つわりの吐き気止めに使える市販薬はある?ピーク時の過ごし方や対策法を紹介

2025/04/03

つわりがひどくて日常生活もままならず、妊婦生活がつらいとしか思えない方もいるのではないでしょうか。

1日に何度も嘔吐したり、吐き気が24時間止まらず苦しい思いをしたりしている方もいるかと思います。

赤ちゃんが成長している証拠とはいえ、つわりはつらいものです。あまりにつわりがつらすぎて、産婦人科に行く体力すらない方もいるでしょう。

そのようなとき、市販薬で少しでもつわりの対策ができたら嬉しいですよね。

今回は、つわりの吐き気止めに使える市販薬を4つ紹介します。つわりピーク中の過ごし方も紹介しているので、参考にしていただけると幸いです。

いわゆる「吐き気止め」は市販されていない

残念ながら、医療機関で処方されるような吐き気止めは市販薬にはありません。吐き気止めとして良く使われているプリンペランは、ドパミンD2受容体を遮断して吐き気を抑える薬です。

このような作用をもつ薬は医療用でしか扱いがなく、現在は市販での購入はできません。しかし、つわりの対処が市販薬でまったくできないわけではないのでご安心ください。

つわりの症状を抑える効果が期待できる市販の漢方薬

市販薬でつわりの症状を抑える効果が期待できるものには、漢方薬があります。

日本医療データベースを用いて121,287名の女性を対象に行われた研究では、これから紹介する小半夏加茯苓湯や半夏厚朴湯、当帰芍薬散を使用することで妊娠悪阻による予定外の入院をする母親の割合を大きく減らせたとの結果が出ています。

小半夏加茯苓湯

小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)は、つわりに効果があることで広く知られている漢方薬です。市販では三和生薬株式会社の「サンワ小半夏加茯苓湯エキス細粒」が販売されています。

しかし、こちらの漢方薬は、薬局やドラッグストアでの取り扱いが非常に少ないことがデメリットです。取扱店舗を探すよりも、産婦人科を受診して処方してもらったほうが早いこともあるでしょう。

配合生薬 ●小半夏加茯苓湯水製エキス
●ハンゲ
●ショウキョウ
●ブクリョウ
適応症 体力に関わらず使用でき、悪心があり、ときに嘔吐するものの次の諸症: 
つわり、嘔吐、悪心、胃炎
用法用量 15歳以上:1日3回、1回1包を食前または食間に服用する。
公式サイト:小半夏加茯苓湯

半夏厚朴湯

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)は、5種類の生薬からなる漢方薬です。不安を抑えるために使用される場合もありますが、つわりの症状にも効果が期待できることがわかっています。

市販でも比較的手に入りやすい薬です。特に不安感や精神症状があり、つわりの症状に困っている方に向いています。

配合生薬 ●ハンゲ
●ブクリョウ
●コウボク
●ソヨウ
●ショウキョウ
適応症 体力中等度をめやすとして、気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症:
不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、のどのつかえ感
用法用量 15歳以上:1日3回、1回4錠を食前または食間に服用する。
公式サイト:半夏厚朴湯

人参湯

胃腸が虚弱で体力が低下している方向けの漢方薬です。別名、理中丸(りちゅうがん)とも呼ばれています。理中とは、衰弱した胃腸機能に効果があるという意味です。

胃腸の機能を整え、冷えた体を温めて症状を改善する効果が期待できます。

配合生薬 ●ニンジン
●ビャクジュツ
●カンゾウ
●カンキョウ
適応症 体力虚弱で、疲れやすくて手足などが冷えやすいものの次の諸症:
胃腸虚弱、下痢、嘔吐、胃痛、腹痛、急・慢性胃炎
用法用量 15歳以上:1日3回、1回1包を食前または食間に服用する。
公式サイト:人参湯

当帰芍薬散

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、女性によく使われる漢方薬の一つです。つわりの症状の他に、月経痛や更年期障害、めまいやむくみなどの症状にも用いられます。妊娠中のつわり症状に使えるだけでなく、産後の不調にも使えることが特徴です。

配合生薬 ●トウキ末
●センキュウ末
●シャクヤク末
●ブクリョウ末
●ソウジュツ末
●タクシャ末
適応症 体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの次の諸症:
月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り
用法用量 15歳以上:1日3回、1回4錠を食前または食間に服用する。
公式サイト:当帰芍薬散

つわりはいつから?ピークはいつ終わる?

妊娠したばかりの方、妊娠する予定がある方にとってつわりがいつから始まるのかはとても気になるところでしょう。また、現在つわりと戦っている方にとっては、ピークがいつ過ぎるのか知りたいと思っている方も多いはずです。

早い方では妊娠4週からつわりが始まる

つわりは、妊娠5~6週目頃から始まることが多いとされています。しかし、早い方では妊娠4週目から始まることもあるため、個人差が大きいといえるでしょう。

ちなみに、妊娠4週目とは本来の生理予定日のことです。妊娠週数は、最終月経の開始日を0週0日目として数えます。

一般的なつわりのピークは妊娠8~12週頃

つわりのピークは、妊娠8~12週目頃になる方が多いといわれています。つわりの原因の一つだと考えられている絨毛性ゴナドトロピンの分泌量が、ちょうどこの頃にピークに達するためです。

つわりのピーク中の過ごし方

つわりのピーク中は、1分1秒が過ぎるのが遅く、1日がとても長く感じるかもしれません。「もう嫌だ」と、涙を流しながら生活している妊婦さんもいるでしょう。

つわりのピークを越えれば少しずつ楽になります。ここでは、ピーク時の過ごし方を紹介しましょう。

楽な姿勢で過ごす

横になっている方が楽という方もいれば、座っている方が吐き気が楽になるという方もいます。つわりの症状が楽になる姿勢や体勢を見つけて、できるだけ無理せず過ごしましょう。

無理して食事を摂らない

「栄養を摂らないと赤ちゃんの成長に影響する」といって、無理に食事を摂っている方もいるのではないでしょうか。実は、妊娠初期の赤ちゃんは卵黄嚢(らんおうのう)と呼ばれる器官から栄養を補給しています。そのため、無理してまで食事を摂る必要はありません。

しかし、食事が摂れない期間が続くと妊婦さんの体力が落ちてしまうため、「食べられるときに食べられる量を食べる」というスタンスで過ごすとよいでしょう。

締め付け感が少ない衣類を着用する

服やインナーの締め付けが原因で吐き気が悪化しているケースもあります。締めつけ感の少ない衣類に変えるとつわりが楽になることもあるので試してみてください。

つわりでつらいときに産婦人科を受診しても良いの?

つわりがつらいときは、遠慮せず産婦人科で相談しましょう。産婦人科を受診すると、吐き気止めを処方してくれたり、点滴をしてもらえたりする場合があります。

吐き気止めのプリンペランを処方してもらえることがある

妊娠中の吐き気止めとしてよく処方されるのが、プリンペランという吐き気止めです。こちらは市販では扱いがなく、医療機関で処方してもらう必要があります。

お守り代わりに持って過ごしている妊婦さんも多いので、一度相談してみてください。

点滴をしてもらうと脱水症状が改善されて体が楽になることがある

食事や水分が摂れていない状態が続いている場合は、点滴をしてもらえることもあります。水分と一緒に吐き気止めや、つわりの緩和に効果があるといわれているビタミンB6を一緒に入れてくれる産婦人科もあります。

脱水症状が原因で吐き気が出る場合もあるので、食事や水分がまともに摂れない状態の方は点滴をしてもらえないか相談してみるとよいでしょう。

つわりでこのような症状が見られたらかかりつけの産婦人科を受診しよう

つわり中に以下のような症状が見られた場合は、早めにかかりつけの産婦人科を受診しましょう。

  • 水分がまったく摂れない
  • 嘔吐しすぎて食道炎を起こしている(水を飲むとしみる)
  • 脱水症状を起こしている

まとめ

つわりは、妊娠した方の多くが経験するものです。しかし、症状があまりにつらく病的に衰弱してしまう妊婦さんもいます。つわりがつらいときは産婦人科で相談するのが一番ですが、市販の漢方薬を試してみるのもよいでしょう。

ただし、漢方薬には独特の味があるので、妊娠中は受け付けない方も多いかもしれません。そのようなときは、やはり産婦人科で相談するのが一番安心です。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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