食中毒
食中毒は、その原因となる細菌やウイルスが食べ物に付着し、体内へ侵入することによって発生します。腸管出血性大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌等の細菌によって引き起こされる場合やノロウイルスやロタウイルスを代表に、ウイルス性の食中毒があります。
食中毒の原因は、細菌性・ウイルス性・植物性および動物性の自然毒・化学物質性・寄生虫など様々存在しています。
食中毒の原因
夏場には細菌性食中毒が多く報告されます。感染した細菌によって、感染型と毒素型に分類されます。
感染型は、食べ物に付着した細菌が食事により体内へ侵入し、腸管の表面で増殖することで発症します。原因となる細菌はサルモネラ菌・カンピロバクターなどです。
毒素型は、体に入った細菌が腸管の表面で増殖した際に産生する毒素が原因で起こる食中毒です。腸管出血性大腸菌が代表的です。また、体内ではなく食品中でも毒素を産生し、その毒素を食事と共に摂取して食中毒を引き起こす菌では黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌が知られています。
ウイルス性食中毒は、ウイルスが付着した食品や感染している人を仲介してウイルスを口に入れることにより発症します。原因となるウイルスの多くはノロウイルスです。食中毒患者さんの約半数はノロウイルスが原因です。そのうち7割が11月から2月に発生しています。感染力が強いため集団感染を起こすこともあります。
食中毒の症状
症状は様々ですが、腹痛・下痢・嘔吐・発熱が長ければ数週間ほど続きます。この症状は腸内に増殖している細菌やウイルスが原因による胃腸の機能低下によるものです。下痢や嘔吐により細菌や毒素、ウイルスが少しずつ体外へと排出されるため、次第に症状が和らぎます。ただし、下痢や嘔吐により体内の水分が不足し脱水状態に陥る可能性もあるため、常温かぬるめのお湯で水分補給を適度に行いましょう。
体内に入ってくる病原体により潜伏期間がことなり数時間からその日のうちに発症する細菌もあれば、牡蠣で有名なノロウイルスの潜伏期間は12-48時間といわれます。またレバ刺などで有名になったカンピロバクターは1週間ほどの潜伏期間の場合もあります。医療機関を受診する際は何日かさかのぼって食べたものに心当たりがないか思い出してみてください。
食中毒の予防と治療
食中毒の予防
食中毒防止のために、厚生労働省が提唱する3つの原則があります。3つの原則とは、細菌を食べ物につけない・付着した細菌を増やさない・付着した細菌をやっつけることです。1つ目は、菌を食べ物に付けないために、調理前には必ず手を洗うことで細菌やウイルスが食品に付着することを防ぎます。2つ目は、菌を増やさないために購入後はできるだけ早く冷蔵庫に保管します。3つ目は、菌をやっつけるために食品の中心部が75℃かつ1分以上を目安に加熱します。調理器具の殺菌・消毒も徹底しましょう。
また小児の場合は、ロタウイルスのワクチンを摂取することが出来ます。かかりつけの小児科の先生に相談されると良いでしょう。
食中毒の治療
細菌は栄養となる糖や水が存在し、条件が揃うと増殖します。細菌による食中毒には抗生物質が有効で、症状を抑えることができます。しかし抗生物質で毒素による食中毒を悪化させることもありその使用は慎重に判断されます。
またウイルスには抗生物質は効き目がありません。
まず、食中毒を疑う症状が現れたら慌てずによく水分を摂って様子をみましょう。ただしこれは、症状が軽く吐き気や下痢が軽症と感じられる場合に限ります。酷い嘔吐により水分が摂れなかったり腹痛が酷かったりする場合、吐物や便に血が混ざっている・息苦しいなどの症状が出ている時はすぐに医療機関を受診しましょう。
制吐剤や整腸剤は症状によって処方されますが、脱水の危険がある場合は点滴も行われます。症状が辛いからといって自己判断で下痢止めなどの薬を服用すると、腸内の細菌や毒素、ウイルスが排出されない場合も考えられます。必ず医師の診察を受けて指示を仰ぎましょう。
小田内科 院長忌部 航
【経歴・資格・所属学会】
平成19年3月
金沢大学医学部卒業
平成19年4月
三井記念病院
平成21年4月
国立国際医療研究センター
平成25年4月
福島県立医科大学 会津医療センター
平成27年4月
国立国際医療研究センター
平成31年1月
小田内科勤務
令和元年5月
小田内科院長
※学会・専門医
医学博士
日本内科学会:総合内科専門医
日本消化器病学会:消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会:日本消化器内視鏡学会専門医
日本膵臓学会