白血病

白血病は血液の中の白血球が悪性腫瘍(がん)になった血液がんの1つです。どの年齢でも発症しますが、高齢者の頻度が高い傾向にあります。日本では、2018年には年間に人口10万人あたり男性で13.6人、女性で9.1人の割合で白血病と診断されています。
臨床経過から急性と慢性に分けられ、さらに、がん化した細胞の種類によって、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、成人T細胞白血病、骨髄異形成症候群などに分類されます。

原因

赤血球、血小板、白血球の中の顆粒球と単球の基となる細胞のことを骨髄系幹細胞、白血球の中のリンパ球の基となる細胞をリンパ系幹細胞と呼びます。これらの細胞が何らかの原因で遺伝子変異を起こし、がん細胞に変化して白血病となります。慢性骨髄性白血病ではフィラデルフィア染色体という染色体異常によって形成されるBCR-ABL1融合遺伝子が原因であること、成人T細胞白血病ではHTLV-1ウイルス感染が原因であることなど、白血病の病態に関する解明は着実に進んできていますが、遺伝子変異を引き起こす原因やそのメカニズムについて、まだ多くのことがわかっていません。

症状

貧血による倦怠感・顔色不良・めまい・息切れ・頭痛、白血球減少による発熱・肺炎などの感染症、血小板減少による鼻出血・皮下出血などの出血症状など、様々な症状が見られます。
急性白血病は白血病細胞の増殖が速く週単位で病状が進行しますので、早急な対応(診断と治療開始)が必要です。
ゆっくりと進行する慢性の白血病では、初期の段階ではほとんど症状が現れないことが多く、別の病気で行った血液検査や健康診断で偶然見つかることもよくあります。

検査・診断

白血病の特徴は血液検査で腫瘍細胞が観察できることです。そのため、白血病の検査としては、まず血液検査で赤血球・血小板・白血球の数を調べ、血液標本を顕微鏡で観察します。
次に、腸骨(あるいは胸骨)に針を刺して、血液を作っている場所である骨髄の細胞を採取する検査(骨髄検査)を行います。骨髄標本を顕微鏡で観察することに加え、染色体・遺伝子の変異や細胞表面マーカーなどを調べることで、確定診断ならびに細かな病型分類を行います。

治療

白血病の治療方法の主体は抗がん剤による化学療法です。再発した白血病や治療抵抗性の白血病などに対しては、造血幹細胞移植を行うこともあります。

急性白血病の治療

急性白血病治療の目標は体内に存在する白血病細胞をすべて根絶することです。急性白血病の発症時、体内には通常約1012個の白血病細胞がありますが、化学療法の第一目標はこれを108個以下に減少させることです。108個以下になった場合、通常の顕微鏡で骨髄中の白血病細胞を発見することが困難となり、この状態を完全寛解と呼びます。完全寛解になると正常な造血能が回復します。しかし、完全寛解の状態でも体内にはまだかなりの白血病細胞が残存しており、放置すると再増殖するため、その後、さらに化学療法を繰り返し、順次白血病細胞数を減少させ、最終的に白血病細胞の根絶を目指します。骨髄性とリンパ性の急性白血病では有効な抗がん剤が異なるため使用する薬剤は異なりますが、基本的な治療方針は同じです。

慢性白血病の治療

慢性骨髄性白血病に対する治療は、主に分子標的治療薬であるBCR/ABL1チロシンキナーゼ阻害薬の投与です。日本では2001年から使えるようになった薬ですが、非常に高い治療効果が得られます。
慢性リンパ性白血病は、病初期ではすぐに治療の対象とならずに経過観察となることが少なくありません。経過によって抗がん剤による化学療法が検討されます。

造血幹細胞移植

大量の抗がん剤や放射線を用いて白血病細胞を正常な骨髄細胞ごと破壊した後に、健康な造血幹細胞を移植して造血能を元に戻すといった治療です。白血病の種類、患者さんの全身状態、適合ドナーの有無などを考慮して選ぶ必要があり、受けることのできる患者さんは限られていますが、治療効果が高い有力な治療法です。移植する細胞の種類によって、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植などがあります。

予防

成人T細胞白血病については、原因がHTLV-1ウイルス感染であることがわかっているので、対策として妊婦健診でHTLV-1抗体検査が行われています。そして、HTLV-1抗体陽性が判明した母親からは、乳児への授乳制限などの母子感染予防対策が行われます。
成人T細胞白血病以外に予防対策が可能な白血病は、現在のところありません。ただし、健康診断などで偶然指摘された血液検査異常をきっかけに白血病が見つかる場合がありますので、自覚症状がなくても年に1回は必ず健康診断で血液検査を受けることをお勧めします。

この記事の監修

のだ内科ファミリークリニック 院長野田 昌昭

2018年3月に西区井口明神で「のだ内科ファミリークリニック」を開院させていただきました院長の野田昌昭と申します。
広島大学医学部を卒業後、内科・血液内科を中心に長年数多くの診療に携わってきた経験を生かし、お子さまからご年配の方までご家族で気軽に訪れて、何でも相談できる明るいクリニックを目指したいと考えております。地域のみなさまの健康をサポートする、頼れる「かかりつけ医」となれるよう努力研鑽してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【経歴・資格・所属学会】

【経歴】
昭和58年 広島大学附属高校卒業
平成元年 広島大学医学部卒業
平成8年 広島大学原医研血液内科大学院修了
平成8年 国立大竹病院 内科医師
平成10年 広島大学原医研血液内科 助手
平成10年 米国ウィスコンシン州Blood Research Institute留学
平成12年 国立大竹病院 内科医師
平成15年 社会保険広島市民病院 健康管理センター副部長
平成17年 広島市立広島市民病院 内科部長
平成25年 広島市立広島市民病院 血液内科主任部長
平成29年 草津病院 内科医師
平成30年3月 のだ内科ファミリークリニック開院

【資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本血液学会専門医・指導医
日本感染症学会専門医
日本内科学会中国支部評議員
日本血液学会中国四国支部評議員
日本医師会認定産業医
身体障害者福祉法指定医「免疫機能障害」
広島県もの忘れ・認知症相談医(オレンジドクター)
広島県がんよろず相談医

【所属学会】
日本内科学会
日本血液学会
日本感染症学会

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