開業スケジュール

開業スケジュール

まずは、開業までのスケジュールを立てていきましょう。
開業までには、設計事務所や建築業者、医療機器メーカー、医療機器卸業者、税理士、社労士、金融機関、広告代理店など、たくさんの業者のサポートを受けることになります。ステップ毎に各専門業者と相談しながら一つ一つ進めていきましょう。

一般的な開業スケジュール(※開業時期を2022年5月と仮定した場合)

※画像をクリックするとPDFが開きます。

開業にあたり、概ね12か月程度の準備期間で大きく5つのステップを踏んでいくことになります。
開業ギリギリまで勤務医として働く先生もいらっしゃいますが、開業1~2か月前に退職し職員研修や院内の準備をしていく先生が多いです。各ステップの詳細は次回以降のコラムでお話しますが、まずは項目ごとに簡単に説明を加えます。

1.基本構想策定

①目的・理念の明確化

経営理念とは、クリニックの「使命」「目的」「方向性」などのことで、言葉で明確に表現されたものです。
クリニック経営においては、先生とスタッフが同じ理念を共有しておく必要があります。また、経営理念はスタッフの行動する際の指針となるので、患者に対しての対応で判断に迷った時にも、理念に基づいて判断するようにすれば適切に対処できます。患者の安心感や満足度を向上させるためには、適正な理念の構築は非常に重要です。
先生は何のために開業しようと思いましたか?先生自身の経験や実績を洗い出して、クリニックとして患者にアピールできる要素を考えながら経営理念を固めていきましょう。時間がかかっても構いません。後ほど触れる事業計画書に経営理念が加わると計画自体が引き締まって見えます。初めの一歩です。がんばってください。


②診療圏調査

開業物件を決めるための判断材料として、診療圏調査を行います。
開業候補地の診療圏を設定して、その地域の人口に受療率を掛けることでその診療圏内で推定される患者数が算出されます。そして診療圏内で競合する医療機関を調査し、シェア率を検討し、自院に来院してくれる患者数を予測します。最近では、診療圏調査のシステムを医療機器メーカーや医療機器卸業者が保有しているので、お願いすれば無料で調査してくれる場合もあります。


③事業計画書策定

「収入」と「支出」を明確に把握することで、理想とするクリニックを開業するためにはどの程度の資金が必要になるのかを明らかにします。
そして、どのくらいの患者数が来院すれば経営が安定するのか(いわゆる採算ライン)を知っておく必要があります。また、ここで作成した事業計画書は金融機関等から資金調達を行う場合の資料に使用します。初期投資が過大でないか、運転資金が少なくないか、数年後の資金が確保されているか等に注意が必要です。

2.設計施工

建物を建てる場合は設計と施工、テナントを借りる場合は内装工事を行います。
医療機関の設計に詳しい設計事務所は、先生やスタッフの動線、患者の動線を把握しており希望に応える能力を持っていますので、医療機関の設計に携わった事のある設計事務所が良いと思います。

3.資金調達

事業計画書で算出した初期投資額をどのようにして調達するか検討します。
自己資金を除いた投資額は、金融機関から資金を借りるか、機器をリースすることになります。利率や返済期間等の条件が各金融機関やリース業者によって違うので、少なくとも2社以上の提案を受けることをお勧めします。
資金調達に合わせて考えておきたいのが、リスク管理です。万が一、先生に何か起こった時にご家族やスタッフを守るためにも融資に付帯する団体信用生命保険や民間の生命保険の検討も同時に行ってください。

4.スタッフ採用・広告

スタッフの募集活動は一般的に開業予定日の3~4ヶ月程前から始め、2ヶ月前くらいに決まっていると良いでしょう。
募集の手段としては、ハローワーク、新聞チラシ、求人サイト、人材紹介会社を利用する方法や、現勤務先の病院から仲の良い医療従事者を誘うという方法などもあります。ただし、医療従事者を誘う場合は、現勤務先との関係に気を配る必要があります。また、給与等の待遇面や他の採用者との人間関係をコントロールできる人か、よく考えてください。一昔前は応募がたくさんあった医療業界も、最近は求人状況が思わしくない医療機関が増えてきました。応募が少ないことを想定し、少し早めに動き出す方が良いと思います。

応募者が集まってくれば次に採用面接を行います。先生の経営理念や診療方針に当てはまる方を探しましょう。能力や経験だけではなく、コミュニケーション能力も考慮しながら選考します。先生や奥様だけで面接を行うのが心配な場合には、第三者(社労士やコンサルタント)に同席してもらってください。第三者が同席することで、労働条件などの質問対応や聞きにくい質問をしてもらうなどの利点があります。また、社労士やコンサルタントは、履歴書など応募書類の整理や面接日程の調整、当日の面接サポートなどを行ってもらえることもあるので是非お願いしてみてください。

5.届出

開業地を管轄してる保健所や厚生局に開業に必要な各種手続き、届出を行います。特に保健所とは事前相談なども含めて足を運ぶ機会が多くなります。

保健所 診療所開設届、X線装置設置届、麻薬施用者免許申請書など
厚生局 保険医療機関指定申請書、施設基準等に係る届出書など
その他 被爆者一般疾病医療機関指定申請書、生活保護指定医療機関指定申請書、労災保険指定医療機関指定申請書など

その他にも税務署や労務関連の届出や手続きがあります。各専門業者を活用し漏れがないように注意してください。

この記事の執筆・監修

ユアーズブレーン

ユアーズブレーンは広島市中区に事務所を構えるコンサルティング会社です。広島県内はもとより中国・四国エリアを中心に、大学病院から地域密着型の病院やクリニックに至るまで、それぞれの規模や特性に合ったかたちで医療機関の皆様がより充実した医療を提供できるよう、各種支援コンサルティングを提供しています。病院・クリニックにおいて、開業・経営・事業承継などでお困りの際はお気軽にご相談ください。

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