります。まれですが、インスリノーマなどの病気が隠れているケースもあるため、気になる方は早めに医療機関で相談しましょう。

まとめ

低血糖とは、血糖値が過度に下がった状態のことです。食事を抜いていたり空腹時に運動をしたり、薬の飲み方が誤っていたりなどの理由で起こることがあります。

冷や汗や気持ち悪さ、動悸や手足の震えなどが見られたら、低血糖の症状が起きている可能性があるため、はやめに対処しましょう。低血糖が続く場合は、医療機関で相談するようにしてください。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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