先日、老舗の婦人雑誌「婦人画報」に特集記事『更年期、それから--知っておくべきGSM--』が掲載されました。
閉経期の更年期症候群を終えたはずの世代が直面する腟、外陰部の違和感や不快感が漸く疾患群として認知されるようになりました。GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)は近年、新しく提唱された疾患群です。全産婦人科医師のバイブルと言うべき「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2020 (監修・編集 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会)」の質問418「閉経期女性に腟・外陰部の不快症状の訴えがあったら?」に、その診断と治療が記されるようになりました。
周閉経期から閉経後の女性では、エストロゲンの低下に伴い腟および外陰部の乾燥、痒み、におい、灼熱感、性交痛、尿漏れ、頻尿などの不快症状の訴えが多くなり、さらに性交障害などの性機能障害や排尿障害を伴います。診察所見としては、従来から用いられた疾患名:外陰腟萎縮(vulvovaginal atrophy:VVA)、全身的な症状としては、2014年に閉経関連泌尿生殖器症候群(genitourinary syndrome of menopause:GSM)という概念で提唱され、広まっていきました。
GSMは緩徐に進行するため、とくに性交渉が無いと初期はわかり難いのですが、GSMを放置すると閉経後のQOLが著しく低下することがわかってきました。閉経期の不調を脱して、再び心身の好調期を取り戻す筈が、あてが外れて不快な日常を送ることになるケースが多々あるのです。
腟・外陰部の不快症状を訴える女性に対して、局所に保湿剤,潤滑ゼリー(リューブゼリーⓇ,KY ゼリーⓇなど)を使用する対症療法があります。潤滑ゼリーはオイル、シリコン、ヒアルロン酸などがベースとなっており、性交痛に対し適宜使用されますが、逆に刺激・炎症を引き起こすことがあり、医師と相談が望ましいです。
局所あるいは全身的エストロゲン療法は腟上皮の成長・成熟,乳酸桿菌再育成、血流の改善、pH の閉経前レベルへの低下、腟上皮厚と弾性の改善に効果があります。閉経後の女性の性器萎縮症状に対してエストロゲン製剤の全身または局所投与の効果をみた 9 つのランダム化比較試験 を含む 58 文献によるメタアナリシスでは,全身投与、腟内投与ともに同等に有効だが、患者の評価では腟内投与の方がより症状改善に効果を認めたそうです。
わが国ではエストロゲン類似のエストリオール腟錠(エストリールⓇ腟錠、ホーリンⓇ V 腟錠)が使用できます。全身投与のホルモン補充療法(HRT)を行う場合は患者ごとにリスクとベネフィットのバラ ンスを検討し投与を決定します。
近年、腟および外陰部に炭酸ガスフラクショナルレーザー(モナリザ・タッチⓇ)を照射する治療が行われています。最新治療のため本邦は保険診療外ですが、これにより腟粘膜の栄養状態改善、上皮細胞のグリコーゲン増加、コラーゲン繊維の増加、線維芽細胞活性化、腟内細菌叢の改善などの効果がみられます。閉経後の女性のみではなく、乳がん等で化学療法やホルモン療法を受けた女性に生じた腟・外陰部の不快症状の治療としても有効とされています。本邦のデータでも、保湿剤/ゼリーより有効との結果がみられます。
骨盤底筋を動かす行動と運動(散歩の早歩きや足上げなど)は意識してみましょう。違和感があっても腟・外陰部の洗い過ぎには注意しましょう。下着も重要です。普段は刺激の少ない素材のゆったりしたものを身に着けましょう。
みなさんこんにちは、ひらた女性クリニック院長の平田英司です。
長崎大学医学部を卒業し広島大学産科婦人科学教室に入局して以来、25年以上にわたり総合病院勤務医として婦人科腫瘍、産科、女性医学、不妊と産婦人科の四つの診療分野につき幅広く研鑽を積んで来ました。婦人科は広島県の代表的な婦人科腫瘍専門医として手術執刀を含め診療の中心的役割を担い、産科はNICU 設置病院に主に勤務し総合的周産期医療に従事してきました。
しかし、こと外来診療に関しては、仕方がないことですが、総合病院の外来はどこも効率優先から待ち時間が長く診療時間が短くなりがちで、病気や問題の本質にせまり難く、これがストレスになっていました。
患者さんも医師も納得する診療、とにかくていねいな診療、これを実現するべく自分のクリニックを開院させて頂く運びとなりました。一見軽微に思える症状でも、また症状がなくとも抱えた問題について気軽に相談でき、かつ専門的診療まで実施可能で、さらに広島市内県内のみならず全国の高次医療機関への紹介が可能な「究極のかかりつけ医」を目指します。
「どうせうまく治らない」「どうせわかってくれない」「女性医師でないからわからない」と思いつつでもいいから、気軽に受診して下さい。必ずや、あなたの問題を一緒に解決し、快方に向かわせられると思います。
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