脳腫瘍

脳腫瘍とは頭蓋骨の中にできる腫瘍です。脳腫瘍は脳の各部位からさまざまな種類の腫瘍が発生します。頭蓋内には脳・髄膜・脳神経・血管などがありますが、これらの組織から発生する腫瘍を原発性脳腫瘍といいます。

これに対して転移性脳腫瘍は他の臓器に発生したがんが、血液によって運ばれ脳に転移して発生した腫瘍です。原発性脳腫瘍には良性と悪性の二種類があります。良性脳腫瘍は進行速度が遅く、悪性脳腫瘍は進行速度が速い腫瘍です。良性脳腫瘍は正常な細胞と腫瘍の境界がはっきりしているため全摘出が可能ですが、悪性脳腫瘍は細胞との境界が不明瞭なため、全摘出が難しい腫瘍です。

脳腫瘍の原因

原発性脳腫瘍の原因は遺伝子の変異とされていますが、遺伝子以外の原因については分かっていません。転移性脳腫瘍は、他の臓器に発生したがんからの転移が原因です。転移元のがんによって原因が変わります。肺がんからの転移であれば喫煙や飲酒、食生活が原因とされます。胃がんからの転移であれば食生活や飲酒、ピロリ菌の感染が原因となることがあります。

脳腫瘍の症状

脳腫瘍は発生している部位によって症状が異なります。しかし、頭痛や吐き気、意識障害等は、どこの部位に発生していても現れる症状です。
部位別の症状は以下の通りです。

  • 前頭葉
    集中力の低下、言葉を理解できるが話せなくなる
  • 側頭葉
    言葉を理解できなくなる
  • 頭頂葉
    読み書き、計算ができなくなる、左右が分からなくなる
  • 後頭葉
    視野が欠ける
  • 視床下部
    視力と視野に異常、肥満、意識障害
  • 視床
    手足のしびれ、麻痺
  • 脳幹
    感覚障害、聴力障害、食べ物が飲み込み辛くなる
  • 小脳
    ふらついて歩き辛くなる
  • 脳神経
    視力が低下する、物が二重に見える、めまい、耳鳴り

脳腫瘍は水頭症を合併することがあります。水頭症を合併していた場合は尿失禁、めまい、認知症、歩行障害等の症状も現れます。

脳腫瘍の検査・診断

頭部CT・MRIやPETなどの画像検査によって、脳腫瘍の存在する部位や大きさを判断します。また、造影剤を用いることにより、正常な脳組織への腫瘍の浸潤の程度を確認します。また、脳を栄養している血管と腫瘍との関係をみるため脳血管造影検査を行うこともあります。

脳腫瘍の治療

手術療法

手術療法は腫瘍を取り除く治療法です。良性の腫瘍であれば全摘出も可能で、全摘出されると再発の危険性も殆どありません。悪性腫瘍の場合、手術での完治は困難です。

正常な細胞との境界線が判断できない場合や脳の重要な部位に存在する場合、手術が行えないことや、2回に分けて手術を行うこともあります。腫瘍の全摘出は特別な場合を除いて不可能なため、以下のような補助療法を追加する必要があります。

放射線療法

腫瘍に放射線を照射する治療法です。現在では、ガンマナイフやサイバーナイフ・エックスナイフなどの定位的放射線療法などがあります。定位的放射線療法とは、正常な脳組織を被爆させることなく、放射線を虫眼鏡のように腫瘍だけに集中して照射する方法です。

良性腫瘍の場合は腫瘍を直接狙うことができますが、悪性の場合境界がはっきりしていないため、定位放射線療法は適していません。最近では悪性腫瘍に対し、熱外中性子を使ったホウ素中性子捕捉療法も開発されています。治療後の副作用は吐き気や倦怠感、皮膚炎、脳浮腫等です。

化学療法

化学療法とは、化学物質によってがんや細菌、その他の病原体を殺したり、その発育を抑制して病気を治療する方法です。今までは一部の脳腫瘍以外に有効な薬はありませんでしたが、最近では様々な薬を組み合わせたりすることで効果が表れる場合も出てきています。

平成18年に認可されたテモダールという薬は、脳から発生した悪性腫瘍に対して放射線治療との併用により有効性が証明されています。また、平成25年にはアバスチンという血管新生阻害薬が保険承認され、残存腫瘍や、意識障害、言語・運動機能が低下を来たしている方の平均生存期間を延長する効果が証明されています。

脳腫瘍の予防

原発性脳腫瘍は遺伝以外の原因が分かっておらず、残念ながら予防のしようがありません。そのため、早期発見ができるように定期的に検査を受けておきましょう。どんな病気でも早期発見は生存率を大きく向上させます。自覚症状が出るのはある程度進行してからのため、自覚症状が出る前に発見できるように努めましょう

転移性脳腫瘍は他臓器のがんが原因のため、がん全般の予防を行っておきましょう。

この記事の監修

ながお脳神経外科クリニック 院長長尾 光史

超高齢化社会を迎えつつある日本において、これからの医療は予防医学がますます重要となってくる中で、脳卒中は3大死因のひとつでもあり、また寝たきりになる原因疾患の第1位です。その再発予防はさることながら、いかに発症を予防していくかが最重要であると考えています。
そこで、高血圧症、高脂血症、糖尿病などのいわゆる生活習慣病を背景とした動脈硬化の予防管理も含め、既存のクリニックにはないMRI機器を導入することにより、早期発見・早期治療に努め脳卒中の予防を中心に地域の皆様の健康維持に微力ながら貢献してまいりたいと思っております。不安を持っておられる方が気楽に受診できる環境を整え、迅速に検査を行い当日結果説明ができる体制をとっておりますので、どうぞお気軽に受診、ご相談ください。

【経歴・資格・所属学会】

略 歴
平成7年5月 大阪医科大学附属病院 脳神経外科教室 入局

[主な勤務病院]
畷生会脳神経外科病院
翠清会梶川病院
弘田脳神経外科病院
大阪府三島救命救急センター
児玉病院
大阪医科大学附属病院 麻酔科
みどりヶ丘病院
新生病院 部長
荒木脳神経外科病院 副院長
平成22年12月 ながお脳神経外科クリニック 開院

免許・資格
平成7年5月 医師免許取得 平成13年7月 医学博士号取得 平成13年8月 日本脳神経外科学会専門医取得

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