中耳炎に効く市販薬は?治療法や受診の目安を解説

2025/03/21

中耳炎は、特に子どもで多く見られる病気です。

急性中耳炎は生後6カ月までに47.8%、1歳までに78.9%、2歳までに91.1%の小児が一度は罹患すると言われています。

しかし、中耳炎は子どもだけでなく大人でも発症する病気です。決して珍しい病気ではないため、子どもも大人も注意しなければなりません。

今回は中耳炎に効く市販薬があるのか、どのような治療を行うかなどを詳しく解説します。受診した方が良い目安も紹介しているので参考にしてみてください。

中耳炎に効く市販薬は販売されていない

中耳炎の治療は、抗生物質の飲み薬や点耳薬などを用いて行われます。これらの薬は市販薬では販売されていません。

中耳炎そのものを根本から治す市販薬は存在しないというのが現状です。厚生労働省の「スイッチOTC医薬品の候補となる成分の要望募集で提出された要望について」を見ても、中耳炎の治療に使える成分の記載はありません。

そのため、今後もしばらくは、医療機関と同じ中耳炎の治療薬が市販で購入できるようになる可能性は低いでしょう。

中耳炎はどのような病気?

「中耳炎」という言葉を聞く機会は多いですが、具体的にどのような原因で起こるのか、どういった症状が出るのかをご存知の方はあまり多くないかもしれません。

まずは、中耳炎に関する基本的な情報を見ていきましょう。

中耳炎の原因

中耳炎の原因は、細菌やウイルスです。鼻や喉に存在する細菌やウイルスが耳管を通って中耳に感染することで起こります。耳は外耳、中耳、内耳と大きく3つの部分に分けることができます。

中耳は外耳道から伝わってきた音を鼓膜でとらえ、耳小骨に伝える働きがあることから、聴覚に関係する部位です。中耳炎は、この中耳の部分が細菌やウイルスに感染して発症します。

原因となる菌で多いのは、以下のものです。

  • インフルエンザ菌
  • 肺炎球菌
  • 大腸菌
  • 黄色ブドウ球菌
  • A群β溶血性レンサ球菌

中耳炎になると、以下のような症状が見られます。

  • 耳の痛み
  • 耳垂れ
  • 聞こえづらい

中耳炎の種類

中耳炎には、以下のようにいくつか種類があります。

急性中耳炎 乳幼児期に発症することが多い中耳炎です。子どもは中耳と鼻管をつなぐ耳管が短いため、細菌やウイルスに感染しやすいといわれています。
滲出性中耳炎 中耳に液体が溜まる病気です。痛みや発熱はありませんが、液体が溜まることで音が聞こえにくくなります。
慢性中耳炎 中耳の炎症が慢性的に起こっている状態です。進行すると、めまいや顔面神経麻痺などを起こすことがあります。
癒着性中耳炎 滲出性中耳炎の状態が長く続くと起こる病気です。鼓膜が中耳腔の壁に癒着し、音が聞こえづらくなります。
真珠腫性中耳炎 慢性中耳炎の一種です。鼓膜の一部が中耳に入り込み、真珠腫と呼ばれる固まりが作られます。放置しておくと周辺の骨を溶かしてしまうため、早期の治療が必要です。
好酸球性中耳炎 慢性中耳炎の一種です。血液中に含まれている好酸球の働きにより中耳腔にねばねばとした液体が溜まります。

中耳炎に使える市販薬

中耳炎に使用できる市販薬には、主に次の3種類があります。

  • 中耳炎による痛みを緩和する薬
  • 耳の中を殺菌する液体タイプの薬
  • 漢方薬

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ロキソニンS

中耳炎による痛みを抑える働きがある鎮痛薬です。中耳炎そのものを治す効果はありませんが、痛みを速やかに緩和してくれます。15歳以上から服用可能です。

薬の種類 中耳炎による痛みを緩和する薬
有効成分 ロキソプロフェンナトリウム水和物
効能効果 ●頭痛・月経痛(生理痛)・歯痛・抜歯後の疼痛・咽喉痛・腰痛・関節痛・神経痛・筋肉痛・肩こり痛・耳痛・打撲痛・骨折痛・ねんざ痛・外傷痛の鎮痛
●悪寒・発熱時の解熱
用法用量 15歳以上:1日2回、1回1錠
※症状が続くときは1日3回まで服用可
使用できる年齢 15歳から
公式サイト:ロキソニンS

タイレノール

胃への負担が少ないアセトアミノフェンが主成分の解熱鎮痛薬です。中耳炎による痛みを緩和する働きがあります。空腹時でも服用できます。

薬の種類 中耳炎による痛みを緩和する薬
有効成分 アセトアミノフェン
効能効果 ●頭痛・月経痛(生理痛)・歯痛・抜歯後の疼痛・咽喉痛・耳痛・関節痛・神経痛・腰痛・筋肉痛・肩こり痛・打撲痛・骨折痛・ねんざ痛・外傷痛の鎮痛
●悪寒・発熱時の解熱
用法用量 15歳以上:1日3回、1回1錠
使用できる年齢 15歳から
公式サイト:タイレノール

イブA錠

イブプロフェンが主成分の解熱鎮痛薬です。鎮痛作用を高める働きがあるアリルイソプロピルアセチル尿素と無水カフェインが配合されています。眠くなることがあるので注意が必要です。

薬の種類 中耳炎による痛みを緩和する薬
有効成分 ●イブプロフェン
●アリルイソプロピルアセチル尿素
●無水カフェイン
効能効果 ●月経痛(生理痛)・頭痛・歯痛・咽喉痛・関節痛・筋肉痛・神経痛・腰痛・肩こり痛・抜歯後の疼痛・打撲痛・耳痛・骨折痛・ねんざ痛・外傷痛の鎮痛
●悪寒・発熱時の解熱
用法用量 15歳以上:1日3回、1回2錠
使用できる年齢 15歳から
公式サイト:イブA錠

バファリンルナi

2種類の解熱鎮痛成分が配合されています。イブプロフェンとアセトアミノフェンのダブル処方を採用しているため、速やかに痛みを緩和することが可能です。

薬の種類 中耳炎による痛みを緩和する薬
有効成分 ●イブプロフェン
●アセトアミノフェン
●無水カフェイン
●乾燥水酸化アルミニウムゲル
効能効果 ●月経痛(生理痛)・頭痛・腰痛・肩こり痛・筋肉痛・関節痛・打撲痛・骨折痛・ねんざ痛・歯痛・抜歯後の疼痛・神経痛・耳痛・外傷痛・咽喉痛の鎮痛
●悪寒・発熱時の解熱
用法用量 15歳以上:1日3回、1回2錠
使用できる年齢 15歳から
公式サイト:バファリンルナi

小児用バファリンチュアブル

3歳から服用できる解熱鎮痛薬です。子どもの急な中耳炎にも使用できます。チュアブル錠なので、水なしで服用可能です。

薬の種類 中耳炎による痛みを緩和する薬
有効成分 アセトアミノフェン
効能効果 ●悪寒・発熱時の解熱
●歯痛・抜歯後の疼痛・頭痛・打撲痛・咽喉痛・耳痛・関節痛・神経痛・腰痛・ 筋肉痛・肩こり痛・骨折痛・ねんざ痛・月経痛(生理痛)・外傷痛の鎮痛
用法用量 11歳以上15歳未満:1日3回、1回6錠
7歳以上11歳未満:1日3回、1回4錠
3歳以上7歳未満:1日3回、1回3錠
使用できる年齢 3歳から

パピナリン

耳に滴下して使うタイプの薬です。殺菌作用のあるフェノール、局所麻酔作用があるアミノ安息香酸とプロカイン塩酸塩などが配合されています。

小児に使用する場合は、必ず保護者監督のもとで使用してください。

薬の種類 耳の中を殺菌する液体タイプの薬
有効成分 ●フェノール
●アミノ安息香酸エチル
●プロカイン塩酸塩
●アクリノール水和物
●ホモスルファミン 
効能効果 耳漏(耳だれ)、耳痛、耳そう痒、外聴道炎、耳鳴、中耳炎
用法用量 1日1~2回、1回1~3滴を滴下するか、脱脂綿を小豆大に丸めて薬液を浸し、耳の入口に挿入する。
使用できる年齢 小児から使用可能
公式サイト:パピナリン

ワグラスD錠

生薬の力で中耳炎の改善または回復促進をする薬です。5歳以上から服用できます。排膿を促し炎症を鎮める効果があります。

薬の種類 漢方薬
有効成分 ●カンゾウ
●キキョウ
●キジツ
●シャクヤク
●ショウキョウ
●タイソウ
●カンゾウ末
●シャクヤク末
●ショウキョウ末
●キジツ末 
効能効果 化膿性疾患(フルンケル)、カルブンケル、腫物、るいれき、リンパ腺炎、蓄膿症、歯槽膿漏、中耳炎、乳腺炎の改善または回復促進
用法用量 15歳以上:1日3回、1回5錠
12歳以上15歳未満:1日3回、1回4錠
7歳以上12歳未満:1日3回、1回3錠
5歳以上7歳未満:1日3回、1回2錠
使用できる年齢 5歳から
公式サイト:ワグラスD錠

中耳炎のとき耳鼻科ではどのような治療が行われるの?

中耳炎は基本的に市販薬では治療できません。耳鼻科では、次のような薬を使って治療することが多いでしょう。

抗生物質の飲み薬

抗生物質の飲み薬は、中耳炎の代表的な治療薬です。市販では扱いがないため、中耳炎が疑われるときはできるだけ耳鼻科を受診しましょう。

点耳薬

耳にさして使う点耳薬を使用する場合もあります。セフメノキシム塩酸塩、ホスホマイシンナトリウム、オフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、クロラムフェニコールなどが代表的です。

解熱鎮痛薬

痛みを抑える効果を期待して解熱鎮痛薬が処方されることもあります。市販でも購入できますが、子ども用のものでも3歳からしか服用できないため、小さな子どもが中耳炎になった場合は耳鼻科を受診してください。

中耳炎でこのような症状があるときは耳鼻科を受診しよう

以下のような症状があるときは、早めに耳鼻科を受診しましょう。

  • 熱が数日続いている
  • 耳の痛みや違和感が続いている
  • 耳から膿が出ている
  • 聞こえにくさがある
  • めまいがする

中耳炎の市販薬に関するよくある質問

最後に、中耳炎の市販薬に関するよくある質問にお答えします。

中耳炎に効く抗生物質の市販薬はありますか?

抗生物質は市販では販売されていません。そのため、中耳炎になった場合は基本的に耳鼻科を受診しましょう。

カロナールと同じ成分の市販薬はありますか?

カロナールと同じアセトアミノフェンを含む市販薬には、タイレノールや小児用バファリンチュアブルなどがあります。

ドラッグストアで購入できる中耳炎の薬にはどのようなものがありますか?

解熱鎮痛薬や塗り薬、漢方薬などがあります。いずれも抗生物質は含まれていません。

まとめ

中耳炎の治療には抗生物質がよく使用されます。しかし、抗生物質は市販では販売されていません。

市販薬には、痛みを一時的に取る解熱鎮痛薬、殺菌成分や局所麻酔成分が含まれている液体タイプの薬、排膿を促す漢方薬などがあります。

中耳炎にはさまざまな種類があり、症状に応じた治療が必要になりますので、症状が出た場合は早めに耳鼻科を受診しましょう。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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