ビール腹を解消するためにはどうすれば良いのでしょうか?
暑い夏が過ぎたかと思うとあっという間に、今度は冷たい風の吹く季節到来です。コロナ対策のせいで通年より飲み会も減ったことでしょう。しかし、γ-GTP(グルタミントランスペプチターゼ)の価の高い人が気になっています。これは肝臓の解毒作用に関係している酵素で、肝疾患や胆道閉塞などで上昇し、夜遅い食事でも上がりますが、一般的には飲酒によって上昇するため飲酒量の目安になります。どうも出かけられない分『家飲み』が増えている人も多いようです。
ビール腹については前回で述べましたが、この夏お腹がビール樽のように膨れた男の人たちが目について
「これはまずいんじゃないの」と心配になったのがビール腹について、書くきっかけになりました。
肥満のうちでも、お腹に脂肪がたまり腹囲が大きくなる『内臓脂肪型肥満』が、高血圧や糖尿病、脂質異常症などをひきおこしやすくし、これら内臓肥満と高血圧や糖尿病、脂質異常症が重複し、その数が多くなるほど、動脈硬化を進行させる危険が高まるというのがメタボリックシンドロームの考え方です。
2008年にメタボ検診が始まった時、メタボ、メタボとかわいらしいものでも呼ぶかのように一世を風靡しましたがコロナ禍で健診率も低下しているようです。広島県では健診の受診率が40%程度と低いようですし、メタボと診断されても指導の受診率は20%程度と低いようです。
女性は妊娠して、胎児を守るために内臓脂肪より皮下脂肪が増えるように作られています。しかし女性も更年期を過ぎると、今まで女性ホルモンでカバーされていた色々な特典が少なくなって内臓脂肪がつきやすくなり、お腹にもポッコリと脂肪がついてきます。外見だけの問題ではありません。例え素敵にカバーできても内臓脂肪を増やしてしまうことは、生活習慣病をすすめることになります。
なぜ内臓脂肪が良くないのでしょうか?
その結果、脂質異常症、糖尿病、高血圧、さらにはこれらが重なったメタボリックシンドロームなどを起こしやすくなります。つまり、内臓脂肪型肥満はさまざまな生活習慣病の元凶ということができます。
ビール腹は単なる肥満だけではなく、不健康な生活習慣が招いた状況であり、このままに放置することは脳卒中や心疾患など死や、日常生活に支障をきたすような状況に直結した疾患への入り口となります。
お腹の内臓脂肪を増やさないためには、江戸時代の本草学者であり儒学者である貝原益軒先生が『養生訓』の中で飲食は生命を養う養分であると述べ、健康で長生きをしたいのであれば、飲食はひかえめにと言っています。その中身を少し覗いてみると、
私は栄養指導をする時、必ず20歳代の体重を聞いたり、太っている方にはいつごろから体重が増えてきたかをお聞きすることにしています。そうすればなにか生活習慣が変わり始めたきっかけが見えてきます。そしてそれを思い出すことで、少しでも「痩せなければまずいぞ」と自らを奮い立たせることができます。
短期間で痩せたいと思うあまり日々の食事をおろそかにし、誤った方法でダイエットをしてはリバウンドを繰り返す方がいらっしゃいますが、誤ったダイエットは単純に体重が減ったり増えたりするだけでなく、そのたびに筋肉が減って皮下脂肪が増えるため、いわゆる「隠れ肥満」になります。
食事による正しいダイエット方法(食事内容の見直し)や、体を動かす習慣を身につけるなど、基本的なことから始めましょう。
摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、過剰なエネルギーは体内に蓄積されます。少し食べる量を見直してみましょう。足りないぐらいがちょうど良いのかもしれません。不足したエネルギーを補うために体脂肪が消費されやすくなります。そうして脂肪を減らし体重が減ることになります。少しづつ膨らんできたお腹ですから、まずは1ヶ月に1㎏~2㎏程度を目安に始めてみましょう。
食べる内容だけではなく、自分の生活習慣も合わせて見直してみましょう。
朝からしっかりたんぱく質をそろえたバランスの良い食事を心がけ、夕食は飲酒も含めて控えめに。
遅くても夕食は寝る2時間前には終えているようにしましょう。
また、ビール腹の人が「靴ひもを結ぶのもしんどい」と言っておられましたが、かなり運動不足になっていませんか? 運動はジムに入会しても実際に動かなければ効果はありません。まず、速足で歩くなど日常の中で毎日実行できそうなことから始めましょう。
結論を簡単にまとめてしまえば、貝原益軒先生の書かれたように食事というものは生命を繋ぐものであって
好きなものであるからと言って、度が過ぎないようにし、しっかり動くことが重要でしょう。できれば1日に30分くらい、歩けると良いのでしょう。
今年の冬は寒くなりそうなので、次回は風邪予防の食生活、風邪をひいたときの食事について書いてみたいと思います。
長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。
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