2021/09/13

今回は誰でもが知っているようで、詳しくは知らない『乳酸菌』について書いてみたいと思います。

つい最近、薬品会社のWEB研修会でビフィズス菌を使用した整腸剤の話を聞きました。腸内には100兆個以上の細菌が生息しているそうです。これがいわゆる細菌叢(腸内フローラ)と言い、ビフィズス菌のような体に有用な菌やウェルシュ菌のような有害な菌と、腸内環境によってどちらにもなる大腸菌のような日和見(ひよりみ)菌など100種類もの菌がびっしりと生息しています。これらの細菌は2:1:7の割合が理想的だそうです。

人間が生まれた直後から腸内細菌は住み続け、年齢によっても体調によってもバランスが変わってきます。それは健康な人ほど有用な菌が多く、健康を害している人の菌は有害な菌が多くなっているようです。

細菌叢(腸内フローラ)イメージ

回腸から大腸にかけて、びっしりと細菌が繁殖しています。
乳酸菌は乳酸を作る微生物の総称で、大きくは球菌と桿菌に分類されます。年を取ると悪玉菌が増え、それらが作り出す有害物質によって、腸の老化が一層進みます。
しかし乳酸菌を補うことで悪玉菌は減り、腸内菌のバランスが改善されます。

乳酸菌とは

乳酸菌は糖質を分解して乳酸を作る細菌の総称で、ビフィズス菌も乳酸菌の一種で、ヨーグルトなど発酵食品の製造に利用されています。

腸内細菌として、大腸で難消化性の糖質を分解して、短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸、乳酸など)、ビタミン(ビタミンK、葉酸、ビオチンなど)、アミノ酸(リジンなど)を作り、人の栄養を助けています。これらの生きた乳酸菌食品は、わが国が世界に先駆けて開発した健康食品です。

広島でもチチヤス乳業が大正6年に、日本で初めて病者用に栄養食品としてヨーグルトを発売しましたが、とても高価なものだったようです。私が初めてヨーグルトを食べたのは今から、45年位前のことです。近所の方が「体に良いというので買ってみたが、どうも傷んでいるようなので見てほしい」と持ってこられました。「牛乳を発酵させているので、こんな味だと思いますが」と説明しても、「良かったら食べてください」と置いていかれたのは、確か3個入りのチチヤスのヨーグルトだったと思います。

近年、マスコミで盛んに宣伝するので乳製品ばかりが目立っていますが、実は太古の昔から、人間と共生して生きてきた細菌です。しかし現代では、食物の保存期間を長くしたり、見栄えを良くしたり、加熱殺菌処理をすることで有益な菌である乳酸菌も除かれてしまいます。例えば漬物の乳酸菌が体に良いといわれますが、乳酸菌が上手く発酵していないぬか床の中に野菜を入れても腐ってしまいます。おいしい漬物は乳酸菌が大量に繁殖して、乳酸を出し続けているため、他の雑菌が繁殖できなくなっています。

極端な言い方をすると、人の腸内でも、善玉菌である乳酸菌が多く棲みつくことで腸の働きが活発になり快便となることで、体全体が健康に保たれます。逆に悪玉菌が増えると、腸内では腐敗が進み、有害物質が作られ、体全体に運ばれることになります。その結果、体の老化を進め、様々な病気を招きやすくなります。

乳酸菌の影響

また、近年になって免疫に乳酸菌が良い影響を与えていることが分かってきています。免疫は、様々な要因によって影響を受けます。中でも、生体防御の最前線で働くNK細胞の活性は、過度のストレスや加齢、不規則な生活などの影響を受けやすく、20代をピークに減少してきます。そこで、高齢者に3週間、ラクトバチルス カゼイ シロタ株を400億個含む乳酸菌飲料を1日1本飲用してもらうという研究結果では、飲まない人と比較して、明らかにNK細胞の活性が上昇していたそうです。このように乳酸菌の中には、整腸作用のみならず、免疫機能を調整するものがあり、全身の免疫活性化は腸の免疫反応を介しているということが分かってきています。

ビフィズス菌などの乳酸菌は、大腸で、水溶性食物繊維、レジスタントでんぷん、難消化性オリゴ糖などの難消化性食品成分を利用して、短鎖脂肪酸を作ります。この短鎖脂肪酸は、腸内を酸性にして有害菌の増殖を防ぎ、腸内細菌のバランスを良くします。このような、有用な腸内細菌の栄養源となる難消化性の食品成分を、プレバイオティクスといいます。一方、生菌を使った発酵乳などの製品をプロバイオティクスといいます。

主なプロバイオティクスの種類とはたらき

種類 含有食品 保健的効果
ビフィズス菌 ヨーグルト
乳酸菌飲料
腸内細菌叢のバランスを改善、整腸作用に優れ、便通を整える。
免疫力を強化し、感染症を予防、がん予防などの効果を発揮する。
Kw乳酸菌 ヨーグルト
乳酸菌飲料
免疫力を強化し、感染症を予防する。
花粉症やアトピー性疾患などのアレルギー症状を抑える。
Lg21乳酸菌 ヨーグルト
乳酸菌飲料
酸に強く胃内で作用を発揮。ピロリ菌から胃を守る。
腸内細菌叢のバランスを改善し、整腸作用を発揮する。
ラブレ菌 乳酸菌飲料
すぐき漬け
免疫力を向上させ、がん予防などに効果を発揮する。
腸内環境を改善、コレステロール低下作用がある。
ケフィア ケフィアの種菌 免疫力を強化し、がん細胞の増殖を抑制する。
胃腸機能を改善し、便秘を抑制する。
ビール酵母 ビール酵母粉末、ビール酵母を含むビール、
ビタミンやミネラルを豊富に含むマルチサプリメントとして利用される。
胃腸障害や便秘の改善、糖尿病や肝臓病の改善。
ブルガリア菌 ヨーグルト
乳酸菌飲料
ヨーグルトの中のブルガリア菌は人の腸内には住みつけない。
腸内細菌叢由来の乳酸桿菌やビフィズス菌を使った発酵乳が普及している。
ブルガリア菌はおいしさを加えるためにこれらの腸内細菌叢由来の乳酸菌と併用して利用されている。
死菌から遊離された菌体成分が吸収されて、
免疫機能を刺激して感染やがんに対する抵抗力を高めることが期待される。

最後に

以上のように、体に有益な生菌を使った発酵乳などの食品(プロバイオティクス)を摂取することで、便通のみならず、免疫効果まで驚くほどの保健効果が立証されてきています。
乳酸菌ひとつをとってもとても難しくて3000文字くらいでまとめられるものではありませんでした。でもどうやら保健的効果があるらしいと言うことは分かっていただけたでしょう。上手に利用して健康生活に役立てたいものです。

今回は乳酸菌をいろいろ調べていて、免疫機能についてとても興味を持ちました。そこで、次回は免疫を高める食品の、植物が持つ天然成分『ファイトケミカル』について書いてみたいと思います。

コラムニスト

管理栄養士  伊藤 教子 

長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。

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