2021/10/11

身体の作りの要である「胃腸」は、「免疫力」の要でもあります。

これからの時期、例年はインフルエンザ対策で乳酸菌商品が普段以上に店頭に並びます。乳酸菌はプロバイオティクス(ヒトに有益な作用をもたらす微生物(有用菌))であり、良い菌をとることで腸内環境を良好に整え、体本来の力を高める効果があります。その一つの効果に「免疫力アップ」があります。

腸内環境が免疫力を左右する。

腸内には約7割の免疫細胞が存在しており、腸内環境の状態により免疫力も左右されます。昨今、「腸活」や「腸内フローラ」などが注目される理由はこの免疫力も関係しているからです。

腸内には腸内細菌が100種類から1000種類も住み着いていて、その数おおよそ1000兆個と言われています。腸内細菌は悪玉菌、善玉菌、日和見菌と3つの菌に分類されていて、そのバランスは加齢に伴い変化していきます。腸内細菌は同じ種類の菌が群をなし、叢(そう)を作っているように見えることから「腸内フローラ」とよばれてきました。善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7のバランスで存在しており、日和見菌は悪いほうにも善いほうにもどっちにでもなれる菌であり、良い働きをしてもらうために腸内環境を良好に保つことが大切です。

乳酸菌や発酵食品などのプロバイオティクスの食品(食材)は、腸内環境を良くする菌ですがこの良い菌を1回摂ると良いわけではありません。すでに自分の菌が住んでいるので外の菌は定着しにくく、有用な菌を継続的に摂ることが大切と言われています。

また、プレバイオティクスと呼ばれる食物繊維やオリゴ糖を摂ることで腸内細菌のエサになり、善玉菌の働きをサポートし自分の菌を元気に育てます。

そして、どちらの食材も組み合わせて摂りましょうというのが「シンバイオティクス」と言います。具沢山味噌汁は発酵食品の味噌、食物繊維が豊富な野菜の一皿でシンバイオティクスが揃います。

また、スポーツシーンでは、スポーツ飲料に乳酸菌を含む商品もここ数年で増えており、電解質やエネルギー補給と共に、乳酸菌を摂る選手も増えているように感じます。実際に、私の関わるチームでも活用することがあります。一般的に乳酸菌や発酵食品を摂ることを菌活といいますが「菌トレ」と呼ぶと選手も好むかもしれません。

善玉菌を元気にすることで、免疫力向上だけでなく、病気の予防やメンタルの安定、代謝を助ける働きなどのメリットがあります。腸内には免疫細胞だけでなく、神経細胞が多数存在していることから、第2の脳とも呼ばれており、メンタル(脳機能)にも関係しています。「腸」を「超」大切にすることは、自分の心も体も大切にすることに繋がるのです。

腸が元気に働くには「消化」が大事

腸が元気に働くためには胃が元気に働かなくてはいけません。消化器官は口から肛門まで1本の管で繋がって連動しています。胃で食べ物が消化されなければ、腸での吸収がうまくいかず負担がかかってしまいます。腸の機能が下がれば腸内環境も良好に保てず、免疫力にも関わります。

だからこそ、胃の調子を高める食べ方も意識するとより良い腸内環境を作ることができます。そのためにまず咀嚼、噛んで食べることを意識することが大切です。噛むことで唾液の分泌が促され、消化酵素が食べ物と絡みます。口腔内での消化が上手くいっていなければ胃の消化仕事が重労働になってしまうので、噛むことは胃のためにも、腸のためにも私たちが意識すれば変えられることです。

噛む回数を意識する食べ方もありますが、食材を大きく切ったり、固めに仕上げたり、洋食よりも和食の回数を多くしたりすることも咀嚼を促す食べ方です。アスリートは、一般の人と比べて消化吸収が効率よくできないため、胃腸機能の不調が起きやすいです。そのため、腸内環境を整えるサプリメントや消化を助けるサプリメントを時期や体調に応じて活用している選手もいます。腸だけでなく胃での「消化」も意識を持てるとより良いコンディション作りに繋がります。

胃腸の調子を確認しよう!

では、腸内環境がどんな状態か、皆さんも気になることだと思います。消化器系の最終ゴールから出てくる「便」の状態で、確認することができます。皆さんは毎日のお通じを確認していますか?こちらのコラム(増量の要は「胃腸力」!お米の力はあなたの食べ方次第!)でお話していますが、理想的な便は「バナナうんち」で、便の色や回数、臭い、タイミング、状態などがポイントです。

便の硬さと形状の目安として活用されているものに、図に示した「ブリストルスケール」という国際的に使用されている基準があります。便の状態で消化吸収や食事内容、腸内環境もチェックできることから便をチェックすることで、体調管理をするアプリもあり、「ウンログ」というアプリは活用しやすく、ポップでわかりやすいのでお勧めです。

出典 ブリストルスケール

出典:ウンログ株式会社HPより うんち記録アプリ「ウンログ」

朝食こそ具沢山味噌汁を食べよう!

日々の食事の中で発酵食品や野菜をしっかり摂る意識をもち、継続していくことが腸内環境を整えることになりますが、中でも朝食の「具沢山の味噌汁」をおすすめしています。

まず、具沢山味噌汁はどんな食材でも合い、野菜類以外にも卵や肉、豆腐などのたんぱく源を摂ることができます。忙しい朝に、バランスのいい食事を準備することが手間だと感じる方も多いですが、具沢山味噌汁は1皿、1鍋で野菜もおかずも摂れる手間なく栄養リッチな料理です。味噌汁の相方となる、ごはん(お米)にも食物繊維が含まれているので、より相乗効果が得られます。

また、体温が1℃あがると、免疫力は約30%あがると言われています。朝食の役割の一つに「体温の上昇」があります。寝ている間は体温が低くなっているので、朝食を食べることにより体温をあげ、1日の活動をスタートさせるスイッチとなります。体の中は約37℃前後に保たれているので、温かい食事は内側から体を温め、機能を高めていくことに繋がります。

このような効果を考えると、「ごはんと具沢山味噌汁」を毎朝継続していくことが、日々の食事の中で免疫力を高めるために意識できることではないでしょうか。

様々な乳酸菌商品や予防効果を謳う商品を目にする機会が増えますが、毎日の食事でまずできることを見直してみてくださいね。

コラムニスト

管理栄養士・公認スポーツ栄養士  馬明 真梨子 

ソフトボール部だった10代の頃からスポーツ傷害や体重管理、食事に悩まされた経験からNSCA認定パーソナルトレーナーと管理栄養士の資格を取得。
大学卒業後、大手フィットネスクラブ、パーソナルトレーニングジムでの運動・栄養指導に携わる。その後、学生から実業団アスリートの寮食献立作成や選手サポート、セミナー講師などの業務に従事。さらに専門的な知識やスキルを習得するためスポーツ栄養の専門家である公認スポーツ栄養士の資格を取得し、これまで700名以上の指導に携わる。
現在、「広島のスポーツを食で盛り上げる」をモットーに、スポーツ栄養サポート・普及教育活動・食環境整備などに力を入れ、セミナー講師、チームスタッフ、企業アドバイザー、専門学校非常勤講師など各分野で選手や広島の方を食で支える取り組みを行っている。

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