悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は血液がん(造血器腫瘍)の1つで、白血球の一種であるリンパ球ががん化したものです。リンパ球には、B細胞、T細胞、NK細胞などの種類があり、これらががん化して無制限に増殖することで発症します。主にリンパ節、脾臓および扁桃腺などのリンパ組織に発生しますが、リンパ組織以外に発生することも少なくありません。リンパ組織は全身にあるため、悪性リンパ腫は全身のどこの部位からも発生する可能性があります。わが国において患者数は年々増加傾向にあり、日本の成人では最も頻度の高い造血器腫瘍です。

原因

悪性リンパ腫はリンパ球に遺伝子異常が生じて起こりますが、その原因はほとんどわかっていません。ただし、ウイルスの感染などが一部のリンパ腫の原因になることが判明しています。成人T細胞性白血病リンパ腫はHTLV-1ウイルスの感染が原因となること、胃に発生するマルトリンパ腫はピロリ菌の感染がその発症に深く関わっていることなどがわかっています。

分類

悪性リンパ腫は多くの病型に細分類されています。それぞれの病型により、症状、治療内容、治療効果、予後などが異なるため、正確に診断する必要があります。
悪性リンパ腫は、まずホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分類されます。
ホジキンリンパ腫は、日本における悪性リンパ腫の5~10%に見られます。古典的ホジキンリンパ腫と結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫に大別されます。

ホジキンリンパ腫以外の悪性リンパ腫は全て非ホジキンリンパ腫に該当し、これらが全リンパ腫の90~95%を占めます。リンパ腫細胞の起源からB細胞性とT/NK細胞性の2つに大別され、さらに細かい病理組織型に分けられます(その数は70種類以上になります)。また、病理組織分類に加えて、病状の進行速度によって、低悪性度リンパ腫(年単位でゆっくり進行)、中悪性度リンパ腫(月単位で進行)、高悪性度リンパ腫(週単位で進行)の3つの悪性度に分類されます。

症状

リンパ節の腫大が最もよく認められる症状です。体の表面から触ることのできる首、腋の下、足の付け根に腫瘤として自覚されることが多くあります。体内のリンパ節が増大すると、増大する部位による症状を認めることがあります。リンパ節以外の臓器に直接腫瘤を作って症状を起こすこともあります。胸部病変による呼吸困難や消化管病変による腹痛など、腫瘤を形成した部位によって様々な症状が引き起こされます。
また、発熱、体重減少、盗汗(激しい寝汗)といった全身症状を認める場合もあります。

検査・診断

悪性リンパ腫の診断には、腫れているリンパ節や腫瘤の一部あるいは全部を外科的に取り出して、その組織を顕微鏡で観察すること(病理診断)が必要です。病変部が外から触れない場所の場合は、消化管内視鏡、CTやエコーを使い、針を刺して組織を取ることもあります。
また、リンパ腫病変の広がり(病期)を確認し治療方針を決定するために、骨髄検査、髄液検査、CT・MRI・PETなどの画像検査も行います。

治療

悪性リンパ腫の治療は、悪性リンパ腫の病型や病期などによって異なりますが、治療法には以下のようなものがあります。

  • 化学療法(抗がん剤による治療)
    悪性リンパ腫に対する中心的な治療法です、副作用の重複を避けながら高い治療効果が得られるよう、作用機序が異なる複数の抗がん剤を使って治療を進めること(多剤併用化学療法)が一般的です。
  • 抗体療法
    リンパ腫細胞を含む一部の細胞だけに現れている分子に対して特異的に結合し、腫瘍細胞を攻撃する薬です。
  • 放射線療法
    体外から病変に放射線を照射します。主に病変が限局している時に用いられる治療法です。
  • 造血幹細胞移植
    強力な化学療法や放射線療法を行って、腫瘍細胞をほぼ完全に破壊した後、正常な造血幹細胞を移植して造血能を回復させる治療法です。治りにくいリンパ腫や治療の効果が十分でない患者さんに対して行います。
  • 放射免疫療法
    放射性同位元素とリンパ腫に特異的に結合する抗体を結合させた薬を静脈注射し、体内で病変に放射線を照射する治療法です。
  • CAR-T細胞治療
    患者さん自身のリンパ球(T細胞)に遺伝子を導入し、リンパ腫細胞を攻撃させるという治療法です。

治療には比較的副作用が少なく体力の少ない患者さんでも行うことができる治療から、造血幹細胞移植のように患者さんにとって体力的負担が大きい治療まで様々です。リンパ腫の病型や病期だけでなく、患者さんの年齢や全身状態なども総合的に考えながら治療を進めていきます。

生活上の注意

化学療法を受けている間は、抗がん剤の影響で血液中の白血球・赤血球・血小板が一時的に減ります。白血球が減っている期間は、肺炎などの感染症を起こしやすくなるので、マスクの着用や外出から帰宅した時にうがいや手洗いをしっかりするなどの感染対策が大切です。治療の助けになるような特別な食事はありませんが、バランスの良い食事を心がけることが大切です。発熱などの体調不良が出現した際には、できるだけ早く主治医に連絡・相談をしてください。

この記事の監修

のだ内科ファミリークリニック 院長野田 昌昭

2018年3月に西区井口明神で「のだ内科ファミリークリニック」を開院させていただきました院長の野田昌昭と申します。
広島大学医学部を卒業後、内科・血液内科を中心に長年数多くの診療に携わってきた経験を生かし、お子さまからご年配の方までご家族で気軽に訪れて、何でも相談できる明るいクリニックを目指したいと考えております。地域のみなさまの健康をサポートする、頼れる「かかりつけ医」となれるよう努力研鑽してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【経歴・資格・所属学会】

【経歴】
昭和58年 広島大学附属高校卒業
平成元年 広島大学医学部卒業
平成8年 広島大学原医研血液内科大学院修了
平成8年 国立大竹病院 内科医師
平成10年 広島大学原医研血液内科 助手
平成10年 米国ウィスコンシン州Blood Research Institute留学
平成12年 国立大竹病院 内科医師
平成15年 社会保険広島市民病院 健康管理センター副部長
平成17年 広島市立広島市民病院 内科部長
平成25年 広島市立広島市民病院 血液内科主任部長
平成29年 草津病院 内科医師
平成30年3月 のだ内科ファミリークリニック開院

【資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本血液学会専門医・指導医
日本感染症学会専門医
日本内科学会中国支部評議員
日本血液学会中国四国支部評議員
日本医師会認定産業医
身体障害者福祉法指定医「免疫機能障害」
広島県もの忘れ・認知症相談医(オレンジドクター)
広島県がんよろず相談医

【所属学会】
日本内科学会
日本血液学会
日本感染症学会

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