2024/11/06

小学校の国語の授業では学年ごとに新しい漢字を学習しますが、まだ習っていない漢字を読み書きできる子は意外と多いもの。

自分の名前だったり、本や漫画に登場する字だったり……中学受験をするお子さんなら塾で習っているかもしれません。

しかし多くの小学校では「まだ習っていない漢字は使わず、ひらがなで書きましょう」というルールがあるようです。

今回は、なぜ習っていない字が禁止されているのか、お子さんの「書けるのになんで使っちゃダメなの?」という疑問にどう答えるか…などについて解説します。

小学校での漢字使用ルールとは

小学生のお子さんがいるママ・パパは、授業参観に行くと、教室の後ろや廊下に、作文や絵・書道の作品などが並んで掲示されているのを見かけると思います。

よく見てみると、特に低学年では、それぞれの作品に書かれた児童の名前が、ひらがなと漢字まじりで「いの上」「し水」などの独特な表記になっていませんか?

たとえば同級生の名前のところに「いの上大と」と書かれていたら、どう読んだらいいのかな?と少し迷ってしまいそうですよね。

これは、多くの小学校で、まだ習っていない漢字は学校では使わないようにしよう、というルールを設けているからです。

もし「井上大翔(いのうえ ひろと)」さんだとしたら、「上」と「大」は小学校1年生で習いますが、「井」は4年生まで使えず、「翔」は常用漢字ではなく「人名漢字」のため卒業まで使えません。

また、教科書やプリントなども、砂漠を「砂ばく」、真珠を「真じゅ」のように、中学校で習う漢字はひらがなで表記しています。

禁止されている理由は?

このような「習っていない漢字を使わない」というルールはどこからきているのでしょうか?

公立の小中学校での学習に関するガイドラインの「学習指導要領」には、以下のように書かれています。

〔第1学年及び第2学年〕 (イ)第1学年においては,別表の学年別漢字配当表(以下「学年別漢字配当表」という。)の第1学年に配当されている漢字を読み,漸次書き,文や文章の中で使うこと。
(ウ)第2学年においては,学年別漢字配当表の第2学年までに配当されている漢字を読むこと。また,第1学年に配当されている漢字を書き,文や文章の中で使うとともに,第2学年に配当されている漢字を漸次書き,文や文章の中で使うこと。

これを見ると「各学年で習う漢字か、過去に習った漢字を使いましょう」と読み取れますね。

しかし、その後には以下のような方針も示されています。

(ア) 学年ごとに配当されている漢字は、児童の学習負担に配慮しつつ、必要に応じて、当該学年以前の学年又は当該学年以降の学年において指導することもできること。
(イ) 当該学年より後の学年に配当されている漢字及びそれ以外の漢字については、振り仮名を付けるなど、児童の学習負担に配慮しつつ提示することができること。

こちらを見ると、習っていない漢字でも必要に応じてある程度は使って良いことが分かりますね。

また「砂ばく」「真じゅ」のような「交ぜ書き(まぜがき)」は、熟語としての意味が分かりにくくなるというマイナス面もあるため、ルビ(ふりがな)をつけて対応してはどうかという議論も近年起こっています。

ひらがなの「りょう師」だと、どんな職業か分かりませんが、「漁師(りょうし)」または「猟師(りょうし)」なら想像がつきやすいですよね。

さらに人名漢字は義務教育では習わないため、そのルールに従うと、一部の子はずっと漢字で名前を書けないという問題点もあります。

それでも多くの学校では「使ってはいけない」というルールがあり、以下のような理由で禁止されているケースが多いようです。

  • 持ち物や配布物の名前で読めない漢字があると、担当の児童が困るから
  • 授業で正しい書き順や形を習ってから使うほうが良いから

「使っちゃダメなの?」とお子さんに聞かれたら

もし、お子さんが自分の名前を漢字で書けるようになったら。

それがもっと先の学年で習う漢字だったり、人名用漢字で習う予定がないものだったりする場合、書道の時間などには「ひらがなで書きましょう」と指導されるかもしれません。

お子さんから「なんでダメなの?」と聞かれた場合、基本的には「お友達で、まだその字が読めない人がいるかもしれないからだよ」といった説明をしてあげることになるでしょう。

しかし高学年になってくると、自分の名前は漢字でOKという学校も多いようです。

書き順やトメ・ハネ・はらいが正しく書けているのを確認したら、学年が上がったタイミングで担任の先生に子ども自身が聞いてみたり、懇談のついでに保護者が聞いてみても良いかもしれませんね。

コラムニスト

認定子育てアドバイザー/育児教育ライター  高谷みえこ 

私が結婚・出産を経験したのは今から20年前の2000年。当時は今のようにインターネットやSNSが発達しておらず、育児書以外での情報源は雑誌くらいという限られたものでした。

娘たちが小さい頃はいわゆる「ワンオペ育児(核家族で平日は母親が1人で家事や育児を担うこと)」で、娘たちには喘息やアレルギーなどの持病もあり、当時は本当に毎日大変でした。

親にとって、妊娠~出産から赤ちゃんのお世話や成長発達・幼児の「イヤイヤ期」やトイレトレーニング・園や学校でのトラブル・ママ友付き合いまで、育児の悩みや苦労はその時々で大変大きなものだと思います。

しかし、せっかく工夫してその時期を乗り越えても、子どもの成長ステージにつれ受験や教育費など次々と新しい課題が現れ、過去の悩みは記憶の隅に追いやられがち。次の世代に伝えていく機会はなかなか得られません。

まさに今、かつての自分のように悩んでいるママ・パパがいたなら、自分の経験と知識から少しでも役に立ちたい…という思いから、お役立ち情報や先輩たちの体験談をもとにした解決のヒントなどを、WEBメディアでライターとして発信するようになりました。

より的確で悩みに寄り添ったアドバイスができるよう、NPO法人日本子育てアドバイザー協会の「認定子育てアドバイザー」資格も取得。発達心理学や医学・行政支援などに関する幅広い知識を身につけています。

現在は、育児教育ライターとして子育て情報やコラムを年間100本以上連載中。

かつての自分のように子育てで悩むママやパパへ、正しい知識に基づき心がふわっと軽くなるようなあたたかみのある記事をお届けしていきたいと思います。

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