ウイルス性脳炎
ウイルス性脳炎とは、脳内にウイルスが入り込んで炎症を起こす病気です。
稀な病気ですが、小児から成人に幅広く発症します。ウイルスの種類によっては、死亡率が10%程度のものもあり、記憶障害や脳の機能障害等の後遺症が残ることもあります。
ウイルス性脳炎の原因
ウイルス性脳炎の中で最も多いのは、ムンプスやエコーウイルスなどによる流行性の感染によるものです。非流行性のウイルス脳炎では、ヘルペスウイルスが最も多くみられます。このウイルスには水痘帯状疱疹ウイルスや単純ヘルペスウイルスが含まれます。その他には日本脳炎や細菌・カビなどの感染でも発症します。
また、ワクチン接種後やウイルス感染後に起こる急性散在性脳脊髄炎は、小児から成人まで発症します。
ウイルス性脳炎の症状
ウイルス性脳炎の初期症状は風邪に似ています。また、風邪のような症状が始まる前に、吐き気や下痢等の消化器系の症状が見られることもあります。その後は急速に症状が進行していき、高熱や激しい頭痛、嘔吐等の症状が現れます。また、意識障害や痙攣が現れる場合もあります。
症状は発症から数日でピークに達すると言われており、稀に重症化例では呼吸困難や昏睡状態に陥り死亡に至るケースもあります。
また、インフルエンザウイルスが原因となって起こるインフルエンザ脳症は幼児に多く、言語障害や記憶障害等の後遺症を残すケースもあります。
単純ヘルペスウイルスによるウイルス性脳炎では上記の症状に加え、症状の進行によりフラッシュバック等の激しい情動により錯乱状態に陥ることもあります。
ウイルス性脳炎の治療と予防
ウイルス性脳炎の治療
脳炎が疑われると、髄液検査・頭部CT・MRI検査・脳波検査などを行います。髄液検査では、腰から針を刺して脳脊髄液を採取し、脳脊髄液中の細胞数やたんぱく質が高値であれば脳炎を疑います。単純ヘルペスウイルスによるウイルス性脳炎が疑われた場合は、直ちにウイルスを死滅させるのに効果的な抗ウイルス薬の点滴治療を行います。
その他のウイルスが原因だった場合は特効薬がない為、症状を和らげていく対症療法を行っていきます。
ウイルス性脳炎は回復に時間がかかり、人によっては完全に回復しない場合もあります。また、症状の進行が早く死に至るケースもあります。進行具合は原因ウイルスと治療の迅速さに左右されるため、ウイルス性脳炎の疑われる症状が出た時は早期に受診することが重要です。
ウイルス性脳炎の予防
基本的に脳炎になりやすい人はいませんし、脳炎の多くは人に移ることもありません。
ウイルス性脳炎の予防法は特にありませんが、ウイルスに感染しないことが重要です。
基本的には治療で治りうる病気ですので、発熱とともに頭痛・嘔吐・意識障害・けいれん・精神症状などが出現した場合は、直ちに医療機関を受診するよう心がけてください。
ながお脳神経外科クリニック 院長長尾 光史
【経歴・資格・所属学会】
平成7年5月 大阪医科大学附属病院 脳神経外科教室 入局
[主な勤務病院]
畷生会脳神経外科病院
翠清会梶川病院
弘田脳神経外科病院
大阪府三島救命救急センター
児玉病院
大阪医科大学附属病院 麻酔科
みどりヶ丘病院
新生病院 部長
荒木脳神経外科病院 副院長
平成22年12月 ながお脳神経外科クリニック 開院
免許・資格
平成7年5月 医師免許取得 平成13年7月 医学博士号取得 平成13年8月 日本脳神経外科学会専門医取得