メニエール病

メニエール病とは、日常生活に支障をきたすほど激しい回転性の眩暈・難聴・耳鳴り・耳閉感の4症状を繰り返す疾患です。内耳の水腫(水膨れのような状態)により症状が起こります。
内耳とは耳の最も内側の部分で、聴覚を司る蝸牛と体のバランスを司る三半規管がある場所です。
メニエール病は30から50歳代で発症しやすい病気です。男女差はあまりありませんが、どちらかといえば女性の方が発症しやすい傾向にあります。耳の詰まったような違和感などが前兆なく急に現れ、その後、眩暈を感じ発症することが多いです。
メニエール病の症状は、通常は片方の耳のみに症状が発現します。しかし、両方の耳に発症する事も多く、再発を繰り返していく事で聴力が徐々に低下していきます。

メニエール病の原因

メニエール病では内耳のリンパ液量が増加します。リンパ液による過剰な刺激が前庭神経を介して脳へ伝わることで発症します。前庭神経は平衡感覚を司る神経です。また、仕切りの役割をしているライスネル膜も圧迫されます。悪化すると、ライスネル膜が破れ、内外のリンパ液が混ざり合い耳鳴り・難聴を引き起こします。しかし、なぜ内耳のリンパ液量が増加するのかは分かっていません。血流不足、ウイルスの感染や免役の異常という説が出てはいますが、どの説も確定には至っていません。
また、ストレス等の自律神経の乱れや睡眠不足・疲労等生活習慣の乱れも発症に関与していると言われています。

メニエール病の症状

メニエール病の症状は回転性の眩暈、難聴や耳鳴り、耳閉感などです。
主症状である眩暈は、体のバランスを司る感覚が大きく関与しています。
体のバランスを司る感覚は大きく分けて以下の4つがあります。

  1. 前庭の三半規管から得る回転感覚
  2. 前庭の耳石器から得る直線加速度および重力
  3. 視覚
  4. 自己の関節の角度や筋肉の伸長などに対する深部知覚

メニエール病ではこのうち1の回転感覚が障害されることにより回転性の眩暈が現れます。この眩暈の持続時間は30分程度から数時間程度である事が多いと言われており、吐き気を伴う事もしばしばあります。さらに、原因なく突然起こる事、どのような体勢でも回転性の眩暈を感じる事もメニエール病の眩暈の特徴です。

メニエール病の特徴として、上記のような症状が再発しやすい事も挙げられます。症状が現れた後、一度は落ち着きますが、再発を重ねるたびに症状は悪化していきます。特に、聴力が顕著に悪化して行く事が多いです。これらの発作の感覚は週に1回程度の人もいれば年に数回までの人もおり様々です。

メニエール病の治療と予防

メニエール病の治療

基本的には服薬による治療です。治療では、眩暈を軽くする薬や毛細血管を拡張する事により内リンパ水腫を軽減する薬が用いられます。
眩暈を軽くする薬としては制吐剤や精神安定剤、脳循環改善剤なども用いられます。内リンパ水腫を改善する薬として用いられるのは利尿剤やステロイド剤です。

また、鼓室内注入法という鼓膜に穴をあけ鼓膜内に直接薬物を入れる方法もあります。抗生物質の溶液を経鼓膜に入れる事で意図的に障害を起こす治療です。意図的に障害を起こすことで、起こっていた悪い信号が脳に伝わりにくくなり、眩暈も軽減されます。

しかし、発作が頻繁に起こり日常生活に支障をきたしている場合や、難聴の進行が早い場合には手術が行われる事もあります。手術法は主に2つです。聴力のある場合には「内リンパ嚢開放術」と言う手術を行います。すでに聴力が低下している場合の手術は「内耳破壊術」です。

「内リンパ嚢開放術」とは内耳のリンパ液が溜まる部分を切開し、内リンパ液を排出します。
内リンパ嚢開放術の効果は永続的でありません。しかし、眩暈等による精神的負担を減らし、病気の悪化を防ぐ為に十分有効的な手段です。
「内耳破壊術」では今後も聴力の回復が見込めない場合に、症状の原因である内耳の構造そのものを破壊する手術です。
また、強い発作で吐き気が強く口からの服薬が困難な場合では、安静の上で眩暈止めの点滴を打ち、眩暈を軽減させます。
口からの服薬が可能であれば、眩暈止め・利尿剤を中心に抗不安薬・循環改善薬・ビタミン剤などを組み合わせて使っていきます。

メニエール病の予防

メニエール病にはストレス・睡眠不足・疲労も関与しています。その為、ストレスや疲労を蓄積させない生活が大切です。
ストレスを溜めないように解消する事も大切ですが、受けないように完璧主義な考え方を止める等、考え方を変えていく事も大切です。また疲労を溜めない為には規則正しい生活を送る事、ストレッチなど簡単な運動を習慣化する事も良いとされています。
更にカフェインを含む飲み物や騒音を避ける事、禁煙・禁酒、塩分を控えることも予防に良いとされています。こまめな水分補給も予防に有効とされますが、腎臓や心臓に疾患のある場合等では医師の指示に従いましょう。
また発作の初期に眩暈止め・抗不安薬を用いる事で大きな発作の予防になると言われており、早めに処置を行う事が望まれます。

この記事の監修

うした耳鼻咽喉科クリニック 院長片桐 佳明

地域の皆様に信頼していただけるクリニックを目指し平成30年10月に開院しました。
当院では患者さんの苦痛・不安をよく聞いて、病状や治療方法を丁寧に説明し、治療を進めていくことを大切にしています。
また、必要であれば近隣もしくはご希望の総合病院などにご紹介させていただきます。
めまい、いびき、睡眠時無呼吸、耳、鼻、のどに関するお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。

【経歴・資格・所属学会】

※経歴
平成18年3月
東京医科大学医学部医学科卒業
平成18年4月
県立広島病院
平成25年7月
広島大学医学部附属病院
平成27年6月
JA尾道総合病院
平成30年4月
堀病院
平成30年10月
うした耳鼻咽喉科クリニック開院

※資格
医学博士
日本耳鼻咽喉科学会 専門医
身体障害者福祉法指定医師
日本めまい平衡医学会 めまい相談医

※所属学会
日本耳鼻咽喉科学会
日本めまい平衡医学会

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