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アルコール離脱症状のある患者さんへの看護

アルコール離脱症状のある患者さんへの看護

2023.01.12

ごく身近な存在であるアルコール。

アルコールには

  • ストレス発散
  • 疲労回復
  • リラックス効果

などがあり、飲み過ぎは体に悪影響と分かっていても一時の快感を求めて依存してしまう人もいます。

医療現場では、アルコール依存症で入院してきた患者さんの「離脱症状」に悩まされることが多々あります。

そこで今回は、アルコール離脱症状と患者さんとの関わりについてご紹介します。

《アルコール離脱症状とは》

アルコール離脱症状とは、アルコール依存症の人がアルコール摂取を急に止めることで中枢神経の活動が亢進して生じる病的な症状のことです。

症状としては

  • 発汗や動悸
  • 強い不眠
  • イライラや神経過敏症
  • せん妄や幻覚

などがあります。

また、アルコール依存症の人は離脱症状が出てくるのを押さえるためにさらにお酒を飲んでしまうという負のスパイラルに陥るのです。

《アルコール離脱症状のある患者さんとの関わり》

アルコール離脱症状で特に大変なのがせん妄や幻覚です。

何もいない天井やカーテンを指さして「虫が這っている」と言ってみたり、
ひたすら誰かに向かって独り言を話してみたり、
裸になってベッドの上に立ち上がってみたり・・・。

私たちには何も見えていなくても、患者さんには本当に存在しているように感じるため
「虫はいないですよ」などと言っても患者さんの不快な気持ちは拭えないです。

辻褄の合わないことを話し始めたり、反応が乏しかったり、、。
「何か違う」と感じたらせん妄の前兆である可能性が高いです。

ここからは、実際に病院で行っている対応をご紹介します。

薬剤で落ち着かせる

せん妄は夕方から見られることが多いです。

夕方にはスタッフの人数が少なく、消灯後は他の患者さんにも影響してしまうため早めに対処します。

興奮や幻覚が強くなる前に「抗不安薬」や「睡眠薬」を投与し行動を抑制する必要があります。

薬剤の中でよく使用されるのはベンゾジアゼピン系という薬剤です。
脳内のベンゾジアゼピン受容体という所を刺激して興奮を抑え眠気を起こす作用があります。

せん妄症状が出現する前兆や、せん妄症状が出現して早期に薬剤投与できていれば、症状を和らげることができ患者さんも苦しまずにすみます。

もし、投与後にせん妄状態が改善しない場合は薬剤を増量して対応します。

環境を整える

薬剤調整と同時に、環境調整を行います。

せん妄や幻覚で、あるはずのないものが見えることもありますが、
病室にあるものが刺激となり入眠できないこともあります。

「あれはなんですか?」とテレビの電源の灯りを指さして頑張って消そうとしていたり、
携帯電話の光が刺激となり夜中も頻回に座っては携帯を開いてみたり、、
刺激があると薬剤を使用しても入眠できないのです。

対応としては物品が見えないように片付ける、灯りを紙で覆って隠す、個室であれば早めに消灯して刺激を少なくするなどの環境整備を行います。

体動センサーで対応する

薬剤調整してもせん妄や幻覚が起こり行動抑制できないこともあります。

その時は、ベッドに体動センサーを設置し動きを感知できるようにします。

体動センサーを使用するとベッドから起き上がったタイミングや、ベッドから立ち上がったタイミングでナースコールが作動します。

せん妄状態のまま行動すると興奮状態であり危険なため、その都度患者さんの元に行ってベッドに戻り入眠できるように促します。

ひたすら見守る

上記の3つを試しても興奮状態が落ち着かない時はひたすら見守るしかありません。

薬剤投与し、環境を整備し、センサーで対応していてもなんども1人で出歩いてしまう。

そのような時は、1人で病室から出たらどこに行ってしまったか分からなくなりますし、患者さんも自分で部屋に帰ってくることができません。

実際に、自宅で飼っているペットを探し徘徊する患者さんもいらっしゃいました。
「チャイはどこだ、チャイはどこだ」と消灯して真っ暗な廊下をひたすら歩き回るのです。

隣の病棟まで行き、それでもチャイがいないと分かると「下にいるはずだ」と1階の外来まで探しに行くこともありました。

ひたすら見守るのは大変ですが、患者さんの気が済むまで一緒に周り
「チャイちゃんはいないみたいですね。ここは寒いのでお部屋に戻りましょう」
などと声をかけると病室に戻ってくださるのです。

《まとめ》

今回は身近な存在であるアルコールがもたらす、離脱症状についてお伝えしました。

なんで依存症になるほど飲酒してしまうのか、と理解しがたい時もありますが患者さんはもっと苦しんでいるかもしれません。

患者さんを責めるのではなくて起きてしまった症状を、様々な方法で改善させていく必要があるのです。

用法用量を守れば健康にいいお酒も、飲みすぎると様々な臓器を傷害し周囲の大切な人を傷つける原因にもなってしまいます。

適度な飲酒で生活を豊かにしていきましょう。

この記事のライター

まゆ

はじめまして。 消化器内科で病棟看護師として働いているまゆと申します。 看護師3年目となり、病院以外の場所で社会貢献できるような発信をしていきたいと思い執筆を始めました。 皆様に看護師のことを知って頂いたり、医療に興味を持っていただけるような記事を作成していきたいと思っております。 よろしくお願いいたします!

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