乾癬(かんせん)

乾癬とは炎症性角化症の一種で、皮膚の角化や肥厚とともに炎症が生じる病気です。現在、日本における発症率は0.3%前後と推測され、20〜40代に好発し、男性の発症率は女性の2倍というデータもあります。一方で世界に目を向けると、白人の10分の1の確率で発症しており、男女の発症率に大きな差はありません。

乾癬は尋常性乾癬、乾癬性関節炎、汎発性膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、滴状乾癬の5つの病型に分けられます。一般的な病型は尋常性乾癬であり、滴状乾癬以外の亜型は重症化している状態を指し、早期の治療が必要です。

また乾癬は、症状が治まり完治したように見えたとしても、悪化と好転を繰り返す特徴があり、長期にわたる治療が必要です。

乾癬の原因

乾癬は表皮が増殖して異常をきたすことで発症します。表皮に異常を来たす原因はT細胞や樹状細胞、好中球などの免疫細胞が関係しています。皮膚を引っかく・擦るなどの刺激によって樹状細胞からサイトカイン(免疫細胞から産生されるタンパク質)が産生され、T細胞(Th17細胞)が増殖・分化します。Th17細胞から産生されるサイトカイン(IL17)が皮膚症状をとたらすと言われております。しかし、現時点も研究段階に過ぎません。

遺伝的要因としては、発生しやすい遺伝子異常があると考えられており、家庭内での発症ケースも少なくありません。

環境的要因としては、以下のものが挙げられます。

  • 外傷・感染症・薬剤
  • 糖尿病・肥満・高血圧等の生活習慣病
  • 喫煙・飲酒

ただし、遺伝的要因、環境的要因、自己免疫疾患が単体で原因となるという訳ではなく、複数の要因が組み合わさることで発症するのが乾癬です。

乾癬の症状

乾癬は大別して尋常性乾癬、乾癬性関節炎、汎発性膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、滴状乾癬の5つの病型に分けられ、それぞれで症状が異なります。

尋常性乾癬では、全身どこにでも症状は出ますが、刺激の加わりやすい肘、膝、腰、臀部、頭部に見られることが多いです。初期に丘疹や紅斑が現れ、徐々に角化して表面に銀白色のふけ状(鱗屑)のものが付着し、時間の経過とともに剥がれ落ちていきます。痒みを伴うケースも少なくありません。また、爪に異変が生じることも多く、剥離、混濁、変形等の症状が生じます。

乾癬性関節炎は、皮膚症状と共に関節症状が見られる乾癬です。関節症状では、初めに手指に関節炎が現れますが、進行すると脊椎を含む全身の関節に症状が現れる可能性があります。主に腱が骨に付着する部分に炎症がおき、指の腫脹、疼痛、変形等もおきます。

汎発性膿疱性乾癬は、膿疱が全身または局面的に多発します。膿疱に伴い高熱や全身倦怠感が見られることも多いです。重症化すると紅皮症を伴うことが多く、紅皮症が見られる場合は全身状態の悪化を伴うこともあり入院して治療が必要になります。汎発性膿疱性乾癬は尋常性乾癬に続発することが多いですが、乾癬の既往歴がなくとも突然発症することもあります。

乾癬性紅皮症は全身に紅斑が広がり、皮膚全体が真っ赤に変色した後、多量の鱗屑が剥がれ落ちていきます。発熱や倦怠感を伴うことも多く、入院治療が必要です。尋常性乾癬が全身に広がることにより、続発して発症します。

滴状乾癬は、扁桃炎などの溶連菌感染がきっかけとなり発症します。丘疹が全身に現れるものの、多くの場合は溶連菌感染の治療が進むとともに完治します。主に若年者に発症しますが、稀に高齢者が発症することもあります。

乾癬の治療法

基本的な乾癬の治療は、外用療法、光線療法、内服療法、生物学的製剤(注射)の4種類に分かれます。外用療法では皮膚の角化や肥厚を抑えるビタミンD3や炎症を抑制するステロイドの外用薬を使います。

光線療法は免疫反応を抑制するために肌にとって有害な波長が取れ除かれた紫外線を照射します。

外用療法や光線療法では十分な効果が期待できない場合は、角化を抑えるレチノイド製剤、免疫抑制薬などの内服治療が行われます。
さらに、重症化した場合に生物学的治療を検討されます。高価な治療であるため、制度や保険を上手く活用するとよいでしょう。

乾癬の予防

乾癬は原因が明確ではないため、確実な予防法はありません。しかし、生活習慣病が原因となることがあることから、生活習慣を見直すことが予防に繋がると考えられます。規則正しい生活やバランスのとれた食生活を心がけ、ストレスの溜めすぎには注意しましょう。また、喫煙や飲酒は症状を悪化させることや、治療に悪影響を及ぼしかねないため避けましょう。

この記事の監修

古江駅前すみれ皮ふ科 院長東儀 那津子

はじめまして。
私は広島市西区高須で生まれ育ち、ちどり幼稚園、古田小学校に通い、馴染み深い街で2022年3月に開院を予定しています。多くの経験を積むために、神奈川県で大学病院を中心に勤務し、アトピー性皮膚炎、じんましんなどのアレルギー疾患、小児皮膚疾患、悪性黒色腫などの皮膚癌の治療、手術、美容皮膚医療に携わってきました。
今まで培った経験を活かし、みなさまの皮膚の悩み・症状が改善され、すこしでも幸せを感じてもらえるお手伝いをさせていただきたいと思っています。この街の小さなお子様からご年配の方までが気軽に相談にきていただけるように努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【経歴・資格・所属学会】

【学歴・職歴】
平成18年
 北里大学医学部 卒業
平成18年
 北里大学病院 初期研修医
平成20年
 北里大学病院 皮膚科入局
平成23年
 北里大学病院 助教
令和2年
 北里大学病院 診療講師

北里大学病院のほか、大和市立病院、昭和大学病院藤が丘病院形成外科、
座間総合病院、武蔵村山病院、神奈川県内の皮膚科・美容皮膚科で勤務

【所属学会】
日本皮膚科学会
皮膚悪性腫瘍学会
日本美容皮膚科学会
日本アレルギー学会

【資格】
医学博士
日本皮膚科学会専門医・指導医
厚生労働省臨床研修指導医
ボトックスビスタ®︎認定医

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