尿道狭窄
さまざまな原因で尿道粘膜が線維化し、尿道が狭くなったり閉塞したりする病気です。
男性の尿道は女性より長く、前立腺との繋ぎ目で尿道を絞める括約筋がある箇所の「膜様部」「球部」「振子部」と3つに分けられ、それぞれの個所で尿道狭窄が起こります
発症率は高齢になるほど高く、まれに女性でも症状が現れることがあります。
尿道狭窄の原因
尿道狭窄の原因は、大きく先天性のものと後天性のものに分けられ、更に後天性のものでは交通事故等による外傷性や感染、医原性等に分類されます。
医原性とは、治療で行った医療行為によって新たな病気を引き起こすことです。
外傷性の場合、ガードレールを跨ごうとして会陰部を強打する等をして、球部尿道が恥骨と挟まって潰れることで尿道が狭くなったり、交通事故等で骨盤を骨折し、膜様部尿道が前立腺から断裂したりすることで尿道が狭くなります。
医原性の場合、尿道の内にカテーテルや内視鏡を入れる手術で尿道内に傷が付き、硬くなることで狭くなります。
内視鏡による手術を繰り返すことで尿道内に傷がつき、悪化してしまうこともあり、尿道の全ての部位で発生する可能性があります。
他にも硬化性苔癬という皮膚疾患や、性感染症である淋菌性尿道炎が原因になる事があります。
尿道狭窄の症状
尿道狭窄の症状は、軽度の場合では症状は現れないこともありますが、主に尿の勢いが低下し、上手く排尿が出来なくなることが挙げられます。
症状が進むとポタポタとしか排尿できなくなったり、尿が出なくなったりし、更に症状が重くなると、尿路感染症等を起こす可能性があります。
尿路感染症とは、尿路に何らかの原因で細菌やウイルスが侵入して炎症を起こす病気です。
尿道狭窄の予防と治療
尿道狭窄の治療
尿道狭窄の治療は、狭窄が起きている部位や狭窄の長さ、狭窄の状態によって治療法が異なり、代表的な治療法の中に、バルーンやブジーによる「尿道拡張術」があります。
また、経尿道治療、尿道形成術、尿道端々吻合術、尿道再建等の方法があります。
経尿道治療
内視鏡を用いて狭い部位を内視鏡で見ながら切開する手術。
尿道に内視鏡が入らない場合には膀胱瘻を造設してから手術を行うこともあります。
手術で切開した部分は傷となり、再び尿道が狭くなることがあるため、手術後は定期的にブジーによる尿道拡張術が行われます。
尿道形成術
尿道の再建手術。
外傷等によって狭くなったり、断裂したり経尿道治療では治療できない狭窄の治療法です。
尿道端々吻合術
尿道の狭い部分を切除し、健康な尿道を繋ぎ合わせる手術です。
尿道再建
本来は尿道ではない頬の粘膜等の組織を材料とする治療法です。
尿道狭窄の予防
感染を防ぐには、性行為でコンドームを装着することや行為前後で股間部を清潔にしましょう。
外傷性の場合は、予防は難しいため、カテーテルを用いた手術後や、日常生活で股間部の打撲・すれで少しでも違和感を感じたら病院に行くことをおすすめします。
また、再発には漢方薬「柴苓湯」が有効という研究結果も出ています。
いとう腎・泌尿器科クリニック 院長伊藤 誠一
【経歴・資格・所属学会】
平成7年 鳥取大学医学部卒業
平成7年 岡山大学医学部泌尿器科研修医
平成8年 福山市民病院泌尿器科
平成8年 国立病院機構岩国医療センター泌尿器科
平成9年 倉敷成人病センター泌尿器科
平成11年 国家公務員共済組合連合会 呉共済病院泌尿器科
平成28年 いとう腎・泌尿器科クリニック開院
[資格]
日本泌尿器科学会専門医
日本泌尿器科学会指導医
腎移植学会専門医
臨床腎移植学会専門医
[学会]
日本泌尿器科学会
日本移植学会
臨床腎移植学会